【Mr.Bike復刻】みやもと春九堂通信 vol.13

【問題】
 私の家には、今3つの箱があります。どの箱もしっかり梱包されていて、外から中を見ることは出来ません。

 それぞれの箱に『肉』・『魚』・『肉と魚』と書かれたラベルが貼られていますが、どのラベルも貼る箱を間違ってしまったようです。つまり箱に貼られたラベルと中身は一致していません。

 この3つの箱の中身とラベルを、以下の条件を守って正しく直さなければなりません。

【1】3箱のうち1箱にだけ、一回手を入れて中身を「一つだけ」取り出す事ができる。
【2】取り出した中身だけは見ることができる。
【3】どの箱も中を覗くことはできない。

 さて、どのようにすれば、箱のラベルを正しく直す事ができるでしょうか——?

 俗にいう論理クイズ・頭の体操というヤツである。現実にはこんな状況になり得るわけもないが、この状況を頭の中で整理して、方程式の様に正解を求めるというものだ。

 こんなクイズをネットの友人から出題されたぼくは、しばらく頭を捻った後に答えを導き出し、正解を得ることが出来た。そしてその後「こんな状況あるわけねーだろーがー!」と何故かトチ狂い出して、次々と意味不明の解答を書き出しては、出題者を困惑させることに成功した。

「しばらく悩んでもわからないので、困った挙げ句に箱をもう一つ用意して『くま』と書いたラベルを貼り、その中に入って誰かがラベルを直してくれるのを待つ」

 だの

「しばらく箱の中で待っても誰も直してくれそうもないので、『校長』とラベルを貼った箱を用意して、校長先生が入ってくれるのをドキドキしながら待つ」

 だの、最早クイズでもなんでもなく、ボケたもん勝ちといった風情だ。しかもシュール系のボケである。

 そんなやりとりを繰り返した後、こりゃあ面白いと思ったぼくは、自分のサイトで読者に向けて同じクイズを出してみることにした。そして、まともな解答に加えて、ぼくのボケ回答の一つである「校長先生を箱に入れる方法」も、ついでに募集してみたのだ。

 ネットの面白さは、こうした思い立ったら即実行という速効性と、読者からすぐに反応が得られるという双方向性にもある。一万人前後の人間が読んでくれているので、こうした募集には、それだけ多種多様の意見が返ってくるのだ。それがまた面白い。

 結果、その晩の内に数百通の回答メールが、ぼくの元に届いた。正解不正解を含めて論理クイズの回答を書いたものが大半ではあったが、ボケ回答に対するリアクションを一生懸命に考えたメールも決して少なくはなかった。

「校長室を箱に見立てれば入っていることになる」「辞令を箱の中に入れておく」などの微妙に論理的なものから、「そこいらで校長を一人二人とっつかまえて鈍器で昏倒させて箱に放り込んで空気も漏らさないように密閉します(そして校長窒息)」という若干バイオレンス感漂うものまで、実に多用な意見が寄せられた。

 これはこれで実に面白い、と満足していたのだが、基本的には想定の範囲内の回答ばかりではあった。だが、多くの意見があれば、中には予想のはるか斜め上を行く回答が寄せられることもある。

「おじいちゃんに頼んで入ってもらう。(うちのおじいちゃんは校長先生なんです)」

——まさに予想のはるか斜め上をブッチギリで飛び越えた回答だ。さらに、この読者は後日またメールを送ってくれたのだが、そこには「おじいちゃんに事情を話してみたところ、『それで生徒が喜んでくれるなら入るかもねえ』とのことでした」とあった。

 もう大爆笑である。思わず「おいおい本当に聞いたのかよ!」と声に出してツッコミをいれてしまったほどだ。

 ネットは「誰が見ているかわからない」という事は、重々承知しているが、こんなバカな大喜利モドキに、ここまで素敵なリアクションをとってくれる祖父さんとお孫さんの存在までは、全く予想していなかった。

 こんなことがあるからネットは楽しいのだ。ぼくが7年以上、顔の見えない人達に向かって文章を書き続けている最大の理由は、ここにある。

 ところで皆さん。3つの箱の方は正解わかりましたか?

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