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永六輔は時代の空気と人の心を読む天才的な戦略家だった

6月30日放送回のテーマは、
『永六輔名作ベストテン』。坂本九や水原弘など、永さんが生み出した数多くのスターのヒット曲が
ランクインしました。
 
それらの曲資料を読んで気づいたのは、
時代の空気を読み、流行をいち早く取り入れる
永さんの感性の鋭さ。
永さんの作詞には、その当時最先端のキーワードや流行がたくさん登場します。
 
   時代を先取りするキラキラフレーズ
例えば、梓みちよさんの「こんにちは赤ちゃん」。♪私がママよ♪と
ありますが、当時は「ママ」という表現が珍しかった時代。「アメリカかぶれしやがって」という抗議の電話もあったと、永さんは自書で回顧しています。
 
また、若い恋人たちのエピソードを描いたデューク・エイセスの「おさななじみ」には、「ゴール・イン」「プロポーズ」「アベック」などの流行語がふんだんに盛り込まれていますし、九重佑三子の「ウェディング・ドレス」が発表されたのは、白無垢が当たり前で、ウェディング・ドレスを着る人はほとんどいなかった昭和38年。その翌年に桂由美さんのブライダル専門店がオープンしたことを考えると、この曲のヒットが日本の婚礼様式を変えたと言っても過言ではないのかもしれません。


     短いイントロは戦略だった?
そして今回、永さん作品の特徴として驚いたのは、イントロの短さ。ランクインした楽曲のほとんどが10秒もありません。これは、永さんが放送作家として携わった伝説の音楽バラエティ番組『夢であいましょう』に関係があるのではないでしょうか。
 
先に挙げた「こんにちは赤ちゃん」
「ウェディング・ドレス」をはじめ
「上を向いて歩こう」「遠くへ行きたい」」などがこの番組から生まれましたが、当時は生放送。時間的な制約が厳しい中、イントロを短くして即効で視聴者の心を掴むタイムパフォーマンス的な戦略ではなかったかと、同業の放送作家である筆者は推察します。
 
そして、その戦略が事実ならば、先見の名と言わざるを得ない、現在の音楽事情との驚くべき共通点を見出すことができます。
 
2020年の「インターネット白書」で、サブスクが流行り始めてから 楽曲の前奏が短くなったことが明らかになりました。1980年代までの前奏が平均約20秒 だったことに対し、2019年には平均5秒までに短縮。
サブスクだと5秒程度で25%のユーザーが歌い出しまで待ちきれずに離脱、30秒で更に34%が離脱するため、イントロは最短であることが求められるのです。
 
しかも、これは日本に限ったことではない世界的な事象で、短い前奏を戦略的に使ったQueenが最近また流行ったのも、「代表曲がサブスクに適しているからでは」という向きもあるとか。
そう考えると、今ふたたび「永六輔」が若い世代の心に届き、リバイバルしてもおかしくないかもしれません。
 


兎にも角にも、さすがは「Sukiyaki」で世界を席巻しただけある永六輔・中村八大コンビの天才的な発想であることに間違いはありません。
テレビが苦境の時代と言われますが、我々は改めて先達である永さんを見習い、視聴者の心を掴む番組づくりに精進したいと思いました。
 
そんな「永六輔名作ベストテン」は、6月30日(木)よる9時!どうぞお楽しみに!
 
ゲスト:九重佑三子 丘みどり 三山ひろし 純烈
 構成作家 工藤ひろこ



 

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