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僕たちのフィルダースチョイス

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長編小説。 高校の野球部から20年の付き合いである田辺(ジュン)、宇賀神(マガジン)、権藤(ゴンドーフ)、藤原(クゲ)という男たち四人は、中年になりそれぞれ仕事と家庭を持ち、各々… もっと読む
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記事一覧

僕たちのフィルダースチョイス 17/17

 生徒たちを駅まで見送ったあと、大人たちは駅前の「あの店」ではなく、その日は雑居ビルの三…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 16/17

「みんなはあのとき、どっちや思うた?」  教室のうしろに並んで座る三人への、クゲによる突…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 15/17

     23  判決を待つ被告人のような気持ちで、田辺は連絡を待った。  記事を読ん…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 14/17

     22 〈エッセイストとしても活躍する岩崎早希子さんは、十年間担当したラジオ番組…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 13/17

 田辺がそばに屈んで確認すると、左足首を痛めたようで、右膝と右肘は擦りむいて血が滲んでい…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 12/17

     20  夏休みに入る前の、七月の三連休初日。  朝九時にモリタ塾前に集合する予…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 11/17

     18  ただの火曜日なのに、夕方六時をまわったころ、宇賀神が段ボール箱を抱えて、モリタ学習塾に現れた。 「塾長は、いてはりまっか?」  授業を終えて、プリントの束を見直していた盛田が顔を上げ、小さく会釈すると奥の塾長室を指さした。もうマガジンたちは顔見知りになっていた。  箱を抱えて両手がふさがっていた宇賀神はノックの代わりに「入るで」とだけ声をかけて、自力でドアノブを回した。 「どないしたんや、マガジン。こんな時間に」  田辺は部屋にひとりでいた。 「大漁や、大

僕たちのフィルダースチョイス 10/17

     17  柴山高校野球部の野上監督の伝手で、和歌山まで練習試合の遠征に出かけたこ…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 9/17

     15 「この前のジャンケンゲームは大ヒットだったな。ぐわはは」  宇賀神はジン…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 8/17

     13  権藤は、日曜日なのにピンストライプのシャツに臙脂色のネクタイをして、濃…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 7/17

     12  柴山高校の校庭には南の端に一本だけ飛びぬけて背の高い樹があり、そのイチ…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 6/17

     11  その晩の反省会は、塁も同席した。田辺が家に電話をして、お母さん、つまり…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 5/17

     9  柴山高校の野球部で、田辺たちが二年生のある初冬の日、インフルエンザが流行…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 4/17

     7  田辺純が支部長を務めるモリタ学習塾は、駅から三分。バスロータリーから町のメイン通りを南に歩き、コンビニを左手に入った路地の先に四階建ての自社ビルがある。  宇賀神鋭介は紙袋を手に、日曜日の午後四時十五分に到着すると、三〇一教室に入った。 「だから、毎度遅いて」  ジュンが挨拶もなく言った。「もうみんな待ってんで」  教室には、田辺のほか、権藤忠生、藤原実之もすでにいて、ひときわ小さいメンバーがひとり、場ちがいな感じで座っていた。  宇賀神がゴンドーフとクゲ