ユニセフ募金の本当のところ

ユニセフで働いているとユニセフ募金ってちゃんと使われているの?、とかユニセフ募金ってどういう仕組みなの?、と帰国するとちょいちょい聞かれます。確かにユニセフ募金の仕組みってだいぶ分かりづらいので、仕組みを友人に説明するたびに「そういう仕組みだったのか。ユニセフ募金を攻撃する人はこの仕組みを知らず、誤解に基づいて攻撃しているんだから、もっとちゃんと説明がされる必要があるよ!」、というリアクションをされます。少し時間が出来たのでどのようなシステムになっているのか、ちょっと書いてみようと思います。

そもそも、ユニセフのカントリーオフィス(途上国にあるユニセフの事務所)の資金ってどうなっているの?、という点から始めたいと思います。もちろん国によって異なるのですが、大体3つのソースからほぼ同じぐらいの額がやってきます。まずは本部からやってくるお金で、これは各国政府の拠出金から来るものです。細かい点は忘れてしまいましたが、確か国民平均所得・子供の人口・前年度の予算執行状況とかが加味されて各カントリーオフィスにいくら配分されるかが決まります。

次に、大使館や財団などから頂くお金です。これが国際協力分野で働いている人以外には最も知名度が無い資金源だと思います。例えば、私が持っている教育省の統計&プランニングのキャパビルプロジェクトはノルウェーの大使館にプロポーザルを提出して、お金を頂き、報告書を提出する流れで実施しています。国連職員の実力はこの資金をどれだけ引っ張ってこれるかで半分以上は説明される、と言っても過言ではありません。というのも、カントリーオフィスで働く国連職員の給与は、前者の資金か、ないしはここから支出されることが大半なので、これが上手くないと自分の給与源がプロジェクト終了と共に途絶えることになるからです。今年の自分のプロジェクトはフェーズ1が終わって、来年金額倍増でフェーズ2を実施することになったので、自分でいうのもなんですが、年齢の割にはよく頑張っていると思います。

そして最後がユニセフ募金です。現地で働く職員からすると、上の資金と比べて、報告書などの負担が少ない上に、使い勝手も良い(縛りが少ない)ので、子供や母親の権利を守るために重要な資金となっています。それではこれがどのようなシステムでユニセフのNational Committee(通称ナットコム。ユニセフ協会のことで、日本のナットコムは日本ユニセフ協会です。ユニセフ自体が募金を集めているわけではなく、各先進国にあるナットコムが担当しています)からユニセフのカントリーオフィスに配分されるのか説明しようと思います。

まず、各カントリーオフィスは、実施しているorする予定のプロジェクトを全世界のナットコムに対して提示します。それを見て各国のナットコムはどこのカントリーオフィスのどのプロジェクトにいくらぐらい予算を付けるか決定をします。カントリーオフィスは予算を頂いたら、半年ごとに報告書(2-3ページ。大使館への報告書は20ページぐらいになる)を、予算を完全に消化しきるまで提出し続けることになります。つまり、半年で予算を消化できれば報告書はたったの一本で済むのでありがたいことこの上ないです(途上国政府のキャパ的にそんなことはまず起こりませんが…)。ナットコムがどのようにプロジェクトを選ぶのかはユニセフ職員の側からは見えづらいので、ぜひご存知の方がいたらご教授願いたい所です。

ナットコムとユニセフの関係は業務委託関係になっているようで、ナットコムは集めた寄付金の25%だったかを自身の活動費として使用できます。この活動費に対する視点が日米で大きく異なるのが個人的には興味深いです。アメリカでは、活動費割合はもちろん少ない方がよいけど、これそのものは存在して当たり前という考え方が主流な印象を受けます。これは考えてみればとても合理的で、例えば私が1万円寄付したとします。この1万円が現地にそっくりそのまま届けばそれはそれでよいですが、これの25%が広報活動に使われて、その結果寄付が倍増して、17500円が現地に届いた方が、より大きな支援になります。もちろん、広報活動をしたものの募金は集まらず、結果として7500円しか現地に届かなかったのであれば非難されて当然ですが。

日本の場合は、こういった広報活動にお金をかけて寄付金にレバレッジをかけるという意識がほぼなく、より多くのお金が現地に届けられるよりも、自分のお金が現地に一円でも多く届けばそれでよい、というのが主流な印象があります。これがあるので、寄付金の18%も日本ユニセフ協会はネコババしているなんて批判が起きますが、そもそも18%というのは各国のナットコムと比べても割合が低いですし、日本ユニセフ協会が集めている金額は世界でもトップクラスというか確か長年トップなので、大成功しているナットコムの一つだなとNY本部で教育の資金分析をしている時に思いました。アメリカ人からした自分の寄付金にレバレッジをかけようとしないなんてWhy Japanese People?って感じでしょうが、日本人からしたらWhy Westerners?てなるでしょうから、まあ単純に文化の違いなんだろうなと思います。

あと、この18%から広報活動や人材育成事業も実施されているようです。例えば、私も何回かユニセフ職員として学校訪問をしましたが(私自身は特に謝金とかは受け取っていないです)、これに関わる費用はこの18%から支出されているはずです。大学院生のユニセフ・カントリーオフィスでのインターンをユニセフ協会さんが費用全額負担で実施していますが、これにも結構なお金が使われているはずです(ちなみにですが、パキスタンでユニセフインターンが爆弾で吹っ飛ばされて以降、何かあった時の保障の問題で現地のユニセフオフィスでインターン出来ることは、こういったナットコムからのアレンジが無い限りほぼできなくなりましたし、そもそも国連インターンは費用は自分持ちであることが殆どなので、このインターンの機会はメチャクチャ貴重なものになっています)。あと、私も大学4年生の時にユニセフ協会さんが実施している「国際協力講座」に参加しましたが、これは参加費が無料でしたし、国際協力講座の後に費用半額負担でネパールの現地スタディツアーにも連れて行ってもらったので、こういった所に18%が使われているんだなというのが分かります。ちなみに、このネパールスタディツアーが初途上国&国際機関との接点でしたが、この大学生がその後ネパールにNGOを作って、教育分野のユニセフ職員としてアフリカで勤務を始めるのはそれから数年後の話のようです。

ちなみに、結構ナショナリズムを掲げる人が、日本ユニセフ協会は18%持って行くから黒柳さんに募金しよう、と書き込んでいるケースを見かけますが、これもユニセフ職員からすると結構不思議な現象です。なぜなら、日本ユニセフ協会から流れてくる資金には「Japan」の文字が至る所で入りますが(例えばこの資金を使って教科書の配布を行った時には、Supported by Japan UNICEF Committeeの文字が教科書に刻印されるはずです)、黒柳さん経由の資金にはJapanの文字は入らないからです。もし本当にユニセフを資金援助して頂けるのであれば、日本ユニセフ協会の方がJapanの文字が入る分、世界に誇れる日本って感じになるのになー、と不思議に見守っています。

あと、赤十字とか寄付が全額現地に行くじゃないか!、というのもよく聞きますが、ああいった所は別口で収入源があって、それを広報活動やロジにあてているので、そういった収入源が無いところと比較するのはちょっとフェアじゃないかなという感じがします。職員の待遇については私があれやこれや言うことではないですが、私が国際NGOに移ったら待遇は今より確実に良くなりますが(とは言え、私は政策系の人間でオペレーションの人間じゃないので、国際機関の仕事の方が専門性を発揮できるので、移るのは現実的ではないですが)、日本ユニセフ協会さんをはじめ、日本の団体に移ったら確実にガタ落ちするので、その待遇でよくそんなに働くよなぁ…、という感じはします。

上の話は本部で資金分析(費用対効果分析の一環で分析した)をして、現地で自分で資金を獲得してプロジェクトを回してみて初めて見えた話なので、やはりユニセフ募金のシステムはちょっと複雑な感じがしますね。とは言え、ユニセフ募金はこういったシステムを通じて途上国の子供と母親の人権を守っているわけなので、なるだけ誤解が解けて少しでも多くの活動資金が集まるといいなとは思います。とは言え、自分のプロジェクトもセクションも、日本のナットコムからも、日本の大使館からも資金を一円も獲得していないので、少なくとも来年については自分には何の利益もないのですが(しかも来年8月で退職して進学予定…)。。。

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サルタック・シクシャは、ネパールの不利な環境にある子供達にエビデンスに基づいた良質な教育を届けるために活動しています。100円のサポートで1冊の本を子供達に届ける事ができます。どうぞよろしくお願いします。

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