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や 「野球」


大人になって野球を見なくなってしまった。中高生の頃は熱心に見ていた。岡山県倉敷市というのは岡山のなかでも広島県に近いため、広島ファンもけっこういた。父親が水島コンビナートで働いていて多分マツダ自動車との付き合いもあったためか、広島東洋カープの試合のタダ券が、福利厚生みたいな感じで出回ることがあり、父と一緒に市民球場に観に行ったこともある。だから僕は広島カープが好きだった。大野豊や前田智徳や小早川毅彦の活躍に僕は興奮した。広島東洋カープの「弱小感」というか、アンダードッグな感じがめちゃくちゃかっこよいと思っていた。野武士のようだ。「カープ女子」とかいわれるようになった昨今、その男臭さというか田舎くささはすっかり漂白されたので、今の広島が好きかどうか、僕には分からない。

因みにその前は愛知県に住んでいたので中日ドラゴンズが好きだった。愛知県民の中日ドラゴンズの愛し方というのは大阪人の阪神タイガースの愛し方と似ているところもありつつ、ちょっと違っている。ひと言でいうと「重い彼女」みたいな感じだ。「愛が深すぎて逆に憎たらしい。でも愛している」みたいな。共依存の感じがあるのだ。自己と中日ドラゴンズが分離できていない。へその緒でつながっている。精神分析が必要なレベルだ。

あと、野球って、実はやるのも昔は好きだった。グローブをもう長いこと触っていないが、グローブにワックスを塗ったり、そのグローブで「パンッ」ってボールを受け止めたときに、その音が塀に反響するときの気持ちよさとか、すごく思い出す。日本の父親の「息子とキャッチボールする」という幻想は僕には実現しそうにないけれど、娘と会話のキャッチボールができればそれは事足りる。もし僕が今も地方に住んでいたら、もしかしたら野球とかソフトボールのサークルをつくって、親父たちで楽しんでいたかもしれない。そんな「if」を時々想像したりする。


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