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犬と人間の歴史

 犬は人類が初めて家畜として飼育した動物であるとされている。犬と人間との関わりの歴史は驚くほど古く、その起源は狩猟時代にさかのぼる。約40万年前~15万年前の旧石器時代の遺跡から、犬の祖先であるオオカミの骨が発掘されている。オオカミは人間の残飯から食糧を得られることを学び、徐々に狩猟パートナーとして主従関係ができたようだ。どの時点でオオカミが犬へと進化したのかはよくわかっていない。少なくとも世界各地に点在する約1万2000年前~3万5000年前の遺跡においては、人間が居住していた住居跡や洞窟の中から犬の骨が見つかったり、犬が人間と共に墓に埋葬されているのが見つかっているため、この時期までにはオオカミは犬へと進化し、人間とともに暮らし始めていたことがわかる。

 太古の昔、人間たちは狩猟で野生動物をとらえ、食料としていた。人間よりもはるかに早く走ることができ、森の中でも小回りが効く犬は、狩りにおいて絶好の相棒だったのだ。人間は犬という相棒を得たことで、狩りの効率が上り、人口もしだいに増え、牧畜や農耕生活を営むようになった。そうして人類が発展していく過程の中で、牧羊犬や番犬など様々な犬が活用されるようになる一方、犬側にも、人間と一緒に過ごすことで外敵から身を守ったり、エサをもらうことができるというメリットがあったため、両者はお互いに共生関係となり、より関係が密になる。古代エジプトでは犬が神格化されたり、遺跡から犬のミイラが発掘されたりと、犬が神聖な存在だったことが伺える。日本でも縄文時代初期の遺跡から埋葬された犬の骨が発見されている。

 古代の世界で家畜として利用されてきた犬が、現代のようにペットとして飼われるようになった年代については諸説ある。古代エジプトの神話には「アヌビス」という犬の姿をした神が登場しており、当時から犬が神聖なものとして崇拝され、大切に扱われていたことがわかっている。

 日本でも、「日本書紀」には日本最古の飼い犬の描写があり、平安時代の「枕草子」や「源氏物語」にも宮廷で飼育されている犬が登場し、すでに犬や猫を飼うブームがあったと考えられている。鎌倉時代には、弓術の一種として犬を射る「犬追物」や、犬同士を戦わせる「闘犬」が流行するが、その後の江戸時代に徳川綱吉による「生類憐みの令」により、犬は動物愛護の対象となる。

 次に、「日本犬」についてだが、日本犬保存会が定める日本犬標準は、「日本犬の特徴特質を基として将来作出されるべき日本犬の進路を示すもの」となっている。昭和9(1934)年、日本犬標準に名前の挙げられた犬種は6種類で、そのすべてが国の天然記念物に指定されている。

■ 秋田犬(あきたいぬ)
 日本犬唯一の大型犬で、「忠犬ハチ公」のエピソードが示すよ うに、忠誠心が篤く、家族には愛情深く保守的であり番犬としての適性に優れている。
■ 甲斐犬(かいけん)
 山梨県原産の日本犬で、大正13年にその存在が確認された中型犬だ。日本犬は「○○いぬ」と呼ばれるが、甲斐犬だけは「飼い犬」と間違われるため、「かいけん」と発音される。ただ一人の飼い主に一生忠誠をつくす性格から一代一主の犬と評されることもある。
■ 四国犬(しこくいぬ)
 四国(主に高知県)原産の中型犬で、もともとは「土佐犬」と呼ばれていたが、土佐闘犬という別品種の犬と区別するために「四国犬」とよばれるようになった。飼い主に対しては非常に忠実であり、勇敢でしかも冷静な犬種である。
■ 北海道犬(ほっかいどういぬ)
 北海道のアイヌの猟犬としての歴史が長く、アイヌ犬とも呼ばれる。愛らしい容姿と優れた筋力をもつ。ソフトバンクのコマーシャルで「お父さん犬」を演じたことで人気が爆発し、ファンも多い。
■ 紀州犬(きしゅういぬ)
 和歌山県から三重県原産の日本犬で、主に山村におけるイノシシの狩猟を目的に飼育されてきた歴史がある。勇猛さで知られ、忠誠心も高い。
■ 柴犬(しばいぬ)
 日本犬で唯一の小型犬であり、現在日本で飼育されている日本犬の約8割は柴犬である。猟犬として活躍してきたというルーツを持つため、賢くて我慢強い性格をもつ。個人的には、飼っていた柴犬と19年間一緒に生活をしていたので、柴犬が一番好きである。

 犬による癒され方は人それぞれだが、私たちは名作と呼ばれる物語や映画の中でも犬に癒されることがある。
 日本で犬の物語と言えば、忠犬ハチ公だろう。大正末期に実在した秋田犬で、渋谷駅にご主人を毎日出迎えに行っていたハチが、ご主人の死後も約10年にわたってその帰りを待ち続けたことで有名だ。日本では「ハチ公物語」、アメリカでは「HACHI 約束の犬」というタイトルで映画化されている。
 個人的には、南極観測隊員と「タロ、ジロ」という犬たちとの絆を描いた
実話「南極物語」はその再会のシーンを何度見ても感動する。「フランダースの犬」も大好きな話だ。イギリスの作家による児童文学だが、日本ではテレビアニメ化され、今でも再放送されている作品だ。貧しい少年と犬との素晴らしい、そして悲しい友情物語だ。
 ほかにも、「名犬ラッシー」、「ベートーベン」、アニメ映画の「ペット」、ディズニー映画の「101匹わんちゃん」など、犬を主人公にした映画や物語はたくさんある。

 犬は、人類の歴史とともに人間の生活においてかけがえのない存在として活躍し、時には人間を助け、時には人間を癒し、映画や物語を通しても人間に感動を与えてくれる。
 昨年4月、マルキー(マルチーズとヨークシャーテリアのミックス犬)の「はるちゃん」が我が家の家族になった。妻と娘と一緒に動物保護団体を訪れ、娘が我が家に迎えたいと願って選んだのが「はるちゃん」だ。「はるちゃん」は繁殖させるためだけに6年間も子犬を産まされ続け、用無しになったため保護された犬だった。狭い檻の中しか知らなかった「はるちゃん」は、いまでは我が家の癒し系アイドルになっている。仕事や学校で疲れて帰宅した私たちを、はるちゃんは思いっきりしっぽを振って出迎えてくれる。        <トップ画像が「はるちゃん」です!>

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