次あるなら優勝してほしいんだから本当に
ザ・セカンドを見た。見終わって、改めて思った。
やっぱり、ぼくは、囲碁将棋の漫才が好きみたいだ。
学校指定の制服屋はほぼ公務員。
大学病院の売店は三軍のパンが飛ぶように売れる。
AV男優は若い頃は憧れるけど、大人になってしんどいのがわかる。
プロ野球選手のダサい私服。
ロベルトバッジョと、ロベルトバッジオ。
満車は、エロワード。ウイスキーのヰ。
書いてるとキリがないけど、
おふたりがおもしろがっていることが好きみたいだ。
ーー
「なんか、すいません…」
どうしようもなく気になって消化できてない感情は、どこへいくんだろう。共感してくれそうな人を見つけてはぶつけてみる。この人なら理解してくれそう、と思って、恐る恐る話をしてみる。なんとか譲歩してもらって、愛想笑いをされて落ち込む。「なんか人を試してるみたいだったな」と帰り道に沈む。
そうやって、分かってもらうことを諦めてしまうことが多い。
「半額セールの洋服を着させられてるマネキンって、どんな気持ちなんでしょうね」
「眼鏡屋さんの前を通るとき、店員さんがみんなメガネをかけてるか確認しちゃいません?」
「立体駐車場で空いてる場所を探してる時って、家族がひとつになってますよね」
「アメリカのBBQって、オヤジにずっと焼かせすぎですよね」
「モグラ叩きって、畑を荒らされた人じゃないと楽しんじゃダメじゃないんですか」
みたいな、取るに足りないことが頭の中にいっぱいある。失敗して、とんでもない空気を作ってきた、数々の宙ぶらりんの思ったことだ。
ーー
突然だが、マグロの解体ショーを見るのが苦手だ。
その理由は、初めて見たマグロの解体ショーのBGMにリトルマーメイドの曲が使われていたからだ。
劇中で人間の世界を夢見るアリエルを、お付きのセバスチャンが説得するために歌った曲。この曲が流れるなか、巨大な包丁で、どんどん解体されていく本マグロ。拍手をする観客。カマの部分を奪い合うジャンケン大会。
ディズニーが大好きだったぼくにはあまりにセンシティブで、皮肉が効いていて、忘れられない光景だった。
という話を、経験してすぐに、家族や友達に話をしたけど「…うん」で終わってしまったことから、心の奥にしまっておいた。
ーー
そこから、10年ぐらい経って、ぼくはそのことをメールに打ち込んだ。
送り先は、囲碁将棋の情熱スリーポイントというラジオ番組だった。
ラジオから聞こえてくる2人の話や、漫才のネタを聞いていると、この人たちならきっと分かってくれそうな気がする。そう思ったのだ。
かなり長文のメールだったけど、ほとんど止まることなく書き切った。まるで、今、目の前で起こったことを書くかのように。たぶん、自分の中で、10年ぐらい同じことについて考え続けていたからなのだと思う。
とはいえ、ラジオ番組に送るメールなので、読まれるかどうかは分からない。前の時みたいに「…うん」としか思ってもらえなかったら、それはそれで届かずに終わってしまうし、仮に読まれたとしても愛想笑いで終わってしまうかもしれない。
だけど、囲碁将棋の2人と、この番組を作ってる人になら届くんじゃないかと思った。これで無理なら、もう人に話すのは諦めようと思っていた。
それから数日後。
「マグロの解体ショーのBGMがリトルマーメイドだった」というメールは採用された。しかも、大笑いしてくれた。お二人の共感してくれた瞬間が嬉しくて、何度も何度も同じところを聴いてしまった。
ーー
昨年、地元の神戸で、囲碁将棋の情熱スリーポイントの公開イベントが行われた。
お二人と一瞬で喋れる機会がほしくって、サインをしてもらう権利のために並んだのだけど、目の前で整理券は0に。遠くから眺めてるだけでイベントは終わった。
チャンスを逃してしまったな…。そう思いながら、家に帰ろうと駅に行くと、遠くからでもわかるぐらい背の高いお二人が立っていた。
急いで駆け寄って、声をかけた。失礼かもと思いながらも、自分のラジオネームまでお伝えする。2人はビックリするぐらい気さくに話をしてくださった。
後日、トークイベントにてしていた話だが、文田さんの体調が激悪だったようで、そのことに気づかず話を続けてしまった自分にとても沈んだ。本当に、ビックリするぐらい2人は気さくに話をしてくださったから。
ーー
で、ザ・セカンズ。
囲碁将棋はギャロップに敗れて、決勝まで勝ち上がることはできなかった。
見ているぼくでも、悔しさが爆発しそうな結果だったのに、すぐに2人はギャロップに挨拶をしていた。
その姿にぼくは「やっぱこの人たちかっこいいな」と、ただただテレビの前で打ちひしがれてしまっていた。
カバンなら置きっぱなしにしてきた高校に。
すごく好きで、何回も聴いてます。
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