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コーチの社会分析 Note【アンラーンⅠ・間違いだらけのキャリア教育を解説するシリーズ⑤】

というわけで、一回目に予告したアンラーンにようやくたどり着きました。
 
前回はピョートルさんの「公務員体質の真逆」というキーワードを具体化していったわけですが、この文化になってすらいる私たち日本人の習慣や考え方。そして、それを乗り越える為の処方箋。それこそが、アンラーンやリスキリングという言葉に象徴されているアクションです。

☆日本の働き方文化は、まさに世紀末状態

下記データは今年7月の日経の記事からの引用ですが、まさにここに日本の今を垣間見ることが出来ます。アメリカの Gallup 社による調査でも日本では「熱意のある社員」は全体のわずか6%にとどまり、調査対象139ヵ国中132位という有様です。さらには大体どの調査でも8割以上の社会人が「転職」を考えたことがありますが、実際の転職率は他の国と同水準です。

日経記事「転職者の7割準備なし」より

つまり、不満やストレスを抱えるが転職はしない。転職をする時も準備をしない。そんな日本のワーキング・スタイルが示されていると言えるでしょう。

その結果、転職をする場合に「同じ業界」を選択することが極めて多いことも日本の特徴と言えそうです。キャリアコンサルやアドヴァイザーの多くは「これまでの経験を活かして」と同じカテゴリーでの転職を奨めますが、同じカテゴリーに転職すると(IT業界などの新興カテゴリー以外では)、ほぼ間違いなく【キャリアダウン】する結果となっていきます。

大手企業のルーキーがその肩書でセカンドクラスへ。そしてその下のクラスへと転職のたびにどんどんとキャリアダウンしていく。ピラミッド型の終身雇用という文化では、途中から入ってきた誰かに席次や昇格の順番を譲り渡すなんてことは社内政治として難しいことが多いのです。

僕自身も30代の頃、ディレクターとして出向していた大手会社である部長さんに声をかけて頂いたことがありました。しかし「係長級に」という部長さんの思惑が明るみになってしまい、出向先の課長、係長さんから嫌がらせが始まりました。「なかったことにしてまずはこの案件を無事に」とお伝えし、プロジェクト終了後は契約を新たにしなかった。そんなこともありました。

というわけで、嫌でも我慢して出世の順番を待ち続けるしかない。日本の会社文化とその環境こそが、上記のような調査結果を起こす必然となっている・と言えそうです。ですので、政策的にはリスキリングではなく、社会人が自ら学べる「環境」の整備やそのための法制化や法の変更等により力点を置き、スピード感のある合意と実行こそが必要だったのでは・と考えるところです。

☆だからこそ"アンラーン"

かくして日本では過去の延長にしか未来がないような生き方になってしまっている人々が大勢います。過去の蓄積によって未来が決まってしまうと勘違いし、無為無策のまま、自らの成長に投資をしません。そんな主体性のない状況下である多数派に対し、企業から与えられるという受け身のリスキリングを対策とする。その結果は主体性を育めない日本の社会体質を変えるという根本的な処方からは遠ざかるだけなことは明らかです。

例えば、企業側。仮に自動車産業をはじめとする製造業の各社が自社の社員に「ITスキル」を学ばせてキャリアアップ転職を推奨する!なんてのは、どう見てもおかしいわけです。けれど、リスキリングという言葉が独り歩きをしてしまうと、社員側からは、リスキリング対応がない会社。適切な技術や技能を教えてくれない会社でブラックだ、会社ガチャで失敗した等と批判する材料になりかねない。こんな対立のループから、この国の経済や社会が良い方向へと進むはずもないのです。
 
実際に転職でキャリアアップできる環境が整っている海外に目を向ければ、リスキリングという言葉は転職のタイミングにセミオートでついてくるという常識、状態なので、さほど重要視されるワードになっていません。MBAもその仕組みの一つと言えるでしょう。学んで成長し、その成長が評価され、キャリアの階段を上がれる。この前提になる土台こそが大事なわけです。

なので、今の日本人達に必要な戦略的処方箋。それこそが「アンラーン(Unlearn)」と言えます

一般的にリスキリングが「企業が社員に新しい学びを提供する」文脈で使われる戦術的な手法であるのに対し、アンラーンでは「過去を捨てる」ことを主眼とし、事前に障害を取り除くという戦略的なポジションを取ります。
 
バリー・オライリーはその著作の前段において、優れた人々の支援をしていく中で改善を妨げている要因に気が付いたとし、
 
新しいことを学ぶ能力ではなく、一度は効果があったものの、今は成功の邪魔になっている考え方ややり方を捨て去ることが出来ない
 
という発見を記しています。未来を獲得するという目的に対して阻害要因になるのであれば、容赦なくその過去の経験や知識、手法を捨て、新しい考え方、行動へと改めていく。

このアンラーンこそが、今の日本社会という現状に対し、最も有効な処方箋となる。それは、ここまでお付き合いいただいた皆さんにも感じられていることではないでしょうか。

というあたりで詳細は次回へまた!



 

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