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【ネタバレ】RAB(リアルアキバボーイズ)ネス主演『SIN[シン]』を見て・前編/1人で舞台を埋める才能と埋めさせる緻密な仕掛けについて【観劇初心者様向け🔰】

「広く、深く、オタク」と銘打っている以上、改めてことわるのも無粋だろうと開き直っているのですが、最近新しい男(推しな。)がいます。

それで、その男が一人舞台をすると言うので。最近芝居を見たんですよ。久しぶりに。

▶︎2021年11月5日(金)~7日(日)ネス単独公演開催決定!

フライヤーには「表現者ネスの新たな世界」と銘打ってありました。
実際、このネスさんと言う人はダンサーで(細かい説明は割愛。ググってください)、いわゆる“俳優“ではなかったんですが。公演が発表になった段階で、本人曰く少々芝居じみたことをやると言うので興味を持ちました。
(なんで推すようになったかも割愛。一言でいうと美人だからです。悪いか。)

本格的な演劇畑の方をスタッフに招き、懐かしい東京・中野の有名な小屋で興行すると言うので、これは現地にいきたいなと……。

それで、行って正解でした。

演者、作家さん、観客の皆さんを眺めていて「なんという理想的なパワーの拮抗だろう」と思ったもので。大変楽しかったです。
シンプルな会話劇でありながら読み応えがあり、なおかつ、何より演者が「俳優🔰」の枠を超えて熱演していました。 #ネスワンマン #SINネタバレ といったタグをたどれば、ひょっとすると小劇場や会話劇を観劇するのは初心者かもしれないと思うが、だからこそ柔軟でみずみずしい感性の感想に溢れていました。

そもそもそのベースには、当作が、初めての役者と初めての観客がそれぞれ芝居に出会う作品として最適な戯曲だったということがあると思いました。
それで、本来は見てすぐに感想を残すのは便所みたいでイヤなんですけど、今回のは見た方、特に🔰の方の記憶が新鮮なうちに絶対に書いておきたいなと思って。円盤にも映像にも残らないっぽいし。

で、アーカイブ公開期間が昨日(2021年11月14日)いっぱいだったので、間に合わせるか悩んだんですが、丁寧に読み解いていくなら、もう関係者以外誰も観られない状態の方が作品を汚さなくていいなと思って、今公開している形になります。今、まとめサイトでネタバレ読みあさってから作品を観始める人もいるとか聞くので。自分が熱心に通っている界隈でも、作品が発表になると題材となる人物や原作のWikipediaに人が殺到して、それに沿ってると「よくできている」「優秀だ」みたいな評価になったりする光景をよくみます。

この作品と、何より彼のファンをそういう層にしたくないんで……

今回の『SIN』、演者の向上心・作り手の細やかな構築・そして観客の熱意によって、じっくり読み解くのに向いた上質な劇。これをもとに、方々でえらそうなことを言っている私が日頃どんなふうに芝居を読み解いているか、要素を明らかにできるのではないかと思った次第です。その辺りをつらつらと。
今回、言語ベースで進行される演劇を初めてご覧になって、「情報処理が追いつかなかったな💦」と感じた方にとって、今後参考になるといいなと思ってます。

ネス単独公演『SIN』ざっくりあらすじ

あらすじは公演詳細↓フライヤー裏面にある通り、架空の裁判制度がテーマとなっていました。

もはや司法の手に負えない犯罪増加に伴って、工数軽減のため囚人が他の囚人の罪を追体験して裁く。その「裁判」の様子を、私たちが傍聴人として追体験するという設定で、場内アナウンスもすべて「公演=裁判」「観客=傍聴人」と徹底されていました。また、究極のネタバレなんですが、休憩を挟んだ2幕は2人の被害者女A・男Bの記憶どちらを追体験するか、傍聴人の多数決によって決められるというイベントも企画されていました。

こういった世界観に没入させる仕掛けのベースになる「裁判の罪状(物語の要旨)」は【殺人】。「被告の記憶を追体験する」のだから、倒叙ものミステリと言っていいのかな。
ネスさんは陪審員1人+被告と被害者を含む3人の主要人物、サイドストーリーA・Bに出てくる関係者2名を演じました。1人なので、それぞれの会話に加えて、小説で言う地の文にあたる情景や心理描写もすべて読むことになります。

いや〜〜〜よく頑張った! ホント、才能ある。突然のモンペ。

マジで演技続けてほしいなぁ。

1つまじめに根拠を述べると、一人芝居の説得力って最終的には本人の“華“次第だなと私は思っていて。専門的なダメ出しもしっかりしてもらっただろうし、もしかしたら厳しい批評も耳に届いてるかもしれないからあえて大声で言うが、一人芝居で作品を成立させるのはまず普通の🔰には無理なので。

もうね、これ、私みたいなモブキャラは何回か人生リセマラしないと得られないものなんですよ。それをもっているだけで、板の上に立つ価値はめっちゃあると私は思います。
その割に、こういう立場の人のこういうチャレンジって「盲信的なファンが見るから成り立ってる」「花畑乙」みたいなことは往々にして言われるし、本人は愚かファンが傷つくことがあったりするんですが。

1人で舞台を埋められる“華“は才能です。他人の頭に花咲かせられるのも才能。出てきただけで視線を集められるのは努力で手に入らない才能です。
なので、ファンの方はどうか傷付かず。花畑の方が人の揚げ足とるしか能のない肥溜めよりマシだわ、と心で吐き捨て水に流しましょう。元ジャニオタはかく語りき。

この作品『SIN』 何が絶妙だったか

ただ、これ、本人の努力はもちろんのこと、結局地の文と台詞のバランス、設定のシンプルさが利いてるんだろうなぁと思いました。凝ってややこしい話になってきちゃうと、こちらも頭を今の3倍回転させなきゃいけないし、それを分からせる力量はまだ彼にはないのは明白なので。

私は個人的に、この脚本・演出を手掛けられた加東岳史さんのnoteのこの一節が痺れたんですけど(引用失礼致します)

正直、体裁としてはファンイベントなのかもしれません。でも僕がそこにジョインしているなら、作品として面白いもの、演劇の面白さを伝えられるものにしないと意味がありません。結構悩みました…(加東さまnoteより引用)

まず、「体裁としてファンイベント」っていうの、ある意味の“覚悟“をもって推しを支えてくれるクリエイターの存在に、我々オタクは感謝しなければならない。良いですか。合掌しなさい。
と、いうのと、私は常々自分の連載でも「宝塚(エンタメ)は文学の入門である!そっから先に首突っ込むと楽しいですよ!」ということを体験し布教してる身としても、頷きすぎて肩こり取れた。ネスくんにダンスやDJを通して出会ったファンが、加東さんや演補の橘さんの芝居を観に行ったり、そっから先の芝居の世界に漕ぎ出したりしていくことを考えると、最初は「楽しく泳ぎ切れる」方が絶対にいいと思ってて。

ただ、「楽しく泳ぎ切る」のは「簡単に向こう岸に着いちゃう」のとは絶対別なんですよ。

これ、簡単に“向こう“に着くように作っちゃって99%が「わかる」「共感する」にたどり着いちゃえば

「ネスくん相変わらず顔良かった〜(真理)」「今日も脚4kmだった(写実)」

で、満足して帰るわけじゃないですか。

それって、結局文学の扉の遥か前で門前払いしてることになるんですよね。逆に失礼だなと。

で、映画にしても演劇にしても、こういう門前払い系の作品は最近どんどん増えてると感じます。ある贔屓の作家によると「140字の短文をを繰り返し読みなれいくうちに、“刺激“がほしくなるまで、つまり飽きるまでの時間が年々短くなっている(ニュアンス)」という指摘もあったりします。そうすると、「簡単に着ける向こう岸」を連発した方が満足して帰ってもらえることになるので。感動や衝撃より、失敗・炎上しないことが求められる国民総発信時代、どんどんゴールは短くなるし、ビート板(他人の考察やWikipedia)が必須アイテムになっていくわけです。

そんな中、今回、いろんな感想を拝読して、ここが好きだった、これはどういうことだろう? ここは分からなかった、このオチは不快だった……その感想の多くが、なかなかつかない向こう岸を手探りで探し、時には作者の加東さんに質問などしながら泳いでいるようすは刺激的な光景でした。

なんかね、ゼミ時代を思い出しました。私の母校のゼミの先生はHydeさんとSuicaペンギン、ミッフィーちゃんをこよなく愛する変た…いえ天才で、めちゃくちゃクレバーな人なのに、私たちのお粗末な仮説を否定しないんですね。今考えると私たちの3億倍頭が回転するから、パッと「違うな」と思ったりはするんでしょうけど、結論じゃなくて論理の不備を指摘してくれる人でした。(でした?w 生きてます。めちゃ元気に雪組❄️と華優希ちゃんの現場通ってる)

先述のnote記事のように、加東さんの自分のオピニオンを発信した上で、1人ひとりの読解に付き合う姿勢には感服いたします。こまめにリプ返されてるのも頭が下がる。
で、結構「好きに読んでくださいw」で済ますとこ、好きですww

で……、ちょっと長くなりすぎちゃったんで、前後編に分けます。

次は、さっきのうちのゼミの先生じゃないですけど、「パッと『違うな』にたどり着く」観劇脳の話ができたらなと。
基本は作者の加東さんおっしゃるように「好きに読んでください」で正解だし、作者が「違います、こうです」とおっしゃる場合がありますが、この辺が自分なりに道筋を整理できるようになると観劇は楽しいので。

ここが言葉で説明できるようになると、解釈違いの人と話すことが楽しくなります。拒否らなくて済むようになるんですよ。(相手が聞く耳を持てばの話ですが。)

先述のゼミの先生とは、基本的に感性が合わないwwwので、基本はたから見ると喧嘩してるみたいに見えるかもしれないんですが、私としては大学時代に先生にこの当たりの論理的思考…というと少々烏滸がましいですね、思考の順序を叩き込んでもらったので諦めないで済んでいるなとも思っていて。

・・・・・・と、まあ、久しぶりに更新したと思ったら全く「7つの沼」とも無関係な話でどーもすいませんでした

次回も近いうちに。

ご静聴ありがとうございました。

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