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長期的未来に影響を及ぼす行為とその贈与性

Intro

哲学者・研究者・アーティストなどの行為は、「ある時代のある時点」においては、「何の役に立つのか?」と思われることも少なくありません。しかし、長期的に見たときに、「未来の人類に大きな可能性(選択肢の幅を広げる)を贈与している」とも考えられます。人類史の中で、「時間を越えて、与え、受け取る」やり取りについて考えてみたいと思います。まずは、いくつかのケースを見てみましょう。


【ケース1:アインシュタインの相対性理論】

相対性理論によると、時間は相対的なものであり、光速に近づくほど時間の流れはゆっくりになる、質量が巨大なものの周りでは時間の流れがゆっくりになる、ということを示していますが、「だから何なのか?」というのが通常の反応であると思われます。しかし、例えばGPSなどから得られる位置情報は、人工衛星と地上の重力の違いから時刻のずれを計算し、位置を補正しています。もし補正をしない場合、1日で数kmの誤差が出てきてしまいます。スマホが普及した現代において、この位置情報補正一つをとっても、我々の生活に大きな影響を与えています。アインシュタインが相対性理論を発表した20世紀初頭から約100年をかけた贈与を私たちは受け取っていると考えられます。


【ケース2:ガウディのサグラダファミリア】

サグラダファミリアは1883年からガウディが設計した教会建築ですが、当時完成までに300年はかかると言われ、彼は自身の死後に完成するこの壮大な計画に、身の回りの全てを捧げて貢献しました。彼が電車にはねられて亡くなった際、身の回りの全てを教会建築に捧げていたため、とてもみすぼらしい格好であったと言います。そんな彼のビジョンへの貢献を後世の人々が受け継ぎ、この教会は市民による寄付で現在まで建築工程が継続しています。彼の「自然を表現した建築」は、世界中のアーティストやビジョナリーに影響を与え続けています。また、このビジョンに対して多くの人が時間を超えて寄付・支援を行っています。


贈与における「時間差」

上述のケースは、長期的未来に影響を及ぼす行為とその贈与性を示す一端ですが、このようなケースでは、贈与が適切に受け取られるまでには「時間差」があることもわかります。例えば、その人の死後に世界がその人から贈与を受け取るといった時間差です。
その場合、ある種その行為者は「犠牲」とも捉えられるシチュエーションにも遭遇します。また、世界の視点からは、受け取れるまでの時間差が長いほど「機会損失」も起こり得ます。チャールズバベッジは19世紀に世界で初めてプログラム可能な計算機を考案しましたが、コンピュータはその約100年後の20世紀に登場しました。


意識的に行う、時間を超えた贈与のやりとり

そのような機会損失を繰り返さないよう、後世の人が「贈与を受け取ろう」とする努力もあります。例えば、テスラモーターズの名前は、ニコラ・テスラから引用するなど、多くの先人のビジョンを後世に気づいた人が受け取る・引き継ぐといった「時間を超えた贈与のやりとり」に積極的な人もいます。

このように、人類史というストーリーを考察すると、贈与を「長期的未来に影響を及ぼす行為」「その受け取りまでの時間差」の視点で見ることができ、また、それを意識し積極的に時間を超えた贈与のやりとりを試みるアプローチなども考えることができるのではないかと思います。


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Sho T
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