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井戸を掘ることになった話

「人生は、想定外なことでできている」

唐突だが、
明後日、2023年12月6日、井戸を掘ることになった。
結婚、出産などのイベントが、
自分の人生に起こることは、まだ想定できた。
だけれど、築100年の物件に出会って、
そこにまさか井戸を掘ることになるとは半年前でも考えていなかった。

「なぜ掘るの」と聞かれても、一言では答えられない。
一つ目的を言うなら
ご縁のあった「場」や「家」に感謝し、
そしてこの場でご縁があった人、
これからご縁がある人をつなげたい、という気持ちからだ。

その気持ちをもう少し言語化したく、
この井戸プロジェクトを時系列でご紹介したい。

井戸を掘る予定の中庭


2016年初め:場所との出会い

まず、この場所。
銀閣寺にほど近いこの場を見つけて、借りることになったのは
2016年の初めだった。

町屋としては、大きい部類に入る、元旅館だった築100年の一軒家。
「人が宿泊しては英気をやしない元の場所に帰っていく」
というカルマを背負ったこの場。
私の器のコンセプトにもぴったりだ。
初めての内覧では、きもちいい風が通った。
よし、ここから始めてみよう!と思った。

改装前の外観
改装後の外観

その後、様々なことがおこり、この場に、
住居としての機能を持たせるようになったのが、もう5年半も前。

そこまで夜にはだれも居なかった住居に、夜、人がいる。
少しずつ居心地のよい場所にしていく作業をすすめた。
人のいない家はすぐに朽ちてしまう。
住まいながら、こうして家と対話をしていく中で
少しずつ家に受け入れられるような気がした。

昔旅館だった、たたずまいがそこかしこに

そこからは、これまでnoteで書いていた「拡張家族」の物語が始まる。
「家族とは何か」という私の人生の大きな問いに対して
社会実験として模索しはじめたところ。

子供をハブとして、大人が知識を共有しあう。
思いやりで成り立つ世界はあるんだろうか。
ちょうどコロナになったこともあったが、いろんな人のご縁で
この場がさらに豊かなものになっていった。
(詳しくは拡張家族の記事をご参照ください)

2023年7月初旬:井戸のことが気になりはじめる


そして、拡張家族が、結婚、出産で家を出たあと、
部屋を整えていた時に、ふと、思い返すことがあった。

うちで一番いい奥の部屋と奥の庭 

この家を借りた日に大家さんがおっしゃった言葉。
「奥にね、井戸があるのよ。でも、もう使えないと思うわ」

借りてから7年。ずっとどこかで井戸のことを考えていた。
ちゃんと、御祈祷できてるのだろうか。
そんな思いがよぎった。

うちの井戸は、家屋の一番奥の庭にある。
この庭はレベルが一段さがって、そこに地下室があることは
借りると決めた後に知った。
一段下がっているため、うちの地下室は光が通る。

この辺りは、銀閣寺さんへの参拝のためか、
軒並み同じようなの旅館が立ち並んでいたらしい。

この地下室、今は物置になってしまっているのだが、
なぜか心地よい。
この家屋が大文字で有名な如意ヶ嶽の麓にあるからだろうか、
美しい水が降りてきて、ちょうど川につながる手前の
ぐっと水が貯まるようなところでもあるらしかった。

大文字 如意ヶ嶽からでる 2023年中秋の名月

ある瞑想家の友人が来た時にも、
そのようなことを言ってくれていて、
だからこの奥の部屋は、一番静かで、内観しやすいところなのか!
と、家の秘密をまた一つ教えてもらえた気持ちになった。

長い歴史の家と、仲良くなるにはそれなりに時間がかかるのだな。

一階店内の様子 ここはリノベーションしたエリア

さて、「井戸」というと、幽霊がでるとか
なんとなく怖いイメージをもつ日本人は多いだろう。
伝統的な家に生まれ育った私は、
家のいろんな所に、神様がいると教えられてきた。

そして実家の昔「井戸」のあった場所は、
なんとなく恐れ多い、怖い感じがしていた。
軽々しくいじっていい場所ではない、と思っていた。

そして、今回も
この家のオーナーではない私が
勝手に手をつけていいものかどうかということも、悩んでいた。

井戸を掘るということは、「神様を迎える」ということ。

大家さんだけでなく、神様にちゃんと筋を通さねばならない。

神様に聞く?
そんなの、誰に聞けばいいんだ!!

2023年7月末:井戸の仕舞い方を教わる


ある日、庭の手入れをしにきて庭師さんに
井戸のことを相談をしたところ、井戸の仕舞い方を教えてくれた。

井戸を仕舞うときは、
真ん中に竹を突き刺して、神様の息ができる通り道をつくった上で
周りを土で固めていくらしい。
数年後風化して、竹が自然に折れたら「仕舞えた」という合図。
とのことだった。

ある晴れた日。
おそるおそる井戸を開けると、もう上まで土で埋まっていた。
誰かが、いつかのタイミングで埋めて使えないようにしているようだ。
大家さんの言う、「もう使えない」とはそういうことか。

上まで土の埋められてしまっている古い井戸

庭師さんに聞いたような、「正式な仕舞い方」をしたかどうかもわからず、
それなら尚更、一度ちゃんとみてもらおう、
御祈祷してないのなら拝んでもらおう!!
そして再度使えるか、聞いてみてもいいかもしれない。


2023年8月中旬:井戸掘り屋さん登場


庭師さんが紹介してくれた「井戸掘り屋さん」がこられた。
京都に住んで長いが、井戸を専門に掘る業者さんが
おられるとは思わなかった。

おっしゃるに、この土で埋められてしまった
井戸を再度掘ることは不可能だが、
一階の中庭なら、井戸を掘ることができるよ、とのこと。

「井戸を新しく掘る」という選択肢がこの時に生まれた。

井戸をつくる予定の中庭 私の大好きな瞑想スペース


そしてある夏の日、友人が訪ねてくれた。
シルクロードの仏教美術の研究をしている女性。
井戸のご祈祷のことを
「ちょうど良いお坊様がおられます!」と紹介をしてくれた。

その夜、そこに集まった彼女含む3名との夜は
なんとも美しい時間だった。
そこで、そういった神様事の話を自然に話せて、
こんな井戸のことまで話せるとは。
「魂を成長させる」同志と束の間に再会したような心持ち。
水がつないでくれたご縁にただ手を合わせたくなった。

その後、彼女含め
そこに居合わせた友人たちは、
今回の井戸プロジェクトをずっと見守ってくださっている。

2023年9月:古い井戸のご祈祷

さて、9月に入り、ご祈祷のためにお坊様がきてくださった。
室生龍穴で有名な奈良の室生寺や室生神社あたりのご出身で、
お婆様が、その龍穴をずっとお守りされていたという血筋の方。

その2週間前に、母親をつれて室生寺にいった話はまた別のnoteで書くことにしよう。

室生神社へ参拝した8月のこと

お坊様は柔和な優しい雰囲気の中にも、凛とした方。
生身の人間であることを、今世でも享受されつつ、
魂の修行を途方もないくらい長い年月されているような方だった。

井戸の前で、特別にアレンジした法華経にてご祈祷をしてくださる。
お経がはじまるとふわっと空気が動き、供物の日本酒の香りを鼻に運んでくれた。

2023年10月:誰のために掘るのか

ご祈祷のあと、お坊様にお聞きした。
「何か私にお役目があるのであれば、
掘ってお祀りしてその水でいろんな物事を、潤したいと思っています。
私がやる必要がなければ、だれかにお伝えします、いかがでしょうか。」と。

すると、お坊様はすこし間をおいて、こうおっしゃった。

「あなたがやりたいと思うなら、やったらいいと思います。
神仏を拝むということは、徳を積むということ。
あなたがこれまでの人生で、事故にも合わず、生きながられてきたのは
御先祖の徳貯金を使わせてもらったから。
これから、後世への徳貯金をためていこうとおもわれるなら、
とても良いことなので、されたらいいと思います」

という事だった。

使命とは命を使うと書く。
それが、さまざまな資本主義のなかで仕事、そして個人の幸せになっている。
そもそも、役目なんてものはないのかもしれない。
一種の暇つぶしの人生のなかに、
「意味」を見出しているにすぎないのかもしれない。
だけど、誰かのために「徳を積む」とは、
今の時代を生きる人、一人ひとりが持てる
一番大義な、お役目なのかもしれない。

大層かもしれないけど、そんなことを思った。

ーーー

この場所を、7年前に借りてからのことを、思い出していた。
この場で、たくさんの学びがあり、人との出会いがあった。
コロナも乗り越えた。
人も喜ぶ場所に育ってきた。
そんな私も含めて、エネルギーをいただいた場所に感謝するとともに、
これからも、ここにご縁があった人のことを祈ることができたらいいな、
と自然に思えた。

この周辺地区は井戸が多かった。
しかし今では軒並み仕舞われている。

地下水の豊富にある京都。
その山の恵み、大地の水が、
また流れ、巡り、ここから人と人をつないでいくことを想像した。
そんな水で、美味しい一杯のお茶やコーヒーいれたい、と思った。

その後、大家さんにも快くご了解をいただき、
とうとう明後日、井戸を掘ることになりそうだ。

豊富な美しい水の都 京都

井戸を掘るといっても、つるべで汲み取るような井戸ではない。
細く8mほど掘って、そこからポンプで汲み上げる形の井戸である。
そして、水が出た後、水質検査に回してOKがでたら、
飲み水として利用できる。
でも、なんだかとても美味しい水がでそうな気がしている。
こういうときの、私の勘はあたる。

2023年12月:皆様にお願い

さて、ここまで読んでくださった皆様に
井戸を掘るにあたっていくつか、お願いがある。

まず1つ目。
このプロジェクトが面白いと感じていただける方がいたら
ぜひ、井戸家族になって欲しい。
井戸を掘るのは45万円くらいかかるが、
すこしでも寄付応援をいただけるなら嬉しい。

▼応援はこちらのPayPay リンクかQRコードより
https://qr.paypay.ne.jp/p2p01_K2xmchicdLbcuWlE


水質検査に通ったら、来年、
井戸びらきの茶会をするので、
そこに応援してくださった方をご招待させていただこうと
思っている。
なので、応援いただく方は、
わかるようにぜひお名前などを記載ください。


2つ目。
この水を大切につかっていただける方と一緒に、
この場で新しい事業をしたいと思っている。

たとえば、食の事業や、香水、スキンケア、お酒、
この恵みを一緒に使っていただける方を
募集していきたい。

もしご興味ある方がおられたら、ぜひメッセージをいただけると
嬉しいです。

水や場を通して、この恵みが循環していくように
「私たち」のWEの分母が大きくなっていく。

それぞれの人生が面白くて豊かなものになっていくように
祈りをこめつつ。

大文字 如意ヶ嶽を望みながらたま休憩する屋根。









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