見出し画像

僕の夢は人間になることです。


 今回も池間哲郎さんの第2作「あなたの夢は何ですか? 僕の夢は人間になることです」…こちらも15年ほど前に読んで衝撃を受けた作品だ。

 モンゴルのマンホールチルドレンについてご存じだろうか。
 モンゴルの首都ウランバートルには、マンホールの中で暮らしている子どもたちがいる。モンゴルでは、真冬には「-30℃」になるくらい寒いため、路上で暮らすことは厳しい状態で、そのため、「温水供給パイプ」が通っている「マンホール」の中で暮らし、暖をとっている。しかし、マンホールの中は汚水が漏れていたり、虫がわいていたりしてとても不衛生で、皮膚病になったり、深刻な病気にかかったりする子どもが大勢いる。

 多くのマンホールチルドレンは生まれた時からマンホールにいるわけではない。「家庭環境の崩壊」によって住む場所を失った時に、マンホールに住むようになるケースが多いようだ。また、家があったとしても「帰りたくない」「親と暮らしたくない」という理由でマンホールでの生活を選ぶ子どももいる。ここで言う家庭環境の崩壊とは「親の再婚」「親の失業」などがある。

 具体的な例としてEくんの例を紹介します。
 Eくんがマンホールチルドレンになったきっかけは「父親の失業」だ。失業をきっかけに、父親から母親への暴力が始まり、母子で家出。そのうち、母親が新しいパートナーと再婚し、Eくんを残して地方へ行ってしった。残されたEくんはおばさんと暮らしていていましたが、ひどい目に遭わされて追い出されてしまい、マンホール生活が始まった。

 池間哲郎さんのNPO法人アジアチャイルドサポートが管理運営を行っている児童福祉施設がモンゴル第2の都市ダルハンにある。そこで暮らす11歳の少年から池間さんに手紙が届いた。そこには次のように書かれていた。

「僕は人間ではない。牛、馬、羊の家畜にも、お父さん、お母さんがいる。野山を駆けるオオカミも、空を飛ぶ鳥にも両親がいる。だけど僕にはお父さんもお母さんもいない。だから僕は人間ではない。家畜や動物よりも劣るものだ。本当に神様がいるのであれば、僕に両親を授けてください。僕にお父さん、お母さんをください。両親の愛に包まることができるのならば僕は人間になれる。僕の夢は人間になることです。」

 ありあまるほどの食べ物がある恵まれた環境の中で暮らしている日本の私たち。そうした豊かさが私たちに「命の尊さ」や「生きることの大切さ」を見失わせているのではないかと感じてしまう。だからこそ、日本中の子どもたちがアジアの貧しい子どもたちから真剣に生きる大切さを学んでほしい。そして一生懸命生きることの大切さに気づいてほしい。一生懸命生きる人じゃないと、本当の命の尊さはわからない。真剣に生きる人じゃないと、人の痛みや悲しみは伝わってこない。
 お金も何もないから心も貧しいと思うのは間違いである。人間としての優しさや生きる力のたくましさ、人を愛する心は、貧しさの中で生きている子どもたちのほうが深くて大きいとさえ思うことがある。そういう子どもたちに接すると、日本の子どもたちが人間として最も大切なことを忘れているのではないかと心配になる。


NPO法人 アジアチャイルドサポートのホームページより


私の記事を読んでくださり、心から感謝申し上げます。とても励みになります。いただいたサポートは私の創作活動の一助として大切に使わせていただくつもりです。 これからも応援よろしくお願いいたします。