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教科書の読めない大人たち〜ワークしないワークショップを防ぐために必要な基礎力理解〜

地域において話が噛み合わない、議論が成立しないということは多々ありますよね。日本のよくないこととして、以心伝心といったように言わずとも伝わるはずだ、伝わらないなんてことはない、なんて思い込みをしていたり、はたまた大人なんだからこの程度のことは分かって当たり前、というスタンスで臨むことがあると思います。

しかしながら、その前提として、大人なんだからこのくらいの文章は読めるだろ、この程度の数字の計算は当たり前にできるだろ、というのは相当な間違いなのです。このあたりの日本の実情を理解すれば、もう少しこの違和感というか、ときに怒りにもなるようなコミュニケーションエラーが防げるように思います。

○ 学びなくして正しい議論は成立しない

ワークショップやるにしても、実は参加者自体が互いの議論が成立するだけのオリエンテーションは必要だし、場合によっては一定の理解度に対するテストなども行わなくては正しい議論は成立しません。

それが地域において○○について考えましょう、みたいなワークの多くはそれに必要な事前学習などを強いることはほとんどありません。私の場合も学習会みたいなものの場合に、本は事前にぜひ読んできてくださいね、という話をしたりしますが、新書1冊すら読んでこない人が出てきます。

地域において施設開発の是非を問う議論をする場合にも、これには賛否両面で多角的な情報がかなり必要です。財政についての話、開発手法についての話、その施設だけでなく周辺まで含めた都市計画上の話、経済効果についての見方など多様な知識や情報をもって議論しなくては、「私は思う」みたいなことでは駄目なのです。なぜそう思うのか、具体的かつ論説的に述べる努力がなくては、コミュニケーションにならないのです。単に意見の対立になるだけで、建設的なお話にはなりません。

こういう時に、ディベートが学習に使われる1つは、賛否両論を自分たちなりに調べる訓練になるからです。賛成であるという自分の意思とは関係なく、反対派に回って相手に説明をしなくてはならないことにもなるし、もし賛成側として論述するとしても反対派がどのようなアプローチで説明してくるかを予想するためにも、反対派の論理を理解しなくてはならないのです。つまり、賛否を戦わせるプロセスの中で、賛否両方における根拠となるロジック、情報などを構築しなくてはならないからこそ、問題の背景にある社会的に複雑な実情と向き合うことになっていくことになるのです。

中高生でも積極的にディベートを行うのは、単に勝ち負けを競うというよりは、上記のようにいかなる立場に立たされた場合でも、その賛否両方にある多角的な情報を分析、論理構築する力が求められるからです。

しかしながら、なんとなく集まった暇な人達で行われるワークしないワークショップは未だ全国各地だ多数行われています。これは単に馬鹿にしている話ではなく、実際に私も含めて「自分は文章が読めている」とか「数的理解ができる」と思い込んでいることによって、互いの議論が進まないことがあるということを相互理解すべきということです。

だから謙虚に相互にわからないこと、理解できていないことがあるのだということを前提にして物事は進めないといけないということです。「そんなこと分かっている」という人に限って特に危険なのです。

○ 教科書の読めない子どもたちは、大人になっている

さて、かつてベストセラーになったので読んだことがある方もいると思いますが、東ロボくん開発で有名な新井さんのこちらの本、教科書が読めない子どもたち、というのがありましたよね。今はkindleUnlimited対象にもなっているので、読んだことない方はぜひどうぞ。

が、当たり前ですが、そういう子どもたちはいずれ大人になるのです。そして今も大人としてはこの、かつての教科書が読めないまま大人になった人たちが多数存在しているのです。

で、そのような大人の実態を示す調査として「国際成人力調査」というのがOECD加盟国で行われていまして、その結果が明らかになっています。が、どうもこのプレスリリースの内容が文科省のお手盛りでもありまして、なんか日本がNO1と国際比較しか言われないのですが、その内実をみると結構びっくりします。

○ ワークショップのまえに必要な「成人力調査」の把握

調査概要は以下に公開されていますので、見ていただければと思いますが、国際比較no1というのが主張される一方で、ある意味OECD加盟国全体をみても、いわゆる先進国というもの自体をみても、そんなにみんな教科書を読めないということです。

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