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和のビーズバッグ・その見方と鑑賞知識


日本製ビーズバッグの特色と歴史については、先の稿でご説明させていただきました。日本製ビーズバッグは、日本刺繍の伝統の上に成り立つ独自の工芸品であることをご理解いただけたと思います。しかし、和のビーズバッグの素晴らしさはそれだけではないのです。いろいろな鑑賞のポイントがあり、それを知っていただくことは、他の国の製品と日本製の物を見分ける判断基準にもなります。コレクターの方は、良いコレクションを作る指標ともなりますので、ぜひご覧ください。

1 和のビーズバッグは持ち手にこだわる

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このバッグの持ち手をご覧ください。

バッグ本体と同じ刺繍が施されています。実はこの持ち手、細長い生地に刺繍をして、後から仕立てるのです。実はこの部分も余分な刺繍の仕事になる訳ですが、迷わず作っています。刺繍の持ち手は本体との調和が実に素晴らしいのです。こうした細部にこだわるのが、和のビーズバッグの特徴です。

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こちらも同じです。なぜこんな細かな仕事を、持ち手だけ金属とかにすればいいのに!と思われるでしょう。日本製ならではのこだわりです。東南アジア製のバッグのほとんどは金属製の持ち手です。

2 和のビーズバッグは口金にこだわる

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ビーズバッグは持つジュエリーです。
口金にこだわるのは当然のことです。流行した当時はいろいろな口金が登場しました。上の画像のものは、「銀線細工」といい、細い金属の線をろう付けして作り上げるものです。平田袋物工芸で、「昔はこの細工は「平戸細工」と呼ばれていた」と伺いました。これもまた繊細な日本の手仕事です。これ以外にも、ラインストーンを入れたりといろいろな口金が用いられています。また、この口金にビーズを刺繍した布地を取り付ける袋物仕立の技術も注目に値します。

3 和のビーズバッグ・裏と表に注目

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この2枚の画像をご覧ください。同じバッグの表と裏です。裏が柄が少ない!手抜きをしているのか?と思うあなたは和の心がわかっていません。

華があるのは表だけにし、裏は表の柄に関連のある絵柄を少しだけ入れています。全部無地にすれば仕事は楽ですがそれはやっていません。この心にくさが和のビーズバッグの醍醐味なのです。
これは何かに似ている、そう、名古屋帯のお太鼓と胴の絵柄の関係に似ています。名古屋帯の胴の絵柄は太鼓の柄を引き立て、少し関連のある絵柄をつけるのが定石となっています。胴部分の柄は小さく控え目で、強く主張することはありません。その趣向がそのままビーズバッグに引き継がれているのです。

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こちらも同じく、花をひとつだけ裏側に刺しています。この小さな世界に、着物の美意識がそのまま引き継がれているのは、なんと素晴らしいことだと思いませんか?

【参考文献】和のビーズと鑑賞知識 似内惠子

【お知らせ】一般社団法人昭和きもの愛好会では、この伝統と技術を後世に伝えるべく、展示や教室の開催を行っています。近くは2021年5月27日から30日まで、ビーズバッグとビーズ刺繍展示会【粒々(つぶつぶ)の輝き】を開催します。ぜひ会場で実物をご覧ください。

昭和きもの愛好会では、動画でも和のビーズバッグの魅力を紹介しております。こちらもどうぞご覧ください。
昭和きもの愛好会 和のビーズバッグの魅力
https://youtu.be/eIFta0iTbEshttps://youtu.be/eIFta0iTbEs
https://showakimono.jimdofree.com/ 昭和きもの愛好会HP
https://www.facebook.com/showakimono/ 昭和きもの愛好会FB

(似内惠子 昭和きもの愛好会理事)

(K1955)

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