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日進月歩 ~Road to MBA~#69

2020/12/19:企業財務基礎⑪
 前回に引き続き土曜日は、ファイナンスといえばこの人と呼ばれる下川先生による企業財務基礎の11回目です。前回で最適資本構成におけるMM理論を基に説明しましたが、本日は投資家に対する「ペイアウト(配当)政策」についてお話いただきました。

 企業が利益を獲得した後(税引後当期純利益)の利用用途には2種類あり、(A)株主に分配する、(B)剰余金として内部留保するといった意思決定の方法があるが、目指すべき目的は「企業価値の最大化」となる。

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ペイアウト政策:(A)株主に分配する
 企業の株主に対する現金還元政策(ペイアウト)であるが、具体的には➀現金配当と②自社株取得の2つの方法で実施されることが多い。日本でも昔は「現金配当」のみに限定されていたが商法改正によって、定款に記載すれば取締役会決議だけで「自社株取得」が制度上可能となった。

配当の種類:
通常の決算期に配当される(普通配当)、特別な理由がある場合に配当される(特別配当)、期中に配当される(中間配当)が存在している。

 配当というものは、安定的(継続的)な株式還元と市場がみなすものであるため、将来にわたっての安定や成長の意味を込めている。しかし、株主からみると、配当は所得課税の取り扱いになるため、あまり「増配」というものに積極的というよりは、将来的なキャピタルゲインを求めてくる投資家も多いように見受けられる。

ペイアウト政策:(B)剰余金として内部留保する(再投資)
 株主への配当を支払った後に残った企業内に留保される資金となる。株主は将来的なキャピタルゲインを求める傾向があるため、成長が見込まれる投資案件への再投資によって成長を求めている場合が多い。NPV>0を獲得できる場合は、内部留保を選択し再投資することが株主から支持されます。


 これまで2種類のペイアウト政策をお話してきたが、企業におけるフェーズによっても配当における性向が変わってくる。成長している企業、成熟して安定している企業では大きく政策も変わっており、「配当性向(%)」という割合で示すことができる。

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※成長企業:利益をできるだけ成長機会(NPV>0)に回すことで、企業価値を高めていく傾向があるため、配当性向は低くなる傾向
※成熟企業:投資機会が少ないため、高い配当性向を市場は期待する


 ここからは、配当政策における例題について、自分自身が学んだ内容について見解を述べたいと思います(あくまでも個人の意見です)。

Q:成熟企業が「配当を増やす」をすることはどう考えるか?

A:
 基本的に株主は配当よりもキャピタルゲインを求めており(配当は所得課税の取り扱いになってしまうため)、高配当をしすぎるほど「未来の無い成熟企業である」と思われてしまうことで企業価値が下がり、株価が落ちてしまう傾向にある。そのため、配当を増やす場合は特に説明には注意が必要となると感じている。本来は内部留保し、成長が見込まれる投資に充てるのが理想ではあるが、成長企業ではないためなかなかその投資案件には出会えないのが現状となる。

■説明案1:シグナリング仮説を基に説明
 増配の意思決定は、ある程度長期的な収益見通しに基づいて行われている旨を説明し、利益は今後も同様に確保できる見通しである旨を説明する。

■説明案2:フリー・キャッシュフロー仮説
 余剰現金を保有しすぎると、必ずしも株主価値最大化に用いるとは限らず、必ずしも企業価値を高めない投資案件を実行したり、私的便益のために必要以上の福利厚生施設などに対する支出を増やしてしまう傾向を防ぐために、増配配当によってエージェンシー問題を回避する意図で実施することを説明する。

■説明案3:ライフサイクル仮説
 時を経て成熟期にある企業は、再投資するほどの投資機会を有さなくなってしまう。成熟企業は株主へのペイアウトに積極的であり、成熟期に近づいた企業ほど、株主還元に対して強いインセンティブを持つというライフサイクル仮説に基づいて、B社は株主に対する配当政策に積極的であると情報開示をした上で、説明する。

■説明案4:収益持続性仮説
 持続的な利益のペイアウトに配当を用いるという仮説を基に、B社は成熟企業で持続的な利益を今後も将来的に出し続けていく安定感や安心感を理解していただいた上で、ペイアウトには増配配当を用いることを説明する。


 最後に、配当する側(企業)と配当される側(投資家)が求めているものを、いかに説明をして合意していくか。配当をどう配分していくのか、シンプルではあるが奥深い考え方であると感じることができました。

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合出場(通算115試合1得点)/関東サッカー/埼玉県サッカー
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

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