見出し画像

「万引き家族」を通して格差社会を考える

 2018年、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した是枝裕和監督作品『万引き家族』。ボロボロの平屋で最貧困生活をする5人家族の物語。家族とは何かを考えさせられる作品だ。

 家族とは、もっとも身近な社会。
 家族とは、夫婦とその血縁関係者を中心に構成された共同生活の単位となる集団。
 家族とは、人によっては無償の愛を注ぐ関係。
 家族とは、人によってはただ血が繋がっているだけの関係。
 家族を人によっては愛を注ぎ合うものであり、人によっては他人のごとく辛辣に表現する人もいる。

 ただこの『万引き家族』を観る限り、家族とはとても杓子定規では計れないものだということだけは痛感できる。というのも『万引き家族』の面々は、全員血縁者というわけではないのに、時に本物の親子以上の家族であると感じさせる。

 この映画を見ていると、新聞やテレビのニュースなどで見聞きする見出しや内容が次々と浮かんでくる。子どもの貧困、子どもへの虐待、年金の不正受給、児童誘拐、そして子どもに万引きさせるほど生活困難な貧困家庭の実情。この映画は、実際に子どもに万引きを強要していた親が逮捕された事件をヒントに是枝監督がシナリオを描いた作品なのだが、実際に報道されたニュースや新聞記事から受ける印象と、是枝監督が描き出した『万引き家族』から受ける印象は対極と思えるのが不思議だ。
 以下はネタバレの可能性がかなり高いので、映画を見ていない方はご注意を!

ここから先は

1,954字

¥ 390

私の記事を読んでくださり、心から感謝申し上げます。とても励みになります。いただいたサポートは私の創作活動の一助として大切に使わせていただくつもりです。 これからも応援よろしくお願いいたします。