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君との想い出 #同じテーマで小説を書こう

 シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム。
 それは奇跡だ。

 君は、たしかにそう言っていたね。
 今になってしまえばボクにも良くわかる。

 シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム。
 それはたしかに奇跡だ。

 失われた時間を取り戻すように、ボクはそれを食べる。それは輝いている。それは香しい匂いでボクを魅了している。スプーンをいれる。サクサク、ポクポクと楽しげな音がする。一匙すくう。輝きが軌跡となって、スプーンのあとについてくる。

 奇跡だ、とため息をつく。

 鼻腔いっぱいにその香りを吸い込む。ボクの記憶が拡張され、君との日々が蘇る。なんて素敵なんだろう! ボクはたまらずスプーンを口に含む。

 あぁ……。

 それは奇跡宇宙は偉大でありその輝きは私を満たし君のいる世界への扉を開き今こそ大いなる時が訪れたそれは万物の彼岸であり緑と青と赤の入り混じった斑点がボクを包んで高みへと昇らせ低き低き底へと導き大いなる君がボクを呼んでいてボクはバラバラとなりそれは雨となって世界に降り注ぎ世界を癒し世界を育みやがてそれはシュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム。そうシュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタムの休日となってそれは人類の福音。として世界に君臨して成就するシュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム。

「またか」
「はい、これで五件目です」

 了解した、と言わんばかりに高山刑事に手を振り、牧野は椅子の上の男を眺めた。死んでいる。男の体は硬直したように手を広げ大きく仰け反り、男の表情は……極限まで目を見開き、口角を上げ、舌を出し、どこか笑っているような……とにかく、悍ましい表情をしている。

「シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタムの休日、ねェ……」

 牧野はしゃがみ、男の持つスプーンと、テーブルに置かれた空の器を交互に見た。振り返り、高山に尋ねる。

「本は、あったんだよね?」
「はい。テーブルの上に……ただ、今までと違うことがひとつ」

 牧野は眉をしかめた。

「……どういうこと?」
「テーブルの上に置かれていた本のタイトルは『シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタムの休日』。それは今までと一緒です。全ページ、意味不明な記号の羅列で埋まっているのも同じ……ただ……」
「もったいぶらないでよ、高山ちゃん」
「はい……本の中にこんな紙片が」
「ん~」

 牧野は紙片を受け取り、渋面でそれを眺めた。そこにはこう書かれている。

 休日の終わりが近い
 君との想い出
 とても美しくて

「なんだこりゃ……」

 牧野は顔を上げ、窓の外を眺めた。夜の闇の中をしとしと雨が降り続けている。静かに、何かが起こりつつある。そんな予感がした。何か、とても不吉な何かが。

(1100文字)

見かけたので即興で書いてみました。前夜祭? よくわかってないけど!

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