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ミネルヴァ映画会 2024年4月26日金曜日開催 解説④





対峙


鑑賞した日:2024年3月2日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(500円)

監督:フラン・クランツ
主演:リード・バーニー、アン・ダウド、ジェイソン・アイザックス
公開年・国:2023年(アメリカ)
リンク:
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0C9PNVKGT/ref=atv_dp_share_cu_r

▼140文字ブリーフィング:

この映画は凄かったです。
「今年のベスト10入り」がすでに決定しています。
銃乱射事件の犯人の少年(事件で自殺)の両親と、
その被害者の両親が聖公会の教会の一室で話すという映画。
場面の転調は一度もありませんが、
これほど引き込まれる映画はありません。

今まで見た「キリスト教映画」のなかで、
最高傑作だと思います。
造り手がこれを「キリスト教映画」と捉えているかどうかすら、
定かではないほどにさりげないのですが、
キリスト教の最大の魅力が詰まった映画です。
とにかくこの映画には圧倒されます。

二組の夫婦が現代の「赤と青のアメリカ」の縮図になっていて、
その二組が最後にどうなるのか。
そこに救済があり、
その場面をイエスは静かに見ている。
スコセッシの『沈黙』を思い出しました。
(326文字)




PERFECT DAYS


鑑賞した日:2024年3月1日
鑑賞した方法:吉祥寺オデオンで鑑賞(1日サービスデイ1200円)

監督:ヴィム・ヴェンダース
主演:役所広司
公開年・国:2023年(日本)
リンク:https://www.perfectdays-movie.jp/

▼140文字ブリーフィング:

映画館で観ました。
前回のミネルヴァ映画会の参加者の方が、
この映画を3回映画館で観た、
って言ってて、「これは見ねば」と。

その前から興味はあって、
観に行こっかなーどうしよっかなー、
ぐらいだったのですが、
映画会での会話をきっかけに、
「やはり見ねば」と。

ちなみに『PERFECT DAYS』の感想というか、
見たことで考えたことを、
有料マガジンの記事にしました。
都度課金でも読めますので興味ある方は是非。

▼有料記事:『世界は複数ある』199円

ひと言で言うとこの映画は、
「金のかかったルーティーン動画」みたいな感じです。
トイレ清掃を生業にし、
古いアパートの一室に住み、
毎日同じ時間に起き、同じ時間にトイレを掃除し、
同じ時間に同じ銭湯に行き、同じ店でハイボールを飲み、
同じ部屋で同じ文庫本を読んで同じように寝る、
という平山という男の日々を、
ひたすら映し出す、というそれだけの映画です。

それだけの映画なのだけど、
「パーフェクト」なんですよね。
私はこの映画は「人生賛歌」だと思います。
ちょっと『この世界の片隅に』を思い出しました。
どんな人にも小さな幸せというのはあり、
それを奪う権利は誰にもないし、
どんなものも、それを奪う力はないんだ、
という強靱さを感じます。
円安にもインフレにも戦争にも不況にも、
「足元にある小さな幸せ」だけは、
奪うことができない。
そして文学も。
(590文字)




雪山の絆


鑑賞した日:2024年3月10日
鑑賞した方法:Netflix

監督:J・A・バヨナ
主演:エンゾ・ボルリンシップ他
公開年・国:2023年(スペイン)
リンク:https://www.netflix.com/title/81268316

▼140文字ブリーフィング:

今年のアカデミー賞で何らかの賞を受賞した映画です。
1972年にチリのラグビーチームを乗せたチャーター便が、
アンデス山脈に墜落します。
45名の搭乗者のうち16名が生存します。

実際にあった飛行機事故で、
雪山で救助を待ちながら、
極限状態で「人肉を食べて生き延びた」という側面がクローズアップされ、
以前にも映画化されたことがあるらしい。
かなり長い映画なのですが、
前半の「絶望パート」がめちゃくちゃ長いので、
ラスト20分(救助と安堵)のカタルシスが凄いです。
面白いかどうかは別にしても、
凄い映画であることは否定できません。
(253文字)



▼▼▼月刊陣内アカデミー賞▼▼▼


紹介すべき映画は先週のメルマガですべて紹介しました。
ですので「月刊陣内アカデミー賞」をやります。
以前も時々やってたやつ。
毎回やるかどうか分からないけれど、
とりあえず今回は、
「尺」が余ったので、
やっていきます。
世界一小さな映画賞、
月刊陣内アカデミー賞。


●作品賞 『怪物』

▼コメント:
昨年観た映画の「ベスト1」ですから、
そうなりますよね。
『対峙』もまったく別な角度から同じぐらい面白かったですが、
やはり『怪物』は名作です。
マジでこれは見た方が良い。


●主演女優賞 杉咲花(『市子』)


▼コメント:
『市子』という映画は掘り出し物です。
これがアマプラで無料で見られるなんてなんて幸せな時代なんだ。
私は本作の「無国籍」問題を後で調べて驚愕しましたが、
いろんなことはさておいたとしても、
本作における杉咲花の演技は、
ちょっと近年まれに見る凄い演技でした。
松岡茉優の『勝手にふるえてろ』の演技も凄かったし、
『百円の恋』の安藤サクラも凄かったけど、
邦画の女優さんの演技を一個、アップデートしたな、
という領域でした。


●クイア映画賞 『そばかす』


▼コメント:

ゲイやレズビアンの言説も、
「人はすべからく誰かに性的に惹かれる」ということを、
無前提に受け入れているという意味で、
「アセクシュアル」の方にとっては抑圧となり得る、
という意味のことを、NHK『こころの時代』のなかで、
ゲイの牧師・平良愛香先生が仰っていました。

「アセクシュアル」という方々が、
レズビアン/ゲイ/バイセクシュアル/トランスジェンダーとはまた違う、
独特の生きづらさを抱えていることを、
難しい説明抜きに一発で分からせてくれる名作です。
三浦透子さんの演技も素晴らしくて、
めちゃくちゃ説得力があります。
この映画もマジでオススメです。


●最高キリスト教映画賞 『対峙』


▼コメント:

実は受けた衝撃で言うと、
今回紹介した中で『対峙』が一番でした。
テーマはめちゃくちゃ重いのだけど、
「あぁ、キリスト教が与える希望ってやっぱこれだよな」
と思った。
キリスト教徒じゃない人にキリスト教を伝えようとする、
「プロパガンダ的キリスト教映画」が私は苦手です。
他宗教に対するリスペクトを欠くものとかは、
むしろ嫌いと言って良い。
もし私が「最高のキリスト教紹介映画は?」と聞かれたら、
スコセッシの『沈黙』か、
もしくは本作を勧めたいと思います。
キリスト教の根本って「愛」と「赦し」なんですよね。
それしかない。


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 STORESでの販売も現在検討中で、
 またはメールでの直接連絡による販売も対応できますので、
 参加したいけど決済などの理由で参加できない、
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