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編集者は、集まると面白い。編プロと出版社のいい関係。

こんにちは、高橋ピクトです。
書籍の編集者で、健康書やスポーツ、料理、アウトドアなどの実用書を担当しています。私が担当する書籍は、編集者が二人以上関わることがほとんどです。

実用書は、文章だけでなく、イラストや写真も組み込まれ、デザインやレイアウトが1ページ1ページ複雑なため、一人で編集することが簡単ではないからです。私の場合は“編集プロダクションの編集者=編プロさん”と協力して、本づくりを行います。

編集プロさんの仕事については、編プロのケーハクさんの記事『「編プロ」って知っていますか? 出版社と編プロの編集者の違いとは?』 に詳しく書かれていますが、出版社から委託されて本や雑誌を実際に制作する制作会社のことです。

今回は、編集者の役割分担や、共同作業の面白さをご紹介します。

◆こういう役割分担をします

出版社と編プロの役割分担をあげてみました。図も作ってみました。
あくまで私の場合ですし、編プロさんの仕事のスタイルや経験によって変わることもあります。また、どの作業も協力して行うことが基本なので、完全にどちらかの仕事とは割り切ることはできません。

出版社
企画立案、読者層設定、予算決定、著者とのコミュニケーション、スタッフ依頼・コミュニケーション、コンセプト作成・伝達、イメージ設計、仕様(ページ数・色数)設定、営業とのやり取り コピーライティング カバーデザイン依頼 印刷依頼、用紙設定、校正、見本検品、プロモーション、すべてのトラブル対応、刊行後のもろもろ

編プロ
企画立案、構成案・台割作成、スタッフ依頼・コミュニケーション、スケジュール作成・調整、取材、執筆、撮影準備、撮影当日ディレクション、本文デザイン依頼、レイアウト、初校・再校・念校作成、修正、入稿データ作成、校正

図にすると以下のような感じです。同じくらいの負荷のように見えるかもしれませんが、ひとつひとつの作業にかかる時間は編プロさんのほうが多いので、時間的な負荷は編プロさんのほうが高いです。それに対して、出版社の編集者は工程の種類が多いという感じでしょうか。

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◆チームワークの面白さ

編集者のチームワークは面白いです。
私がとくに面白いと思うのは、著者の考え方を基にして紙面の見せ方を考える工程。上の表でいうと「イメージ設計」や「レイアウト」です。お互いにアイディアを出し合い、エスカレートさせながら、しっかり紙面に落とし込んでいきます。

たとえば、この「疲れないカラダの使い方図鑑」

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これは日常動作の「疲れないカラダの使い方」を解説した本です。立ち方、歩き方はもちろん、洗濯物の干し方から、映画館での疲れない座り方なども解説しています。

まず、私が著者の木野村朱美さん(“アレクサンダーテクニーク”という100年の歴史をもつ「カラダの使い方」の先生)への取材をもとに、本やコンセプトや大枠の本のイメージを表すラフを作ります。

※お見せするようなものではないので恥ずかしいのですが、アイディアが発展していくところを見ていただくには丁度いいのでご紹介します。

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木野村さんが教えるカラダの使い方は、解剖学に基づきつつ、感覚を大事にするのが特徴です。それを写真ではなく、イラストで表したらわかりやすいし、面白いんじゃないか!?というアイディアです。

これが編プロのケーハクさんの構成力と、ユーモアによって、以下のような紙面イメージになります。

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紙面に配置される「無駄力」は木野村さんが日ごろからよく使う言葉です。著者のメッセージを、紙面全体で伝わるように工夫してくれるのがケーハクさんのすごいところです。

最終的にはタイプフェイスの渡邊さんと清水さん、イラストレーターの中村知史さんによってこういう紙面になりました。わかりやすさと面白さが両立する絶妙なページになっていると思います。

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編プロさんとは、常にこういったアイディア合戦をやるわけですが、この本の「取材」→「イメージ設計」→「レイアウト」→「デザイン」の工程はとくに刺激的でした。

あくまで一例ですが、著者の出版社の編集者が企画の大枠を作り、編プロさんが具体化していくという流れをご紹介しました。

この記事のきっかけとなった会話

この前、私と編プロのケーハクさんで、あるお医者さんに取材をしていたのですが、その方に「お二人はどうして、一緒に本をつくっているのですか?」と聞かれました。

私がウーンと考えていると、ケーハクさんは「二人とも、本のクオリティと、本が売れること、その両方にこだわりをもっている。同じ志をもっているから一緒に本を作っているんです」と、迷いなく言ってくれました。

まったくの同感ですし、敏腕編集者にそんなことを言われて嬉しかったです。ただ、私は二人のチームワークが代えがたいから一緒に作っている、と付け加えたいと思います。

異なる個性による共同作業は面白いし、きっと誰かの役に立つと思っています。

編集者は集まると面白い。本づくりをしていて、日々そう思っていました。昨年からシュッパン前夜のメンバーとして活動してきましたが、その気持ちはさらに強くなっています。

#あの会話をきっかけに  #編集プロダクション #編集者


文 高橋ピクト
生活実用書の編集者。『新しい腸の教科書』『コリと痛みの地図帳』などの健康書を中心に担当。『マンガでわかる東大式麻雀入門』『はじめての囲碁入門』『競馬の教科書』『豪快バーベキューレシピ』『新しいキャンプの教科書』など、趣味の入門書を編集することに喜びを感じる。「生活は冒険」がモットーで、楽しく生活することが趣味。ペンネームは街中のピクトグラムが好きなので。

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