ケツ穴照らされたらストレス難聴改善した

 医療脱毛に行き、全裸になってきれいなお姉さんに全身はもちろんケツ穴まで爆裂照射されてきた。するとストレス性の難聴が軽快した。因果関係は不明。
 概要としてはこんな感じの日記です。


 脱毛契約は1ヶ月ほど前に済ませていた。推しは永久脱毛をしてそう(マジで偏見です)なので、より彼を理解するならば私も脱毛すべきだと考えたのだ。
 脱毛体験の有無がキャラクター像の理解に繋がるのか、という点にはかなりの疑問が残るが、当時の私は脱毛が二次創作の完成度に直結するはずだと頑なに信じていた。多分躁だったのだと思う。

 医療脱毛とひとくちにいっても、クリニックは山ほどある。大手から個人に至るまで、世はまさに大脱毛時代なのだ。美容脱毛も含めればもっと多い。
 私は検索して上の方に出てきた大手のクリニックと契約した。理由は推しのイメージカラーリング(白と水色)に近いカラーでサイトが構築されていたためだ。

 ウェブから予約をして、まずはカウンセリングに向かう。きれいなお姉さんが出迎えてくれ、一生懸命脱毛の良さを説いてくれた。
 この時点で私の医療脱毛モチベーションは非常に高く、良かろうが悪かろうがやる! 一刻も早く脱毛させてくれ! と暴れだしそうな程であった。故にせっかくお姉さんが頑張ってくれた説明を全然覚えていない。

 今になってみればこの時点で情報を吟味し、契約するか否かを検討すべきなのだろう。
 私は情報を吟味することなく、迷いも考えもなく契約した。ウェブで見た価格より高かった気がしたがあまり気にしなかった。今すぐ全身の毛という毛を根絶やしにしたい。その一心であった。きっと躁だったのだと思う。シラフでこの調子だったとは思いたくない。

 ワクチン接種をはさんだため、カウンセリングと実際の照射までには時間があった。
 その間に私がこの世で何よりも愛する犬の体調が悪くなり、死の気配が漂い始めた。比例するように私の健康も悪化の一途を辿った。中途覚醒を繰り返すようになり、特に理由なく涙が出た。犬は幸せだったのだろうか。私なんかが一生を預かってしまって良かったのか。死にゆく犬に何もしてやれない。無力。情けなさ。私じゃない誰かが飼っていれば違っていたのだろうかと考え、自己嫌悪が止まらなくなる。
 そしてある日目覚めると右耳に耳閉感を覚えた。バイトが忙しかったため、「そのうち治るだろう」と放置していたのだが治る気配がない。観念して受診してみると、ストレス性難聴であった。薬を処方されて数日経過し、状態はなかなか変わらなかった。

 躁状態から鬱状態に突入すると冷静さを取り戻し、身の回りの全てが不安になる。私は「推しの脱毛事情はマジでただの幻覚」と気がつき、脱毛へのモチベが下がりまくっていた。そして脱毛が怖くなっていた。
 医療脱毛は痛いと聞く。勢いで契約したが、痛みに耐えられなかったらどうすれば良いのか。このクリニックで良かったのか。ウン十万払う価値はあるのか。何より犬の命はどうなるのか……

 契約してしまったものは仕方がないので、脱毛前日の晩に手が届く範囲全てをシェービングする。普段「人目につきそうなとこだけやっときゃいいだろ」という舐めた姿勢で毛を剃っていたため、ここで泣きを見た。
 これまで生きてきて気がつかなかったが、人間は産毛がすごい。あっちこっちにパッと見見えない毛が生えまくっていてキリがない。
 そしてVIOも契約していたので剃ったのだが、剃りながら「VIOとか言ってるけどこれ陰毛じゃんね」と考え落ち込んでくる。VIOとはすなわち陰毛(前面)、陰毛(側面)、陰毛(ケツ穴)であり、こんなもんをきれいなお姉さんに照らされるのかと思うと憂鬱以外の何物でもない。つーか本当に痛そうである。脱毛は火傷をすることもあるらしい。陰毛火傷とかお笑い種だ。
 そんな感じでテンションは最悪になり、全身を処理するのに1時間ぐらいかかった。


 さて脱毛初回当日である。受付を済ませ待合席で緊張していると、渡された札の番号を呼ばれる。本日の担当さんに連れられて、カーテンで仕切られた個室へと向かった。
 部屋へ到着するとすぐに、
「じゃあ服全部脱いでくださいね」
 と案内があった。あんまりあっけらかんとしているのでちょっとビビった。

 脱毛は全裸で行われると聞いてはいた。しかし本当に全裸なのか……と圧倒される。エロマッサージモノで見たことがある展開だと思った。そう考えると、タオルが敷かれたベッドもなんだか馴染み深い。リンパ云々でよろしくやるベッドだ。(風評被害である)

 脱いだら紙ショーツを履いて待つようにと言われたので、ビニール袋から支給されたショーツを取り出す。感想は「エロ下着のエロくないやつだな」であった。「エロ本に出てくる下着のエロ要素が全て消え去った紙」がより正確な印象だ。紙製Tバックとでも評するべきか。
 履くと極めて間抜けな格好に思えた。そして面積がクソ小さいので履いても焼け石に水だった。ここで羞恥心は消えた。布団のようにタオルをかけられ、照射が始まる。

 脱毛は顔面から開始された。顔面にジェルを塗りたくられ、仕上げのシェービング後照射が始まる。脱毛といえばよく分からん機械を体に滑らせていくイメージだったのだが、顔面などの細かい部位は小さい機械で1箇所ずつ照らしていくような感じだった。
 初照射の初部位だったのでめちゃくちゃ緊張していたのだが、痛くはなかった。毛が濃い眉周辺であっても「ちょっと熱いな」くらいで済んだので拍子抜けする。
 私は先日アートメイクをしたので、眉毛のキワまで当てられなかったのが大きいのかもしれない。脱毛→アートメイクの順で行うべきだったなと後悔する。

 顔面終了後、全身の背面側が始まった。ここからは私の持っていた脱毛のイメージ通りで、ジェルを塗りたくり仕上げシェービングをし、機械を滑らせていく流れだった。使用する機械が氷のように冷たいのだが、滑らせていくうちに温かさを感じ始めるので面白かった。
 別段痛みを感じることも無く普通に終了したため、これといって書くことがない。強いて何か書くなら、肩こりと腰痛に効きそうだなと思った。

 感染予防対策で接触時間を減らしているらしく、ここまでで会話はほぼなかった。世間話を楽しみたいという人には物足りないかもしれないが、コミュ障オタク的にはこれが非常にありがたかった。私は当たり障りのない会話というものが苦手なので、求められた時に「はい」か「いいえ」を答えるだけの方が気楽なのだ。

 担当さんが変わり、今度は体の前面とVIOの照射が始まった。背面同様ジェルを塗りたくり、シェービングの後機械を滑らせる。
 ここで意外だったのは、鎖骨周辺の照射がちょっと痛かったことだ。脇は痛いだろうな……と覚悟していたのでアッツ! と思ってもアートメイクの方が痛かった(顔面を切られている感があった)、で万事解決だったのだが、パッと見毛が生えてなさそうな鎖骨周りがチクチクしたので驚いた。皮膚が薄いせいかもしれない。

 ビビっていたVラインは腹の照射とともに行われた。私がVライン照射にビビっていることを漏らすと、担当さんが「痛かったらすぐ言ってください」と熟練の照射テクを披露してくれた。腹部分を照らし、Vラインに移行しようかというその瞬間ピャッ!! とすばやく機械を動かすのである。
 ピャッ!! が本当にピャッ!! としか言いようがない動きなので、全然痛くなかった。何より面白すぎて「仮に痛くても良いな……」と思った。私は他人に陰部を見せて何をやらせているんだ、という申し訳なさが限界を突破し、ぶっ壊れた脳は愉快さを感じ始めていた。Iラインもそのままの勢いで終わった。記憶が全然ない。

 脱毛はいよいよ大詰めとなり、最後にOライン、すなわち肛門周辺の毛を照射することになった。勿論他の部位同様仕上げシェービングがあるので、私はきれいなお姉さんにケツ穴を見せ毛を剃られた。羞恥も何もなかった。エロくないエロ下着(紙製)を身につけた瞬間からそんなもの捨てている。

 さりとて感慨はあった。私は今、他人にケツ穴を見せ、ケツ穴を照らされている。一体この世界にどれほどケツ穴を照らし出された人間がいるのだろうか。
 ケツ穴を照らし出される図を考えると、あまりの馬鹿馬鹿しさに自己嫌悪もクソも無くなってきた。クソだけに、と書きそうになったがあまりにも品がないので我慢する。
 どれほど無力であろうが、またケツ穴を他人に照らされようが、私は犬を愛している。ならば最期まで犬を愛し抜くのみではないか。

 時間にして約1時間半。全裸になってきれいなお姉さんに全身はもちろんケツ穴まで爆裂照射された結果、手に入れたものは悟りであった。因果関係は不明だが耳閉感まで治っていた。どういうこと?

 そういうわけでオタクが脱毛に行った日記でした。
 日々ストレスを抱えている人間はケツ穴を照らされると悟りを手に入れられるのかもしれない。知らんけど。
 医療脱毛、オススメです。

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