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国の威信? オレの威信?

札幌が冬季オリンピックの2030年招致を断念した、というニュースを見ました。
そりゃそうだろ、と思いつつ記事を読むと、その理由が、

東京大会を巡る一連の汚職・談合事件などで五輪招致には逆風が吹いており、23年4月の札幌市長選では招致反対派2候補の合計得票率が4割を超えた。

札幌オリンピック、2030年招致断念へ 34年以降へ方針転換 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

だったので驚きました。しかも、

34年大会以降の招致を目指す。

同上

というので、……あきれましたね。4年待てばほとぼりが冷める、ということでしょうか?
それに、東京オリンピックの問題は、汚職・談合事件が本質だったのでしょうか?

また、大阪万博が建設費高騰などで予算を大きくオーバーしそうだとのことで、国が支援するかどうか、という記事も見ました。

箱モノがらみのプロジェクトが予算に収まらず、財政赤字を抱える国家が次々と税金をつぎ込む ── こちらが、東京オリンピックと共通する大問題のように思います。

こんな時に切り札のように言われるのが ──

《国の威信をかけて》

1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博、1972年の札幌冬季オリンピック、《国の威信》かけて1回ずつやったからもういいじゃん、どこかの全体主義国家じゃないんだから、もうそういうことに《国の威信》なんかかけるのやめようよ。
《国の威信》をかけた結果、国の借金をさらに増やしてどうするんだ?

工場建設など、企業のプロジェクトならこうはいきません。自分たちの財布を考えて慎重に進めます。
税金を自分の財布とは考えず、どこかから無限に湧いてくる泉の水を汲んでくるぐらいに考えている人が多いのでしょうか?

ジャニーズに関して、問題を知りながらも目をつむり、事務所からの圧力に従ってきた放送関連企業の責任が指摘されていますが、東京オリンピック誘致に対しても、
『そんな時じゃないだろう』
という声を上げたテレビ局はほとんどなかった。むしろ、あの、
「お・も・て・な・し」
映像を何度も流して、ほとんど『万歳三唱』状態でしたね。

本質は共通しており、マスメディアもビジネスであり、収益にプラスとなる方向に報道も制作も進むのは道理です。

やはり、政治家の言う《国の威信》や太鼓を叩くマスメディアに流されず、
《ひとりひとりが自分のアタマで考える》
ということが重要なのでしょう。

実は、最近の短編「すぐそこにある《成果》」を書いたきっかけは、資材高騰などでパビリオン建設の目処がつかない大阪万博にさらに税金をつぎ込む、という例の記事です。

こうした税金を使う『箱モノ』的プロジェクト企画は、どのようにして始まり、推進され、決定するのでしょうか?

政治家の、
『アレはオレがやった』『自己顕示』と、
実際にそのプロジェクトで利益を挙げる企業 ── 建物部分はゼネコンだったり、イベント部分は広告代理店だったり、ホテルなど観光業界だったり、警備業界だったり、不動産業だったり、関連スポンサーだったり、放映権などを持つマスメディアだったり、そして、もちろん、オリンピックなどの場合は強化費などが入るスポーツ界自体 ──
との結合なのでしょうね。

後者は、企業活動なので仕方がない部分もありますが、《企業》とひと言に言っても、そこには2種類あるような気がします。

①   自動車メーカーや家電メーカーのような《民需》主体で利益を得る企業と、
②   原発関連や大規模土木建設業界のような《官需》主体で利益を得る企業です。

この両者は、かなり価値観が異なるように思います。

中部国際空港は、日本初の民間主導空港で、初代社長に就いたトヨタ自動車出身の平野幸久氏をはじめとする、トヨタ方式の徹底的なコスト削減により、当初の空港建設総事業費7680億円が、20%減の5950億円で完工しました。

こうした『公共箱モノ』は、予算まるごと使うどころか、しばしば途中で予算が足りなくなり、つぎ足すのが常識らしいのですが、これは、『自分の財布』意識で仕事を進める①系企業だから実現できたのでしょう。

一方、②系企業が税金に依存して生き、そこからできるだけ利益を上げようとする体質は、もはやDNAレベルであり、変わらないのでしょうね。

問題は、それを監視する必要がある政治家の、
『アレはオレがやった』『自己顕示』かもしれません。
これも、市会議員の流石さすが太郎氏のように、『オレがやった』的手柄話が票になり、政治家生命が長くなり、かつ、議長に就いたり国政に転じたりする《政治家業繫栄》のためで、こちらもDNAレベルなのでしょう。

これが『自己顕示』にとどまらず、②系企業とかなり一体化してしまう議員さんもいるのでしょうね。

……と書くと、なんだか《諦念》のようになってしまいましたが、やはりひとつ守って欲しいのは、少なくとも、
・当初の予算内で進めるべき。
ということです。もちろん、
・《安全》を犠牲にしてはいけない。
規模を縮小して、『(現在の)身の丈に合った』イベントにすればいい。

《国の威信》なんか気にしなくていいです。
そういう人たちは、実は、国ではなく、
《(やろうと言い出した)オレの威信》を気にしているんじゃないでしょうか。

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