見出し画像

地球を守るティッピングポイントとは?

 1991年4月の日ソ首脳会談後、当時のゴルバチョフ大統領はトルストイの言葉を引用して次のように語った。

 「トルストイは日本の作家、徳富蘆花にこう述べた。『あなたはロシアと日本の長期にわたる友好を確立する方法についてお尋ねになっています。これは必要なことです。私たちが一つの目標に向かう場合にのみ、共通の意志に貫かれた私たちは、この目標に達することができるでしょう』。この言葉を、私たち両国民がお互いの本当の出会いの道を指し示してくれる導きの星としようではありませんか」と…。

 トルストイが示した「一つの目標に向かう共通の意志」、ゴルバチョフ大統領が語った「本当の出会いの道」は、残念ながらプーチン大統領のウクライナ侵攻により閉ざされようとしている。私たちがさらに懸念すべき点は、戦争そのものが最悪の人権侵害であると同時に、最大級の環境破壊である点だ。戦争での兵器使用は明らかに二酸化炭素の放出に繋がり、人間や動物の命だけでなく、二酸化炭素を酸素に変えてくれる森林や海などの自然環境そのものを死滅させる。

 地球温暖化は急激に進んでいる。去る3月には北極や南極の氷が恐ろしい勢いで溶け始めたとの報道が…特に南極では棚氷が崩壊し、東京23区の2倍の面積の氷山が次々と海に散らばったとのこと。地球温暖化の進行により起きる環境の激変はティッピングポイント(転換点)と呼ばれ、これはもはや後戻りできない変化を指す言葉だ。北極の温暖化は世界の平均よりも2倍の速度で進んでおり、こうした変化は寒帯林の脆弱性を高めてしまう。既に温暖化は、北米やシベリアでの森林火災の頻度を増加させ、炭素吸収源を排出源に転換させかねない。シベリア、グリーンランド、カナダの永久凍土の融解は、二酸化炭素だけでなく、二酸化炭素の30倍も温室効果があるメタンの大量放出を引き起こす懸念がある。

 それだけではない。温暖化の影響は海水の循環にも深刻な影響を与え、オーストラリアのグレートバリアリーフのサンゴ礁が死滅したり、アマゾンにある世界最大の熱帯雨林で干ばつが起きたり、アメリカやカナダやオーストラリアで大規模な森林火災が起きたり…つまり、巨大な二酸化炭素吸収装置が突然、巨大な二酸化炭素排出装置へと転換してしまう可能性がかなり高い確率で起きてくるということだ。専門家によっては、すでにティッピングポイントを迎え、「劇的な変化に人間をいかに適応させていくか」を考えなければならない時期に入っていると言う。向こう30年間に排出量がどう変わろうと、地球の気温が大幅に上昇するのはもはや避けられない。ダーウィンの名言を思い出す。
 「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」
 

 この先、資源・エネルギーは枯渇し、環境はさらに悪化していくとしたら、人類はどのようにその変化に適応できるのだろうか。それとも人類という種が生き残れない道を辿ることになるのだろうか。 

私の記事を読んでくださり、心から感謝申し上げます。とても励みになります。いただいたサポートは私の創作活動の一助として大切に使わせていただくつもりです。 これからも応援よろしくお願いいたします。