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命を守る教育 ~釜石の奇跡~

 2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9の巨大地震による激しい揺れで、岩手県の釜石市立釜石東中学校の校内放送は停止したため、「逃げろ」という先生たちの指示は伝わらなかった。しかし、先頭切って駆けだした生徒たちを追うようにして、校内にいた生徒たちも避難場所に指定されていた高台のグループホームを目指して走り出した。隣接する鵜住居小学校の児童たちも、これまで何度も合同避難訓練に取り組んできた中学生たちが高台を目指す姿を見ると、階段を走り降り、校舎を飛び出してその後を追った。そして、互いに励まし合いながら、高台を目指して子どもたちが走り去って間もなく、釜石東中、鵜住居小の校舎は津波の直撃を受けたのだ。
 釜石東中、鵜住居小にとどまらず、釜石市内では2,926名の小中学生のうち、学校の管理下にあった児童生徒全員が押し寄せる巨大津波から逃れて無事だった。この「奇跡」を支えたのが、「想定を信じるな」「最善を尽くせ」「率先避難者たれ」の「避難の3原則」。釜石市で防災教育の指導にあたってきた群馬大学教授の片田敏孝氏が提唱し、小中学校の先生たちと一緒に子どもたちに教え続けてきた。現在では「東日本大震災」と呼ばれる巨大地震から新たな教訓が生まれた。

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