音に聞く【晴の会】開幕
芝居の空気。角の芝居、のちに中の芝居と、そう呼ばれた芝居小屋がかつての道頓堀には存在した。どういう芝居小屋だったか。その小屋の空気を吸ったことはない。だから、その味も、においも、正確には分からない。少しばかり芸談を聴いたり、見たりするぐらいで、味わいはなかなか知り得ない。そうして、その空気を知っている人間も、今やほとんどがお隠れあそばした。
十五代目 片岡仁左衛門は、そういう道頓堀の芝居の空気を知る最後の人なのかもしれない。「四年前、六十七年ぶりに『肥後駒下駄』を復活させた