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「太平洋」はどうして「太い」? 「大西洋」はどうして「大きい」?

 平仮名にすると「たいへいよう」と「たいせいよう」…ものすごく似ているのに、どうして漢字は「太へいよう」と「大せいよう」なのだろうか。
ちなみに、英語にすると太平洋はPacific Ocean、大西洋はAtlantic Oceanだ。

 まずは「太平洋」

 英語で書くと「Pacific Ocean」。直訳すると穏やかな海という意味になる。この語源は「Mar Pacifico」というポルトガル語で、史上初めて世界一周航海に成功した16世紀の探検家フェルディナンド・マゼランによって命名されたといわれている。

 マゼランがこの大海を「穏やかな海」と名付けたのには理由がある。ポルトガルを出発したマゼランは、西回りで航海していた。南米大陸南端の海峡を抜けて、フィリピン諸島に到着するまでおよそ100日を航海していたわけだが、マゼラン一行はこの間、なんと一度も嵐に遭うことなく、平穏な航海を続けられたという。そのため、この海に「平穏」という言葉を名付けたというわけだ。

 そして、この「Mar Pacifico」を日本語にするとき、「平穏」という意味の類義語である「太平」があてられた。幕末の1855(安政8)年のことである。戦乱のない平和な世の中のことを「太平の世」などと時代劇では言ったりするが、荒れた様とは正反対の穏やかなようすを指す言葉というわけだ。

 次に「大西洋」!

 一方の大西洋の由来といえば、太平洋とは全然違っている。まず、英語の「Atlantic Ocean」の語源は、古代ギリシャの哲学者プラトンが唱えた、海中に没した幻の大陸「アトランティス」だ。この伝説が基になり、この海域は古くから「Atlanticos」(アトラスの海)と呼ばれてきた。ただ、これが大西洋という漢字に直接つながったわけではない。

 「大西洋」の初出は17世紀。1602年に中国大陸で布教中だったイエズス会宣教師マテオ・リッチが、漢字の世界地図『坤輿万国全図』を作成した際、ポルトガルの西側に漢字で「大西洋」と書いたのが始まりだ。マテオがこの漢字を選んだ明確な理由は伝わっていないが、おそらく「西洋の前方に開けた大きな海」というそのままの意味を込めたのだろうと推測される。

 太平洋と大西洋…読み方は似ているものの、「平穏の海」と「西側の海」という全然違う意味だったのだ。

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