らめーん

東京で弁護士やっています。犯罪被害者、特に性犯罪被害者について書きます。 文春オンライ…

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東京で弁護士やっています。犯罪被害者、特に性犯罪被害者について書きます。 文春オンラインと、ハフポストに、記事を出しました。 たまに違う話題でも書きます。

マガジン

  • 性交同意年齢あれこれ

    性交同意年齢に関する令和2年12月現在の問題意識をまとめました。

最近の記事

不同意って、何? 3

不同意性交等罪の、例示列挙8要件を書いた。 では、形の上では同意があるが、その同意がとんでもない思い違いに基づく場合、「同意あり」として良いのだろうか。 改正刑法は、 被害者に行為がわいせつなものではないと誤信させ、 又は、 行為の相手方について人違いをさせた場合は、 たとえ形の上で同意があっても、不同意性交等罪が成立することになっている。 行為者が被害者を騙すパターンと、被害者の思い違いを行為者が利用するパターンのどちらでも、不同意性交等罪となる。 行為がわいせつなも

    • 不同意って、何? 2

      「不同意って、何? 1」で、不同意性交等罪の「不同意」は、ある要件によって、同意しない意思を形成し、表明若しくは全うすることが困難な状態だと書いた。 今回は「ある要件」の中身を書く。 ① 暴行又は脅迫を用いること ② 心身に障害を生じさせること ③ アルコール又は薬物を摂取させること ④ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にすること ⑤ 拒絶するいとまを与えないこと ⑥ 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、又は驚愕させること ⑦ 虐待に起因する心理的反応を生じ

      • 不同意って何? 1

        不同意性交等罪が衆参両院で可決された。 不同意性交等罪の「不同意」は法律用語だから、普通に話すときの「不同意」とは異なる。 ヌカ喜びするのも、逆に勘違いで叩くのも不幸なので、条文や、WG・検討会・法制審の議事録や、国会の法務委員会や本会議の音声データ上明らかになっているところを説明していく。 まず、不同意性交等罪の不同意は、「気持ち」ではない。 たしかに、普通に話すときの「不同意」は、同意していない、賛同していない気持ちである。 しかし、「不同意性交等罪」の「不同意」は、「

        • 2023刑法改正と時効

          性犯罪に関する刑法が改正された。 まずはバンザイ。 施行日がまだわからないが、施行後の世界に自分を適応させなければならない。 憲法上、遡及処罰は禁止されるので、「いつの法律に基づいて犯罪の成否を判断するのか」の問いには「行為時の法が適用される」一択だ。 だが、2023年改正には公訴時効期間の延長が含まれている。 こちらはちょっと複雑だ。 まず、2023改正法の公訴時効の建付を説明する。 公訴時効期間が改正前より5年延びる(5年プラス効果)。 強制わいせつ罪は、現行の7

        不同意って、何? 3

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        • 性交同意年齢あれこれ
          4本

        記事

          限られた時間の中で、大量の音声を文字起こしする方法

          ここのところ立て続けにnoteをアップしました。内容は全て衆議院法務委員会の文字起こしです。 法務委員会ですから、後日必ず正式な議事録が出ます。 しかし、拙速とわかっていてもスピードが大事な時がある、それは今だ、と思いました。 今回の改正案は、2017年改正の附則附帯を基点に、2018年のワーキンググループから、検討会、法制審と、5年にわたる調査と議論の上にできています。 そして、法案ですから、国会の会期というリミットがあります。 「なんでもいいから早く出したい」と夏休み最

          限られた時間の中で、大量の音声を文字起こしする方法

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          7人目いきます。 トリは共産党の本村伸子委員です。 本村伸子(日本共産党): 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。5月17日のこの法務委員会で不同意性交等罪の八号の部分、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること、または憂慮していることについて行為者が憂慮させるまでの地位とは思わなかった、憂慮しているとは知らなかったなどと、処罰されないことになるのではないかというあの質問をさせていただきました。その時にあの

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          6人目行きます。 国民民主党鈴木義弘委員です。 鈴木義弘(国民民主党): 国民民主党の鈴木孝博です。あの視点を少し変えさせて頂いて、まあ私はずっと前からですね、疑問に思っていたんですけども、まあたまにこう漫画本読むんです。子供の頃も読んだんですけども、大人になってからも漫画本があればですね、ラーメン屋さんに行ったり、蕎麦屋に行った時に置いてある漫画を見るんですね。で、誰の目でもあのお店で見れば止めることはまずないでしょうから、こんな漫画一般に目に触れちゃっていいの、って思う

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          5人目行きます。 維新阿部弘樹委員です。 日本維新の会の阿部弘樹でございます。この法務委員会の審議では、いつもペドフィリアの小児性愛のことについて常にお伺いしておりますが、今日はええ小児性愛はもちろんのこと。大きくパラフィリアという性的嗜好のことについてお伺いして行きたいと思います。パラフィリアという性的嗜好の障害、なかなか聞き慣れない話でございますが、ええ人前で性器を露出してしまう。そして性的興奮を覚える、あるいはええサディズム、マゾヒズムで性的興奮を覚える。そして覗き見

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          4人目行きます。刑法の条文をみて「なんだこれは」と目をひんむいた21歳の私が成仏していくようです。 寺田学(立民): 寺田です。修正協議を進めておりますので、おそらく最後の質問になると思います。あのもちろん修正協議をやってるところありますので、問題意識を伝えながらも、その問題意識が交渉事ですからすべて飲み込まれないということはあり得るというふうに思いながらも、けれども、あえて質疑に立ちながら、また改めて問題意識を問うこと自体は、この質疑の過程において、こういう問題が残ってい

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          3人目の質疑行きます 米山隆一(立民): はい。それでは会派の代表をして質問いたします。あの先般のあの委員会ですね。私がですね、普通に自宅でお酒を飲んでいて、まあちょっといい気分でじじょうのことでもあり、別に積極的な同意なわけでもないけど言いづらいと言う状況でも、条文上はまあアルコールの影響で同意しない意思を形成表明全うすることが困難であるということになると思うのですが、これは不同意性交等罪に該当しますか?という質問をしたところ、そうですね。まあ、あのアルコールの影響があっ

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          2人目の質疑、行きます。 日下正喜(公明): 公明党の日下でございます。本日はよろしく申し上げます。ええ、先日の参考人質疑では複数の参考人から今回の法改正への評価と、ともに適切な運用面の改善を求める声がございました。運用の改善を考えた場合、被害届を受理する警察や検察官、裁判官など、それに携わる関係者の性暴力被害者に対する深い理解が欠かさないことはいうまでもないことです。このための改正を受けて、より充実した研修が求められると思いますがこれまでの取り組みおよび今後どのように研修

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          230524衆議院法務委員会1

          令和5年5月24日衆議院法務委員会のインターネット動画の音声を、自動反訳ソフトに突っ込みました。正式な議事録はいずれ出るものですが、この法案が流案になってしまったら、今13歳の子が20歳以上の大人に暴行脅迫無く性交された場合がレイプとされる時代が遠のいてしまいます。眠たいことを言っていられないので、自動反訳ソフトでは「不同意性交等罪」が「不同意成功東西」になり、「性的姿態」は「性的死体」となるレベルの最低限の、誤字を直してアップします。 法務委員長: これより会議を開きます

          230524衆議院法務委員会1

          参考人ヒアリング、法務委員会

          5月16日、法務委員会のインターネット動画の音声を自動反訳ソフトに入れました。正式な議事録は、追って衆議院からリリースされるでしょうが、とにかく来週水曜までに議論しないといけないです。自動反訳ソフトは「暴行」が「膀胱」になり、「性的姿態」が「性的死体」になるレベルだったので、誤字を自力で直しました。5月16日の参考人からのヒアリングだけ直しましたので、暫定版としてご覧ください。とくに橋爪先生のトークスピードにソフトが追いついていないので、先生の部分の誤字が多いと思います。ご容

          参考人ヒアリング、法務委員会

          法務委員会質問事項

          衆議院院法務委員会の質問事項をまとめました。 5/16の参考人は、法制審の委員だった斎藤梓氏、橋爪隆氏、山本潤氏。 SHELLY氏。 これらの参考人に対する質問。 5/17の参考人は、各省庁の役人のみなさん。これらの参考人に対する質問。 5/20時点で修正協議中なので、とりあえず速報です。

          法務委員会質問事項

          訴訟のIT化とニョロニョロ芸

          日本人の世界を「世間」と「社会」に分け、現代では「世間は中途半端に壊れている」と述べたのは鴻上尚史氏である。 詳しくは氏の「コミュニケイションのレッスン」を読んでいただきたいが、詳しくわからなくとも、なんとなく雰囲気はつかめると思う。 私がふと鴻上氏の世間と社会論を思い出したのは、今年、法制審で「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」が発表され、裁判がIT化された後の仕事をイメージせざるを得なかったからである、 民事裁判は「主張と証拠を書面で出し合い、全く第三

          訴訟のIT化とニョロニョロ芸

          訴訟記録閲覧制限の流れ

          性犯罪被害者側の弁護士として仕事をしているので、訴訟記録閲覧制限の申立ては馴染みのある手続である。 かつて…10年以上前だが…いにしえの閲覧制限の申立ての趣旨は、「本件訴訟記録の全部について,閲覧若しくは謄写,その正本,謄本若しくは抄本の交付又はその複製を請求することができる者を本件訴訟当事者に限る。」でなんとかなった。 しかし、民事訴訟法91条が、誰でも訴訟記録の閲覧を求めることができるとしている趣旨は、裁判の公開要請であり、憲法に根拠のあるものなので、現在は、漠然と訴

          訴訟記録閲覧制限の流れ