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『文化の力 カルチュラル・マーケティングの方法』

【マーケティング定番書籍】その18

『文化の力 カルチュラル・マーケティングの方法』

 著著:青木貞茂
 出版社:NTT出版
 第1刷:2008年5月21日

文化の力1

文化の力2


1. 本書を読んだ背景

よく覚えていませんが、最初に読んだのは2011年だったかと思います。
当時、マーケティングコンサルティング会社の社員だった私は、まだ「文化マーケティング」を標榜していませんでした。
それでも本書の存在が、今の私を基礎づけたことは言うまでもありません。
今回、noteで取り上げるきっかけは偶然です。
クローゼットの中を何気に整理していたところ、古いノートが出てきて、内容は本書を読んで記したメモ(2011年)だったわけです。
そこで8月にまた読み直した次第です。

文化の力_ノート

2. どんな人に向いているのか?

山口周の2017年のヒット作『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』あたりを読んで共感できる人でしょうか。
というのは、青木貞茂と山口周で訴求ポイントは異なるものの、山口周よりもずっと前から、山口周が言いたいことを言ってきたのが本書であり、著者の青木貞茂なのです。

3. 本書のポイントと感想

一言だけ重要なことを書きます。
それは、「文化」とは「深層」のこと
私の仕事上でのルーツの一冊ですので、この場ではくどくどとは書きません。
 
ただ、10年前に初めて読んだときよりも、今現在、琴線に触れた箇所のみここに書きます。
 
1991年のバブル経済崩壊と、デフレの進行、格差社会化という“失われたウン十年”を脱するためには何が必要か?
以前、ご紹介した『100年の価値をデザインする』にも、そのヒントどころか具体策が書かれていました。
この『文化の力』にも、『100年の価値をデザインする』と関連性のある知見が書かれています。
ぶっちゃけ、こういうことです。
戦後日本の驚異的な復興と高度経済成長、その根源は太平洋戦争前の軍国主義と戦後の米国文化が原動力だったんです。
戦前と戦後は「逆」とのイメージがあるかもしれませんが、実は連続していたわけ、というのは何十年も前からの私の持論でもありました。
同じことが本書でも書かれてます。
では、それよりも「前」はどうだったのか?
明治維新(正確には「ご一新」)から大正デモクラシーあたりですかね?
それは欧州(ヨーロッパ)との親和性です。
週3日労働だった江戸の町民生活もそうですが、江戸時代からの日本の社会・文化は欧州ととても親和性が高かった。
芸術方面では、日本の影響を欧州の著名芸術家も数多い。
少しだけ考えてみても、日本文化との親和性が高いのは(ラグジュアリーブランドを創れずマス製品中心の)米国ではなく、欧州なんです。
 
文化(=深層)視点で明治から大正・昭和の日本を見ていきましょう。
表層と深層で見事に「本音」「建て前」を使い分けてるんですね。
日本の精神分析家の岸田秀に言わせると、「日本人は精神分裂症」とネガティブな評価。
学生時代から岸田氏の影響を強く受けていた私でしたが、本書を読んでネガで視るだけではないことに気づきました。
ただ、奥山氏の『100年の価値をデザインする』を読んだ私はこう考えます。
明治以降の「日本らしさ」は"捏造"された伝統であり、日本らしさは江戸時代からの連続性という文脈で捉えることがよろしい。
すると「文化という地下水脈」が美しく視えるのです。
(余談ですが「維新」とは、昭和になって現れた皇道派などテロリストの軍国主義者たちの使った用語で、明治時代には「ご一新」と呼ばれており、決して「維新」なんかじゃありませんからね・・)
 
となると、皆、嘆くだけ嘆くだけで生産性ゼロの愚痴“失われたウン十年”から脱するという課題解決策は簡単なんですけどね(笑
まずは、「常識」となった日本の「歴史」を見直すことから始めましょう!
 
以上です。

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水琴窟


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