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大乱闘はビジネスの教科書:現代ビジネスを『スマブラ』で学ぶ

ここでは『スマブラ』を、ビジネスの題材として扱ってみます。


『スマブラ』とは?

スマブラはNintendo64ソフト『任天堂オールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』を初代とし、任天堂から新たなゲーム機が発売されるたびに発表されてきたキラーコンテンツの一つ。最新作はNintendo Switch対応の『大乱闘スマッシュブラザーズSP』です。

マリオ、ピカチュウ、カービィといった、任天堂ゲームの人気キャラクターが一堂に会しバトルする対戦型アクションゲーム。このゲームをいつも絶妙なバランスでまとめて人気作としているのが、ディレクターを務める櫻井政博さんです。

櫻井さんは長年、様々な媒体でゲーム作りの手法などを自ら情報発信しています。それらを踏まえてスマブラというゲームを見ると、この作品がゲームとしてだけでなく、ビジネス的にもとても面白い側面をいくつも持っていると考えるのは、私だけではないはず。それらを少し紹介したいと思います。

その1:課題の発見とその解決

そもそも、ビジネスとは顧客の課題を解決してその対価を得る行為、という側面があります。しかし、ゲームとはエンタメの一つ。生活必需品などの必要なものを売るビジネスでない以上、課題を見つけることが難しい業界ではないでしょうか。

ファンには広く知られたことではありますが、初代スマブラは元々、当時コアなファン向けのジャンルとなりつつあった格闘ゲームの課題を解決し、よりカジュアルに楽しめる対戦型ゲームを作る、という目的で企画されたものです。スマブラは当時のゲーム業界における課題を明確に定め、その解決策を提示する、ということに成功した事例であると言えるでしょう(そもそも、櫻井さんが課題を解決するという形でゲーム開発にアプローチする方のようです)。

現代においては物が溢れかえり、人々が抱える問題が見えにくくなった結果、新たなビジネスの創出が難しくなった、とはよく言われることでもあります。

その2:プロセスエコノミー

スマブラシリーズは、初代からゲーム自体の情報発信が積極的に行われていました。Webサイト、ブログ形式、近年では動画配信と、その時代にあった情報発信が一貫して行われていることが特徴の一つです(インターネット上のものは、今でも閲覧できます)。元々は「全く新しいルールのゲームについて少しでも知ってもらう」という目的があっての情報発信だったそう(ここにも、課題と解決というセットがあることが見て取れます。

今では、ゲーム発売前に限られた情報をあえて出すことで期待を高め、発売後も追加キャラクターの発表やゲーム制作の裏事情などを展開することでユーザーを飽きさせない工夫がされています。これが、スマブラの人気を作る要因の一つ。商品の完成形だけでなく、その商品が完成に至る過程も踏まえて一つの商品パッケージと見せる「プロセスエコノミー」という考え方に非常に近しいものです。

その3:カスタマーサクセス

最新作『スマブラSP』は、発売後も3年近くの間追加キャラクターを発表し続け、ゲームバランスの調整なども絶えず行われてきました。この3年間顧客にとっては、スマブラは一つの商品というよりも、一種のサービスとして捉えられていたように思います。

カスタマーサクセスとは「顧客に寄り添って、成功体験を提供し続ける」という近年のビジネスの考え方の一つ。サブスクリプションサービスなどに主に適用される言葉ではありますが、私はこの3年間のお祭りは、カスタマーサクセスを体現していたのではないかと、今振り返っても感じています。

その4:ブランド

最後に、スマブラの歴史を知ることは、ブランドという考え方を理解することにも非常に役立ちます。

スマブラには格闘ゲームの課題を解決する目的があったことは、前述の通りです。「キャラクターが埋もれてしまう」ことも課題の一つでした。基本的に格闘ゲームはプレイ時に操作キャラを選ぶことになりますが、その選択画面には8~10人のキャラクターが並んでおり、どうしてもキャラクターが埋もれてしまうことになります。

スマブラは、この問題を解決するために「任天堂のキャラクター」というブランドの力を借りることで、課題の解決に成功しました。既存の人気ゲームを利用したと言えばそれまでですが、格闘ゲームに内在する問題を解決する、という明確な目的があっての採用だったのです(もちろん、全くジャンルの異なるゲームキャラクターをうまくまとめるゲーム制作の手腕も問われるでしょう)。

そして初代スマブラから時が経ち、逆にスマブラもまた一つのブランドとして広く認知されるようになりました。今や多くのゲームファンが、自分の好きなキャラクターがスマブラへの参戦を望むようになっています。ブランドが成長したことにより、顧客の信頼を勝ち取ったという非常にわかりやすい事例です。

その象徴とも言える出来事がディズニーキャラクター「ソラ」の参戦でしょう。

ディズニーは版権がとても厳しいことで有名な企業。なぜならディズニーこそがエンタメ業界で一番強いブランドを持っており、そのブランドを守ることを大事にしているからに他なりません。特に、他のキャラクターと同列に扱われるようなコラボの仕方は、ほとんど無いのでは無いでしょうか?

ディズニーがソラの参戦を認めたということは、スマブラというブランドがディズニーに認められるまでに成長した証であると言えます。

最後に

スマブラの特徴をビジネス視点で読み解いてみました。最近のビジネスについて論じている書籍は数多く出版されているので、それらを自分の知識や思考と結びつけることは、世の中の理解にも役立つしいい頭の体操にもなると思います。興味がある単語があれば、関連する書籍を読んでみてください。

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