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危機的時代の優秀性

一般的に言われる「優秀さ」とは、一体どのようなものだろうか。それは現代社会における既存のシステムを正常に機能させる能力という意味での優秀性と、危機の時代に未来を切り拓く能力という意味での優秀性の2つが存在するように思う。

多くの人々の社会との関わり方の大部分を占めるものは労働だろう。労働における優秀さ、すなわち社会で働く上での優秀さとは、危機の時代に求められるそれとは全く異なる。特に組織で求められる能力は、多くの場合は画一化されている。それは、組織の発展段階に伴う目的に対する手段と深く関係している。

既存の社会システムを維持する能力という観点で、優秀な人とそうでない人、その中間の人は、以下のように定義づけられる。

①指示されたことを実行しない
②指示されたことを実行する
③指示されたことに加え、自分で考えて実行する

この定義は、所謂、仕事のできる人とそうでない人を示している。しかし、仕事の大枠は企業が形作っているため、どこまで行っても個人の行動は最適化の範囲に留まる。最適化するに留まるからこそ、それを普遍的に「仕事」と表現するのかもしれない。

一方で、危機の時代に求められるような、先を見据えて行動する能力という観点での優秀さは、以下のように定義づけられる。

本質をつかみ、それを体現し、かつ本質と社会との隔たりを改善すべく、適切なアプローチを取っている人。

「本質をつかみ、それを体現する」ことは、難しそうに見えて非常に単純だ。自分のやりたいことをやりたいように行動すること、純粋な感情に紐づいた芸術とも言える。すなわちこれは、お金を生み出すことや社会の役に立つといった、自分という存在の外へ向けた社会的な影響や関与を意図したものではない。自分を自分という主体的観点から、純粋で前向きな感情のもと人生を楽しむことを示す。

「本質をつかみ、それを体現する」生き方をしていると、自然と社会との隔たり(ギャップ)が見えてくる。人生を自己という観点から真に楽しんでいる自分がいる一方で、社会でそれを実現できていない人がいるのはなぜだろうか。これが「本質と社会との隔たり」である。

この隔たりを改善することが、いわゆる社会貢献である。人間の主体性に関わる問題であるため、そのアプローチとして人間一人一人に直接的に関与することは難しいが、社会の構造を作り変えることや、基盤となっている概念を自然なものに見直すことで、改善を試みることができる。

個人の人生と、個人と社会との関わりが、上記の優秀性の定義には含まれている。この内容は「自由」と「公共」の問題に関わってくる。個人と社会が相互に影響を与え合っている。特定の個人が社会に関与し、社会がその他個人へ良い影響を与えるという相互の関係性のもと、我々は生きているのだ。

2022年12月19日

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