ザ ブック オブ マッチズ 10/16
俺は汗をかいたシャツを着替え、マッチをジーンズのポケットに入れた。そして、廊下の壁にかけられた写真フレームの中からひとつをはずした。
生前の母親が、家族の写真をいくつも飾っていたうちのひとつだ。彼女は父親が消息を絶ってからも、写真や彼の残していったものには一切手を触れなかった。
写真フレームの裏のつまみを捻って、写真を取り出した。父親と母親がいっしょに写った、比較的新しいものだ。新しいと言っても十五年以上は経っているが、仕方ない。
写真の中の母親は微笑み、父親はすこし