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原稿の質を決める「取材」に必要なモノ

「編集者が身につけておきたい15のスキル」の記事にて、実用書の編集者に求められるスキルとして、企画力、好奇心力、文章力、語彙力などを、それぞれ大まかにご紹介しました。

今回は、その中で「取材力」についてご紹介します。

では、詳しく見ていきましょう。


本は、取材の良し悪しで大きく変わる!

私が編集する実用書では、著者や監修者に取材して原稿を作成するケースは少なくありません
また、私は文字が中心のビジネス書や健康書、いわゆる文字モノの本を編集するケースもあります。このようなときも、著者に取材して原稿を作るケースがあります。

取材を行い、それをベースにテキスト原稿を書き上げていくという流れです。

私が編集する書籍は150ページ以上ありますから、取材時間は多くなります。

本の内容や取材相手(著者・監修者)によって異なりますが、「2時間×3〜5回」という取材を行うことが一般的です。

取材をして原稿作成を行うため、原稿の質は、取材の良し悪しに影響を受けます。
それも大きくです。

ですから、「取材力」が求められます。

取材力が高い人の原稿の質は高く、そうでない人の原稿の質は低くなってしまうのです。

取材を大きく分けると

 ①事前準備
 ②取材当日

の2段階があります。

これらを上手に行う力が取材力です。

では、それぞれを紹介していきましょう。

①事前準備

当日の取材を成功させるためには、準備が必須です。

臨機応変力がない私とって、この事前準備はとても大切です。準備をしておかないと、内容の薄い取材になってしまうからです。

特に、本は150ページ以上に渡るため、内容の深さが求められます。
その分、十分な準備が必要なのです。

著者・監修者の著書などを読む

まず、著者・監修者の著書を読むこと。
これは基本中の基本であり、一番重要なことでもあります。

じつは、著書に目を通しておくことは、依頼する前に行っています。
著書に共感したからこそ、著者、または監修者に迎えたいと考え、オファーするのです。

そのため、取材前に、ある程度、著書を読んでいます。

ただし、オファーするときの読み方と、取材前の読み方は大きく異なります。

オファー前は、大まかに内容を把握するため、普通に読みます。場合によっては、拾い読みします。

取材の前準備の場合、そうはいきません。
読者にわかりやすく伝えるためには、自分がキチンと理解しておくことが重要です。
それには、熟読することが求められます。

すべての著書をしっかりと読むことが基本ですが、著書を何冊もお持ちの場合は、残念ながら、1冊残らず著作を熟読することはできません。
そのようなときは、企画のテーマに関する著者すべてにプラスして、別のテーマの著書も1、2冊読んでおきます。

著者・監修者のネット記事に目を通しておくことも忘れてはなりません。
まず、公式ホームページをお持ちでしたら、隅から隅まで目を通しておきます。
SNSを発信していらっしゃる方でしたら、それもチェックします。

著者・監修者の署名記事があるようでしたら一読しておきますし、ウィキペディアに著者名・監修者名の項目があるようでしたら、そこもざっと目を通します。

私の場合、SNS以外は、プリントアウトして読み、下線を引いたり、メモを書き込んだりします。

○構成案を作る

事前準備として、構成案(目次案)を作っておくことも必須です。

取材当日は、構成案をベースに質問していくため、構成案が不可欠なのです。

初回の取材では、構成案をかためる作業を行うことが多く、といいますか、初回はそちらのほうがメインになります。
事前に準備した構成案に大きな変更がないケースでは、構成案についての打ち合わせを行った後、残りの時間を使って内容についての取材をスタートさせます。

構成案は、企画を考えた時点で、ある程度の案はできていますが、取材するときの材料としては不十分です。

深掘りし、何歩も進んだ構成案になるまで考え抜きます。
とくに、項目についてはしっかりとピックアップしておきます。

構成案の具体的な作り方については、「構成力」の記事をご覧ください。

上記の準備ができたら、構成案とは別に、当日伺うことを箇条書きにしておきます。

事前準備として、これらのことを行います。

②取材当日

○当日の進め方には2パターンある

取材当日の進め方は、私の場合、2通りあります。

圧倒的に多いのは、先ほど紹介した構成案に沿って取材を行うケース。これが8割くらいでしょうか。

もちろん、途中で話がズレることがありますが、基本的に構成案にあわせて質問していくケースがほとんどです。

2つめのパターンは、構成案を無視するケースです。

著者・監修者が、ロジックより感覚を重視するアイデアマンの場合、そうなることがあります。
このような方には、構成案にとらわれず、お話しをしていただきます。
場合によっては、思い切りテーマからズレますが、あえてその話題を膨らまします。

そうしたほうが、読者のためになる、面白いお話しを伺うことができるからです。


どちらのパターンでも取材が終わった後に構成案を作り直しますが、構成案を無視して取材を進めたケースでは、イチから構成案を作り直します。

○著書等に載っていないお話しを引き出す

私が行う取材は、著者・監修者の著書やインターネットに載っていないお話しを伺うことが目的です。

著書等に書かれているものは、お話しを伺わなくても、原稿にすることができます。
伺いたいのは、事前準備で入手できなかった内容です。

多くは、著書に載っている話をさらに深く掘り下げたり、広げたりする質問をすることで、載っていなかった話を膨らまします。

○自分が興味のあることを質問する

質問をするときのポイントがあります。
自分自身が興味あることを尋ねるです。

実用書には、同じテーマの本がいくつも刊行されています。「同じ著者・監修者の、同じテーマの著書」が出版されているケースも珍しくありません。

そうしますと、違いは編集者やライターさんです。
そのため、私自身が「面白い!」「もっと知りたい!」と思った部分を分厚くするのが大切だと考えています。

当然、自分自身が知りたい部分なので、深みも出やすくなります。

それが差別化となり、「私の知りたい!」に共感できる読者を惹き付けることにもつながるからです。

だからこそ、自分が「知りたい!」と思ったところを、しっかりとお話しを伺うのは大切なのです。

そのときに求められるのが「質問力」です。
どのような流れのときに、どのような言葉で質問するか
この良し悪しによって、読者のためになるお話しを引っ張り出せるかどうかが決まります(質問力については、別の機会に記事にできればと思います)。

これらが、取材当日の進め方です。


事前準備をしっかりと行い、当日の注意点を頭に置きながら質問を進めていけば、いい回答を得られます。
それらによって、質の高い原稿の源が手に入るのです。

いかがでしたでしょうか。
今回は「取材力」についてご紹介しました。
次回は、「キャッチコピー力」についてお伝えする予定です。




文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。

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