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人の寿命を決定する因子としては、本人の持っている遺伝的・体質的要因に加えて、食生活、運動習慣などの生活習慣が広く知られています。しかし、近年では、どのような職業(仕事)に就いているか、どのような社会的地位にあるか、ということも、健康に大きな影響があるとわかってきました。

イギリス国内の著名な研究では、公務員を4階層にわけ、もっとも上位の階層と比べ、もっとも下位の階層の突然死のリスクは、なんと4倍も高いという結果が示されました。
かつては、管理職ほどストレスフルで、健康に悪いと思われていましたが、逆だったわけですね。
後に類似する研究結果も報告されるようになってきました。また、職業以上に、所得と健康、寿命との関連を示唆する研究も多く、社会医学では注目の分野と言えるでしょう。

職業が寿命と関連する要因は2つ

事故が起こりやすい危険度の高い仕事などを除いた場合、職業が寿命と関連する要因は大きくわけて2つあると言われています。

ひとつ目は、「裁量権の有無」。自分で自分の仕事をコントロールできる人ほど、ストレスが低く、長生きする傾向があります。上記のイギリスでの研究結果も、このことを示していました。

そしてふたつ目は、「過重労働と暴飲暴食」。深夜までの残業や徹夜が当たり前の長時間労働や接待続きなどでの過剰な飲食は、当然体に悪いということになります。

もちろん「早死にする職業」を、確かなエビデンスや統計的に示すことは、ほぼ不可能です。
とは言え、「裁量権」と「身体的負担」のふたつに焦点を当て、「健康状態」が懸念される職業の例をあげることはできます。
以下に特定の職業をあげますが、それぞれを批判する意図はありませんので、誤解なきように…。

具体的職業の一例

まず健康に良くない職業として思いつくのが「大手広告代理店の営業マン」です。
彼らは、徹夜仕事がさしてめずらしくもない激務の仕事ですが、裁量は少ないですね。加えてお客さんとの接待で連日大酒を飲むことも…。お給料やステータスは高いものの、体には負担ですね。

そして、「IT企業の下請けSE・プログラマ」「飲食チェーン店の店長」もあげられます。
どちらも長時間労働のうえ、お給料はそれほど高くはありません。下請け会社のSE・プログラマは、基本的に親会社の指示(無茶振りも含めて)には逆らえませんし、店長も、結局は雇われなので、裁量権はさしてありません。

「若手官僚」も心配な存在だと言われています。
官僚は、エリートで好待遇のイメージがありますが、それは年長者だけです。基本は、年功序列の縦社会すので、若手は給料も安いし、深夜まで働かされるのが通例。実際、某省庁では入省した若手20人のうち、3人が10年以内に自殺したという事実もあります。

また、「身体的負担」につながることでもありますが、「勤務時間が不規則」の職業も、かなり寿命に影響を及ぼすと言います。
不規則な生活は、当然、体に影響を与えます。不定期に夜勤があるような仕事は、健康には負担となりますが、具体的に言うと、「病棟勤務の看護師」「会社勤務のタクシードライバー」「長距離トラックのドライバー」などですね。
彼らは数日に1回は夜勤があり、体内リズムを崩しやすい。さらには、どちらも上から管理される仕事なので、裁量権は小さいと言えます。
CAの仕事も大手なら好待遇ですし、フライトとフライトの間にはお休みも取れますが、「LCCのCA」は、経費削減のため、連日フライトが入ったりとかなりのハードワークになりますね。

パイロットの寿命は短い

「民間航空機のパイロット」は、一般より10年ほど寿命が短いというデータがあるそうです。
緊張感を強いられることや高空を飛ぶことによる放射線被曝など、いろいろと原因は考えられるそうです。
国際航路の場合は、長年時差にさらされて体がぼろぼろになってしまう方もいるようです。
パイロットは「エリート」のイメージが強い職業ですが、労働環境という側面では厳しいものがあります。

自衛隊の戦闘機のパイロットなどは、さらに厳しい環境にさらされるそうです。

こんな話を聞きました。
第二次世界大戦当時、戦闘機のパイロットは、25歳にもなったらもう「ベテラン」だそうで、みなさん気迫に満ちた恐ろしい姿だったそうです。軍人ですしね。
そして、年齢以上に老けた姿のパイロットが多かったそうで、海軍の陸上攻撃機のあるベテランパイロットは、背中が曲がり、よたよた歩く老人のような姿だったと言います。
激しい実戦と過酷な空中勤務により、年齢よりもはるかに肉体の老化が進んでしまったのだそうです。

長生きできる職業とは

逆に長生きする傾向のある職業の例も紹介しておきます。
たとえば、「宗教家」。かつて各界の著名人の死亡年齢を調べたとき、寿命がもっとも長かったのが宗教家だったそうです。
誰でもなれるものではありませんが、信念や信条を曲げることなく、心穏やかに過ごしたことが影響しているのでしょうか、理由は定かではありませんが…。

また、「大学教授」「開業医」「実業家」なども寿命が長かったそうです。
いずれもかなり自己裁量が認められている職業ばかり。やはり自由であることは、人間の寿命に大きく関係するようですね。

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