やなせたかしさんは、子どもたちに大人気のアニメ、アンパンマンの生みの親である。人権のワークショップにて、「みなさんの中での正義のヒーロー、正義の味方は誰ですか」と問いかけると、「アンパンマン」と答える人が必ずいて下さる。私自身も同じ問いかけをされたら、正義を貫くヒーローは「アンパンマン」と答えている。

　アンパンマンは不思議なヒーローだ。顔がアンパンでできていて、顔が雨で濡れたり、少しでも変形したりすると、途端にパワーを失い、ジャムおじさんに新しい顔を作ってくれるように泣きつく。そんな史上最弱のヒーローでありながら、お腹がすいていて困っている人や元気のない人に出会うと、自分の顔をちぎって食べてもらったり、バイキンマンに悪さをされて困っている人を助けるために戦う。戦うと言っても、アンパンマンは誰も殺さない。最後に「アンパンチ」を繰り出し、バイキンマンは「バイバイキーン」と空のかなたに消えていくが、バイキンマンは決して死ぬことはない。怪獣や怪人を死に追いやるウルトラマンや仮面ライダーと違って、アンパンマンは誰も殺さないステキなヒーローだ。

　やなせさんは、アンパンマンという、まるでヒーローらしからぬヒーローを生み出した理由を２つ挙げている。以下に述べる。