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「天声人語」ってステキ!

 私は生まれたときから名古屋市民なので、子どものころは新聞と言えば我が家に毎朝届く「中日新聞」しか知らなかった。余談だが、当然のようにプロ野球は中日ドラゴンズを応援してきた。
 新聞に「朝日」「讀賣」「毎日」などがあると知ったのはいつのことだったのかわからないが、図書館に初めて行ったときだったかもしれない。

 社会人になってからだろうか。特に、教育や福祉の分野で働く中で、様々な情報や知識を入手するのに新聞との親和性が高まった。もう15年以上になるが、自分が気になった、あるいは気に入った記事は切り抜きしている。

 情報化社会にあって、誰もがスマホなどの情報機器を持ち歩いている状況で、紙の新聞なんて読まない、スマホのニュースで十分という声もあるかもしれない。確かにスマホでニュースサイトを見れば新聞を持ち歩く必要もないし、新聞紙を縛って廃品回収に出す間もかからない。ニュースサイトによっては無料でリアルタイムに起きている出来事などを知ることができる。しかし、ほとんどのニュースサイトは、ニュースの見出しをクリックしてはじめてその内容を知ることができるようになっている。そのためどうしても興味のある分野のみをクリックしてしまいがちになり、興味のある分野の情報しか入ってきにくいと言った情報の偏りが生じやすくなる。

 一方、新聞はページさえめくれば、見出しだけでなく全ての情報が一斉に視覚内に入ってくる。自分の興味のある分野の情報はもちろん、それまで興味のなかった分野や業界などの情報にも、自然と知ることができる。情報の偏りなども減ってくると言ったニュースサイトにはないメリットがある。

 新聞のメリットを考えると、いくつも挙げられる。
1. 雑談力が上がる
 新聞は社会の出来事や話題を知ることができるので、人との会話のネタになる。
2. 想像力が身に付く
 新聞は物事の背景や原因、影響などを考えることができるので、未来を予測したり、自分の意見を持ったりする力が養われる。
3. 偏りがなくなる
 新聞は様々な視点や情報源から記事を作るので、一方的な見方や思い込みを防ぐことができる。
4. 文章を読む力がつく
 新聞は文章の構成や表現、語彙などを学ぶことができるので、読解力や表現力が向上する。
5. 知識が広がる
 新聞は政治や経済、文化やスポーツなど、様々な分野の知識を得ることができるので、教養や興味が深まる。興味のない分野の情報も入ってくるので情報の偏りが減る

 私が新聞で最も素晴らしいと感じているのは、第1面のコラムだ。中日新聞のコラムは「中日春秋」…文字数は555文字、朝日新聞の「天声人語」は603文字、読売新聞の「編集手帳」は458文字、毎日新聞の「余録」は658文字と決まっている。必ずこの文字数ぴったりに毎日書き続けるのはものすごく大変だと思うのだが、それをやり遂げてしまうのがプロの編集者なのだろう。

 さて、今回の投稿のタイトルにした「天声人語」。朝日新聞と中日新聞はは何年にもわたって切り抜きをしてきたが、1月27日の「天声人語」には思わず笑ってしまった。政府与党の「政治とカネ」に絡む問題を、昔話風に語りながら、思いっきりディスってるではないか。こんな痛快なコラムには初めて出会ったので、ステキな昔話を紹介させていただく。 

むかしむかし、あるところに抜け道を通るのが大好きなセンセイがおりました。仲良しなのは、76年前に生まれた政治資金規正法です。何度改められても「政治とカネ」の問題が絶えないので「ザル」と呼ばれています。それでもセンセイは気にせず、つきあいを続けていました▶ある日、センセイは山で盛大なパーティーを開きました。たくさんの人がパーティー券を買ってくれたので、「ノルマを超えた分は私のものだ」と大喜び。「やっぱり、偉くなるには金を集める力がいるのさ」と得意そうでした▶ところが、「パー券で裏金づくりをしているのではないか」と村で大騒ぎになりました。問い詰められたセンセイは「法に基づき適正に対応している」としか答えません。雲行きが怪しくなってくると「捜査中なので控える」と逃げ出す始末でした▶村には「5人来一と呼ばれる実力者たちもおりました。同じ疑惑で調べられましたが、彼らもザルとは腐れ縁。その性格も弱みもよく知っていました。巧みにかわし、おとがめなしですみました▶さあ、納得がいかないのは村人たちです。「線引きが3千万円なんて、高すぎる」「ザルに大きな穴があいている」と不満を口にしました。「確定申告するのがむなしくなるなあ」と嘆く人もいました▶結局、問題の根っこは規正法だとみんなが思っています。センセイたちは改正を急ぐそうですが、ザルを変えられるのか疑問です。めでたしめでたし、では終わりそうもありません。

朝日新聞 1月27日 「天声人語」より引用

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