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LIVEバク転後日談

高校時代に友人5人で組んだ下手なバンドが、文化祭で確保したライブの時間枠が余り、ステージ上でバク転と前方宙返りで大きな拍手を集めたM君のエピソードを書きました:

オチに至って筆を置きましたが、ライブ後のM君の所業も忘れられません。
ぺれぴちさんからコメントで、バンド解散について尋ねられたこともあり、少々書き足すことにします。

文化祭後の我々には、『燃え尽きた感』があり、次の練習予定も約束しませんでした。
私自身は『心の旅』でアルペジオの指が動かなかったことを何度も想い出しては絶望的な気持ちになっていました。
(このことは半世紀経った今も『ああ……』と悔やみます)

「おい! ギターが無くなってるぞ!」
リーダーのK君が血相を変えて教室に飛び込んで来たのは1週間ほど経った放課後だったでしょうか。
急ぎ体育館の中2階に駆け上がると、M君のドラム、K君とA君のギター、それに私のベース、と全てが消えていました。
「盗まれたのかな?」
確かに、そこは鍵のかかる部屋でもなんでもなく、夜中に盗もうと思えば簡単だったでしょう。

我々はM君にも伝えようと、彼が所属するバスケットボール部の部室に行きました。ちなみに、私はワンダーフォーゲル部、K君と他のふたりは硬式野球部でした。

汗臭い部室ドアをあけると、部屋の隅にドラムセットが積んでありました。……いや、それだけではなく、ギターやベースも一緒でした。
「こりゃあ、どういうこった!」
K君が顔を強張らせて叫びました。

M君をつかまえて問い詰めると、
「いやあ……コンサートも終わったし、ドラムは売り払おうと思ってさ……ついでにギターやベースも売り払おうと思ったんだけど……バレちまったか……」
と笑いながら言いました。

「バッカ野郎! なんて奴だ!」
喧嘩っ早いK君がM君の胸倉を掴み、この時ばかりはパンチを繰り出す……と心配しましたが、相手のあまりのヘラヘラぶりに『戦意』を失い、手を緩めました。

M君が本当に我々のギターを売り払うつもりだったのかどうかはわかりませんが、この件をきっかけにギターとベースはそれぞれ家に持ち帰ることになり、そして ── 誰も明示的には口に出さなかったけれど ── なんとなくバンドは解散、という流れになりました。

まあ、潮時だったのかもしれません。

**********

前回、M君のことを『個性的な人物で…』と表現しましたが、おそらく世間は彼よりも、バンドリーダーK君を、より個性的と呼ぶでしょう。
彼の家でギターの練習をした時、母親が、
「この子が小さい時から、私は近所や学校に謝り続けで……」
となぜか私に語ったのを想い出します。

このシリーズでもいつか、取り上げる必要がありそうです。

なお、ペンシル型ロケットの打ち上げを計画して、警察に、
「火薬類取締法違反だ」
と言われたのはK君とのエピソードです:

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