枠の外からエンジニアリングを見る
はじめに
ここ数か月、他の分野からエンジニアリングを見ることが多くなった気がします。
僕は、大学は工学部機械の制御・ロボットの専攻ですが、院には「先進健康科学研究科」という少し変わったところに所属しています。他人から見れば、この名前からは僕がロボットやってるなんて全く連想することはできないかもしれません。
もっと詳しい話をするなら、この先進健康科学研究科というのは、工学部の一部と農学部の一部と看護学部の一部と医学部の一部が合体してできた融合分野の研究科です。新設の研究科なので僕もよくわかってないのですが、食品×医療、ロボット×看護、IoT×農業みたいなことを目指しているらしい。
僕はその中でも、医工学コースという場所にいます。僕もわかってないのですが、よく出てくる例でいえば、心電計や体温計、レントゲン、MRI、補助人工心臓などそんな感じのことを工学的観点から勉強しています。
コース的には医工学ではありますが、農学や看護学、医学も掠る程度には勉強します。
まぁと言うものの僕の場合研究科は変わりましたが、もともと学部の頃は機械科だったので研究自体の変更はなく、ずっと4脚歩行ロボットやってます。面接の時とかよく、4脚歩行ロボットとその研究科にどんな関係があるんですか?と言われるのですが、本当のこと言うとほぼないです(笑)。とりあえず、介護で……階段を……みたいには答えますけど。
ただ、一番言えるのはこれから下にも書いていきますが、エンジニアリングを外から見るようになりました。
エンジニアリングを外から見る
エンジニアリングを外から見るというのは、社会に実装状態の機械や計算機(テクノロジー)を改めて観察し、考察するというような意味で使っています。
そもそも工学の目的とは、テクノロジーや知見を人類の役に立つ形に変え、社会に実装することにあります。もっと究極的に言うと「人類の幸福」が目的です。
そんなに深く考えて常々生活してはいませんが、学部の頃より工学に対しても目を凝らせるようになったなぁと感じます。
最近の出来事
①4月の終わりとGW中、inahoという会社に行ってきました。この会社は、野菜の収穫ロボットを開発しています。
下の記事にしています。
この記事の内容とは関係ないのですが、この後、inahoとまたもう一社の社長さん&社員さんたちとご飯にご一緒させてもらいました。
ここで、ちらっと出たのが林業のロボット化の話でした。農業と同じく林業も後継者不足、人員不足、高齢化な現場です。農業の裏に隠れて少し陰が薄いような気もしますが、大事な一次産業です。
木材は海外から輸入すればいいので産業が衰退すること時代には問題はないのですが、産業は衰退したとしてもある程度森林を手入れしないといけないという問題があるということです。少し僕も調べたのですが、人工林は手入れをしないと地面に根が張らず土砂災害に繋がってしまうそうです。
なんかロボットが使えそうな現場だなと感じます。(とはいえ、森はかなりカオスな場所なので難しそう)
②先日友人のイベントに参加した際、話の中でプランクトンを数えるバイトがあるということを知りました。
なんでも魚に餌(プランクトン)を与える際にプランクトンの量を推定するらしいのです。
詳しくは忘れましたが、1立方センチメートル(リットル単位だったかも)の海水の中に何匹プランクトンがいるかを数える。それで、どれだけの海水(餌)を入れたらいいか推定する。
日給のバイト(確か昼と夜数える)で7千円。
これ、バイトする側からすると1日に一回顕微鏡でプランクトン数えて餌やるだけだから、楽に?効率的に?お金を稼げるかもしれないのですが‥‥、画像処理を勉強してる身からするとすごく変な感じが‥‥
もしかして、これ画像処理で一発でいける‥‥?
365日×7000円=約255万なので、それ以上の値段で売れるかもしれない‥‥これ開発して全国の養殖業界や研究機関に売りつければ‥‥
③2週間ほど前、大学の近くで農業バイトをしてきました。田植えの前の種まきという作業です。僕の場合は祖母が米農家なので小さい頃から何度もやったことがある作業でした。
播種機(ベルトコンベア式の機械)から出てきた育苗箱(プランターみたいなやつ)を、目が出るまで畑に並べて置いておきます。
その育苗箱を播種機から、畑まで運ぶバイトです。
播種機こんなん↓
https://www.suzutec.co.jp/suitou/post-755
これが結構きつい。6〜7キロほどの育苗箱を十数メートル運ぶだけですが、これを100回ほど繰り返すので腰と肩と腕と内股がやられます。
休憩中農家さんと、「種蒔き大変ですねー」と話をしました。その会話の中で出てきたのが、大変なのは種蒔きとか事前準備だけで、後は機械に乗ってるだけだからそれほど大変ではないとのこと。育苗箱を運ぶのだけは力と人数がいるので人を雇うがそれ以外の時期は雇わなくてもやっていけるとのことでした。
この話を聞いて考えたのが、スマート農業に代表される無人トラクターなどの機械は、意外とまだ必要ないのかもしれないということです。
勿論、無人で田を耕し、田植え、収穫できると非常に嬉しいこと、将来的にはそうなる未来が来るに越したことは間違いありません。
しかし、農家の抱えている本当の問題はそこではなく、種蒔きや準備の部分だったりします。
勿論、育苗箱を運ぶのは無人トラクターとよりも難しい技術だと思います。ただ運ぶと行っても畑の足場は不安定です。また、土の道の上を、木や段差など障害物がたくさんあるカオスの状況で運ばなくてはなりません。
機械に乗るのは高齢の方でも割とできますが、力仕事はなかなか出来ません。
少しずつ改善されていくといいなぁと思います。
僕の考え
研究室の外に出て自分の目で見るようになり、あっここが問題だな、これはなんか解決法が微妙だなぁ、と考える時間ができました。
と同時に、僕らは問題をほとんど知らないのだなと自覚しました。
結局、エンジニアは解決手段は持っていますが、問題自体を持っているわけではありません。なぜなら問題は現場にしかないからです。
ただ一方で、よくエンジニアに、外に出ろ、問題を見つけろ、見つけて来い、という人がいますがそれも何か違う気がするのです。それも言いたいことはわかります。エンジニアもある程度現場の知識がないと問題を把握できず、解決できない。
しかし、エンジニアはあくまで解決手段を持っているスペシャリストであって、問題を見つけるスペシャリストではありません。
僕のように、プランクトン数えるバイトの話を聞きに行ったり、わざわざ農家に行って腰痛めてくるような人は普通いません。(自分がすごいという意味ではなく、普通やらないという意味)。エンジニアとしても、そんなことやる余裕があるなら勉強しろ、研究しろの方が正しいと思います。
また、エンジニアが外に出るのと同時に、現場のスペシャリストたちも「あれ?これ〇〇を使えば解決できるんじゃね?」という感覚を身につけるといいかもしれないと思いました。すると、こういう問題があるからエンジニアに頼んで解決もらおうと提案することができます。勿論、このためには最低限のテクノロジーや工学の知識が必要になります。
最後に
上で、エンジニアに頼れと書いたものの、全て問題解決をエンジニアに任せていることには違和感を感じます。
エンジニアが問題を見つけろ、見つけに行け、そして解決しろ、みたい人任せな解決法では結局工学的にデザイン的には解決したのに、人間が理解できず付いて行けず問題が解決できないということが起こりかねないと思うのです。
だからこそ、現場の人もテクノロジーやエンジニアリングを理解して、こういうことが問題だ!と把握すること、そしてこうすれば解決できるのでは?という感覚を身につけてほしいと考えます。
やはり双方からの問題の発見と解決であってほしいと思いますし、それが本当の問題解決だなぁと感じました。
エンジニアリングを外から見た少しの感想でした。
おしまい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?