世界一わかりにくい算数(小学校1年_データと図形)


0.始めに

以下の続きです。

1.日本のカリキュラム

 日本のカリキュラムは整理すると次のようになります。
(以下のサイトを参考にしています。)

内容を私なりにまとめると以下のようになります。

(B.図形)
形の特徴を知る。(さんかく、しかく、まる)
形を分解したり、重ねたりできる。(四角形→三角形、三角形→四角形)
方向やものの位置を理解する(前後、左右、上下)
(C.測定)
長さ、広さ、かさ等の量を比べられるようにする。
適当な単位(コップ等)を使用して比べられるようにする。
時計を読めるようにする。
(D.データの活用)
動物の絵など分類して、並べ頭数を比較する等

2.米国のカリキュラム

世界大学ランキングで上位を占める大学が多い米国を参考にします。
ソースはカーンアカデミーを参考にしています。

Early math review 段階を参考にしています。

1)測定とデータ
・ 大きさを比較する
・ 定規で測る
・ 時計を読む
・ グラフを読む(ドットプロット、棒グラフ)
・ お金を数える
2)幾何学<図形>
・ 辺、角、面とは
・ 三角形、四角形(ひし形、長方形、正方形)、円はどういうものか
・ ○角形を答える
・ 図形を分割したり、重ねたりする

図形に関しては、正方形をひし形に分類するなど概念的整理を早い段階から意識させていると感じました。
またグラフも最初から比較的実用的なものを見て読み取る訓練をしているように感じました。

3.理解と社会的実践

(1)「測る」ための2つの方法

あるものとあるものを比べて、大きい・小さい・同じくらいということを直接比べるところから「測る」ということが始まります。

〇直接比較について
例えばAさんの持っているヒモとBさんの持っているヒモを比べて、長いか、短いか、同じくらいかを比べるとします。
またAさんのコップに入っている水の量とBさんのコップに入っている水の量を比べるとします。
以下の図を見て何が問題か考えてみてください。


直接比較の注意点

まずヒモについてはどちらかの端を揃える必要があります。
水の量についてはコップのサイズが違うので、同じコップに移して高さを比べる必要があります。
このように測るためには「そろえる」必要があることが分かります。
そろえると以下の図のようになりました。


直接比較の正しい例

ヒモについては端を揃えると、Aさんヒモの方が長いことが分かります。
さらにAさんのヒモは、Bさんのヒモ2本分よりは短いことが分かりました。
水の量については、コップを揃えたので水の高さを見れば多いか少ないかが判断できます。
Aさんのコップの中の水の方が多いことが分かります。

比べるためにはそろえる必要があります。
そしてそろえたら、以下のように表現することもできます。
長さ=Aさんのヒモ何本分
水の量=Aさんのコップ何杯分(ただどれくらいの高さまで水を入れるかはそろえる)

[算数の問題]
(問)ブロックはそれぞれ同じ大きさです。AとBはどっちが高いでしょうか。


長さ比較

(答え)
Aは3個のブロックより高いです。Bは3個のブロックより低いです。
したがって高さの大小関係は A>(3個のブロック)>B となります。
そのため高いのはAとなります。

○ 間接比較と単位の導入
長さを比べるときにAさんのヒモやブロックを用意したり、水の量を測るときはAさんのコップを持ってくるというのは面倒くさいです。
そこで共通のものさしを設定しました。それが単位というものになります。

長さの単位としてcm(センチメートル)というものがあります。目盛りが書いてある定規を使って、0という部分に端を合わせて、目盛りを読むことで長さを測ることができます。
例えば Aさんのヒモを測ると10cmだったとします。Bさんのヒモを測ると8cmだったとします。そうすると直接比較しなくても数字を比較して、Aさんのヒモのほうが長いことが分かります。

[算数の問題]
(問)目盛りは1つが1cmです。黄色のヒモの長さを答えてください。


定規とヒモ

(答え)
まず気づいてほしいところは0と端があっていないことです。
右端を見ると、8cmですが、2cm左に移動して0に合わせる必要があるので、右端が6cmで、ヒモの長さは6cmとなります。
または(0から左端までの長さ)+(左端から右端のヒモの長さ)=8cmとなるので、2+□=8 となり□=6 と考えて6cmと計算することもできます。

[社会実践問題]
私は化学系メーカーで働いていましたが、その時の経験を元に書いてみました。
新規製品を開発して、工場で小さい単位でまず試作してみることになりました。薬品の量を測っていれる必要があるのですが、その時に使用する器具としてメスシリンダーというものがあります。以下の目盛りを見ながら、薬品を100ml測るとして、あと何ml入れればよいでしょうか。


メスシリンダー

(答え)
私たちの使う目盛りは時々数字が細かく刻まれていないことがあります。
そういったときは刻まれている数字を元に1目盛りがどれくらいの量を表しているかを求める必要があります。
5目盛りで100mlなので、足し算で考える場合は色々値を仮定します。
1目盛り10mlとすると10+10+10+10+10=50 mlで合わないことが分かります。
1目盛り20mlとすると20+20+20+20+20=100 mlで正しいことが分かります。
かけ算で考えると (1目盛りの量)×(5目盛り)=100 ml で1目盛り当たり20mlであることが分かります。

現在2目盛り分が入っているので、20+20=40 ml入っています。これを100 ml にするためには 40+(追加で入れる量)=100 ml で40+□=100 となり、
100-40=60 ml 追加する必要があることが分かります。

(2)時を測る=時計を読む

「5時のチャイムが鳴るので帰ります」
「そろそろ日が暮れるのでピラミッドの建設作業を一旦ストップします」
等昔から私たちの行動と時間は大きな関係があり、時を測ることの必要性があることは体感できると思います。

現在の時を知るために使用しているのが時計です。最近ではデジタル表示も多いので時計を実際に読めるスキルがどこまで必要かは不明です。
ただ圧力計や様々なメーター等、円状の目盛りを読むということは実は色々な場面で存在しています。
そこで円状の目盛りを見る訓練としての時計を読むというスキルと捉えることもできると思います。

ただ子供に教える場合は、これは難しいものだから分からなくてもいずれ分かるでしょう位のおおらかな気持ちが必要だと思います。
時計には「時針」(長針)、「分針」(短針)、「秒針」(細長い針)という3つの針があります。
例えば現在、 3時15分20秒だとすると、秒針は20秒を指します。ですが分針は15分ちょうどではなく、20秒分ずれます。
さらに時針は3時から15分ずれ、20秒分若干ですがずれていることになります。
この「ズレ」、「3つの針を読む必要がある」、「3つの針が同じ時計に存在している」ということが時計を読むことを難しくしていると感じています。

時計から時間を読み取るときは、「ズレ」を引いて時間を特定する必要があります。時間から時計を再現するときは「ズレ」を追加して再現する必要性があります。

私は時計を読むのが苦手だったのですが、「秒針」⇒「分針」⇒「時針」の順で考えるとそこまで速くはないですが、ミスなく読めるようになりました。
慣れも必要だと思いますが、もし苦戦する人がいれば参考にしてみてください。

(3)データを集め、情報や知識を得る

人間は、観察したり、測定したりして集めた事実や数値(データ)について考えることで多くの情報や知識を得てきました。
この活動はこれからも行われていくでしょう。
そしてそのやり方を算数を通して学び始めることになります。
まずは身近な例を通してそのやり方を見ていきたいと思います。

○ クラスの代表を選ぶことになりました。立候補したのはA,B,Cの3名です。知りたい情報は「皆が一番代表になってほしいと思っている人はだれか」ということです。
A,B,Cに投票してもらうことで、投票数という数値を測定することができます。
この数値は「代表になってほしいと思っている人」の数を表すことになるので、この数値が最も大きい人を調べることで「皆が一番代表になってほしいと思っている人はだれか」という情報を得ることができます。

数値を得るだけでも知りたい情報を得ることはできますが、候補者が多くて数値が近いとどの人が一番数値が高いか分かりづらいことがあります。
そこで数値を長さにすることで直観的に分かりやすくすることができます。そのように分かりやすくしたものをグラフといいます。
いくつか例を示しますが、以下の2つのことは意識してほしいと思います。

① グラフには優劣のようなものはなく、見やすさやデータの集め方等から良いと思うものを選択すればよいです。
➁ 色んなグラフがありますが、グラフから数値に戻せるように意識してください。

以下にグラフの例を示します。

○ ドットプロット
クラスの皆がマグネットを一つづつ良いと思った人に置いていくと以下のようになりました。
縦にした場合と横にした場合について表示しています。
いづれもマグネットの長さから、Bが最も投票数が多いことが分かります。
(数値に直すとA:3票、B:8票、C:5票)


ドットプロット

○ 正の字グラフ?(日本特有のものですが、比較的便利です。正式名称不明のため?が付いています。)
1人づつ確認していくようなケースで、マグネットが面倒なときに便利です。また「正」が5を表すので、数字に直すときも便利です。
A:3票、B:8票、C:5票で、Bが最も投票数が多いことが分かります。


正の字グラフ

○ 棒グラフ
集めた数値を長さに変換して表示します。上の2つよりも使用されている頻度で言えば多いと思います。
今回のケースだと上二つのやり方は、データを集めつつグラフにできているので便利とも考えられますし、クラスが100人だったら、棒グラフにした方が見やすいかもしれません。
縦表示、横表示の場合いずれも棒の長さからBが最も投票数が多いことが分かります。
(数値に直すとA:3票、B:8票、C:5票)


棒グラフ

ここまではグラフを例示してきましたが、単に数値として知りたい場合もあります。
その場合は以下のように「表」で表します。


[算数の問題]
以下の棒グラフはA,B,C,Dの投票結果です。
(1)表の中で空白の数値(BとDの投票数)を埋めてください。
(2)1位と2位の人が誰だったか答え、何票差だったか回答してください。


グラフの読み取り

(答え)
(1) Bは12人、Dは8人であることが読み取れると思います。
(2) 一番棒が長いのはBで、2番目はDです。
得票差=(1位の得票数)-(2位の得票数) となるので 12-8=4
4票差であることが分かります。

[社会実践問題]
データを集めるということはかなり大変な作業です。それ以外にもデータはあるけどどれを使えばよいかという問題もあります。

あなたはA社で働いていて、社内製品の販売の計画のために「都道府県ごとの人口」を調べて、グラフにしてくれと言われました。
そして上司に以下のデータを渡されたとき、そのあとあなたはどのように行動しますか。

(答え)
色々な正解があると思いますが、不正解なのはこのままデータをコピーしてグラフを作成することです。
都道府県別の人口のグラフを作成したいのにも関わらず、世界の都市の人口のデータをもらったからです。
データと目的のズレというのは、気を付けないと無駄な時間を過ごすことになります。上司だから正しいと考えるのではなく、自分の頭を使う必要があると思います。
いくつか対応案を示しますが、自分なりの回答を見つけてください。
(1) 上司に確認して、データを変更してもらう。
(2)自分なりに作業が楽そうなデータを探して、提案する。

[社会実践問題]
データを分かりやすくすることは、人間のデータに対する直観を働かせることができるので良い面があります。
しかし良くない面もあります。
以下の2つのグラフから違和感を読み取ってください。

①「アメリカ合衆国の人の密集具合は、日本より高い」


人口

➁「この薬は血圧を半分以下に下げる効果があります」


血圧

(答え)
データ自体が嘘でなくても、採用するデータや見せ方で嘘が付ける例です。見やすいが故に誘導されてしまうわけです。

① 採用するデータが嘘のケースです。
人口の密集具合(混み具合)は人口と面積が必要なはずです。人口のデータだけでは分からないです。
また人口のデータだとして日本(東京)ということで日本全体の人口出ないことが分かります。カッコ書きや小さい注釈が重要なケースもあります。
➁ 見せ方で嘘をつくケースです。
縦軸を見ると121~109です。よって数値に直すと約120から約110になっただけなので半分にはなっていません。

「結論とデータは正しく結びついているか」、「グラフは数値に直すとどうなるか」ということに注意することで誤った方向性に誘導されることを減らせると思います。

(4)図形の名前=共通の認識を作る

私たちの生活の中で、部屋のレイアウトを決めるときにどういった形・大きさのテーブルやソファーを置くかということを考えます。
今後出てくる面積というものは大きさですが、まずは形と言葉をつなぐ必要があります。

○ どこまでも続くまっすぐな線を直線といいます。
形を作るためには曲がる必要があります。曲がり角の点を頂点といい、頂点と頂点をつなぐ線を辺といいます。
さらにこの辺と辺の開き具合を角と呼びます。
頂点の数と辺の数は同じで、それらが何個あるかで何角形と呼んでいます。
代表的なものとして3角形や4角形があります。


[算数の問題]
(問)以下の図形は何角形でしょう。

図形

(答え)
ヒント画像の頂点の数を数えると8個あることが分かります。
したがって8角形が答えとなります。

○ 特殊な四角形
四角形の中でも特徴によってより細かく分けることができます。
①4つの角の大きさが等しい四角形を長方形といいます。
➁4つの辺の長さが等しい四角形をひし形といいます。
➂4つの角の大きさが等しくて、更に4つの辺の長さが等しい四角形を正方形といいます。


特殊な四角形

[算数の問題]
(問)
上の図の①~➂の中でひし形はどれしょうか。
(答え)
何を言っているんだろうと思ったかもしれません。➁がひし形なので➁が答えだと思ったと思います。
ところが➂の正方形も4つの辺が等しいので、これもひし形となります。

この考え方は大人でも難しいので、別の例を使ってみます。
田中さん(人)、モモちゃん(チンパンジー)で考えてみます。
この中で人に当てはまるのはと聞かれた場合、「田中さん」が答えとなります。
この中で動物に当てはまるのはと聞かれた場合、「田中さん」と「モモちゃん」が答えとなります。
動物という広い言葉の中に、「人」と「チンパンジー」が含まれていることが分かると思います。
問題について再度考えると、「ひし形」という言葉の中に「正方形」が含まれているということが言えます。

では①~➂の中で長方形はどれでしょうと言われた場合はどうでしょうか。
①はもちろん、➂も4つの角の大きさが等しいです。
したがって答えは①と➂になります。

図形について考えると図形の問題にばかり注目してしまうですが、図形を通して学べる考え方はもっと広いものだと感じています。
一時期、法律の勉強をしていたことがあります。
その時法律の条文に今解こうとするケースが該当するか考える、要件の当てはめと言われるものを行ったことがあります。
それは法律の内容でしたが、図形の証明問題を解いているときと似ている感覚を覚えました。
上で紹介した「ひし形」と「正方形」の問題からも私が働いているときに活きたと感じた場面があったので、以下に問題にしてみます。

[社会実践問題]
「ひし形」という言葉の中に「正方形」が含まれていると書きましたが、このような関係性を上位概念(ひし形)・下位概念(正方形)と言います。
私は開発をしているときに特許というものを申請していました。この特許とは、書類に書いてある発明を保護して、他の人が同じものを作った時に色々な対策を取れるというものになります。

書類に発明を記載するときに私はなるべく上位概念で書くように気を付けていました。それはどうしてか想像してみてください。

(答え)
例えば自動車のライトを開発していたとします。
それをトヨタ車に付けるために開発していたとして、特許に「トヨタ車につけるライト」と書いたとします。
その場合、他の車に付けていたら何も言えません。
そこで「自動車につけるライト」とより上位概念にしたら、文句が言えるわけです。
これが上位概念で書く理由です。
ただ広く書こうとすると特許として認められない場合もあるので、バランスを取る必要性が実務上は出てくるということになります。

○ 何角形以外にも代表的な図形があります。
1つの点から同じ長さになるように書いた丸を円と言います。
これは一度コンパスと呼ばれる器具を使って書いてみるとどういうものか実感できると思います。


またサイコロのように紙では書きにくい高さをもった図形が存在します。
以下のような図形のことで周りを囲んでいる図形(この例の場合は正方形)のことを面といいます。


立体の図形

[算数の問題]
(問)
上の図形の面はいくつありますか。
(答え)
サイコロを見てみると面一つにそれぞれ数がふってあって、1-6までの数があります。
したがって面は6つあります。

(5)図形の中に図形を見つける、図形と図形から図形を作る

○ 図形の中に図形を見つける
例えば○角形は以下のように3角形に分けることができます。

図形を分ける

4角形を3角形に分割する考えは、建築では筋交いというもので使われています。4角形と比べ、3角形は外部からの力に強いため、4角形を3角形2個に分ける板等を使って、建物の構造を強くしています。
他にも色々な分け方がありますが、まずはこの○角形は3角形に分けることができるということが大切かなと思います。

○ 図形と図形から図形を作る。
分けるの逆で図形と図形を合わせて何を作れるか考えると、3角形から4角形や5角形が作れることは上の例からも分かると思います。
それ以外にも今回紹介した図形の組み合わせで考えると、正方形と正方形を合わせて長方形を作ることができます。

図形の組み合わせ

図形に関しては図形の知識そのものが家のレイアウト、建築、測量、ゲーム等に活用されるということ以外にも、論理的思考を鍛えるという側面があります。
この論理的思考は理系科目に限定されるものではなく、文系科目(特に法律等)でも活きてくる力です
日本の算数や数学では図形=ひらめきになりすぎていているように感じます。
満点を取られないようにするうえで、ひらめきが必要な問題や文章を無駄に長くする問題は便利です。
これらを多用し数学を嫌いにしすぎて、子供達に知ってほしいメッセージにたどりつく前に脱落することがないようにしてほしいと私は思っています。





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