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すべての編集者に必須のキャッチコピー力

「編集者が身につけておきたい15のスキル」の記事にて、実用書の編集者に求められるスキルとして、企画力、憑依力、語彙力、取材力などを、それぞれ大まかにご紹介しました。

今回は、その中で「キャッチコピー力」について解説します。

では、詳しく見ていきましょう。

本の売れ行きを大きく左右するタイトルと帯

私は、キャッチコピー力は、すべての編集者に必要な力であると考えています。

それは、タイトルや帯文によって、本の売れ行きが大きく変わるからです。

実際「8割くらい同じ内容である実用書」であったとしても、タイトルと帯文句、そして、それらを訴求する装丁デザインによって、売れ行きが違っています。

タイトルや帯コピーが、ターゲット読者にとって魅力的な場合、10万部を突破する本になります。
その一方で、そうでない場合、初版で終わってしまうケースもあります。
もちろん、10万部の本は、内容のクオリティもバツグンです。

しかし、初版止まりの本も、決して内容の質が低いわけではありません。クオリティが高い内容であっても、売れ行きの伸びない本があるのです。
いや、どちらかといえば、初版で終わってしまう本のほうが圧倒的に多いのが、タイトルや帯が普通であった本の現状でしょう。

文字が中心の自己啓発書やビジネス書の場合、それが顕著で、タイトルや帯によって、10万部どころか30万部、50万部を超える大ヒットになるケースまであります。
5000部の初版の本が初版止まりと50万部だとしたら、100倍の差が出たことになります。

図解の実用書は、テキストが中心の自己啓発書・ビジネス書ほどの差はつきませんが、10倍の差が出る例はたくさんあります

これほど、タイトルや帯文の吸引力が重要なのです。

この「魅力的なタイトルや帯文句を見つけ出す力」がキャッチコピー力です。

だからこそ、実用書の編集者にも、キャッチコピー力が求められるのです。

年々キャッチコピー力が求められるようになった

じつは、私が足を踏み入れた頃の実用書の世界では、それほど編集者にキャッチコピー力を求められていませんでした。

とくに私は、「○○入門」「はじめての○○」「○○の基本」という本を担当することが圧倒的に多く、サブタイトルもキャッチーな言葉をそれほど求められていなかったからです。

そういったタイトルや帯コピーの本でも、多くの読者がご購入、つまり売れていたため、キャッチコピーを考えなくて済んでいました。

最近は、「上記のようなタイトル」+「キャッチーではない、普通のコピー文」が組み合わされている本は減っています。
読者を惹き付ける言葉がないと、本を買っていただけないからです。
それでも、「○○入門」「はじめての○○」「○○の基本」というタイトルは、いまだに多いのも事実です。

タイトルには、大きく分けて2つの要素が必要で、その1つに

 「何の本であるか」であるかが一瞬でわかること

があります。
「○○入門」「○○の基本」といったタイトルは、その要件をクリアしているため、現在でもこのようなタイトルの本を見かけます。

ただし、それだけでは、なかなか読者に買っていただけません。
結果、このようなタイトルの本でも、サブタイトルや帯文に訴求力のある言葉が求められます
実際、魅力的なコピーで表現されているものは、読者からの支持を得て販売数を伸ばしています。

もちろん、「○○入門」の前後に言葉を足すことで、サブタイトルではなく、長めのメインタイトルの本にするケースもあります。

これがキャッチコピー力であり、タイトルに必須の2つめの要件です。

キャッチコピー力が必要なところ

昔の実用書には、帯がついていない本も少なくありませんでした。
帯があったとしても、本の内容を少しだけ説明する帯文が多かった印象です。

現在は、さまざままバリエーションがあります。

本の内容だけでなく、誰に向けた本であるかを帯のメインコピーやメインタイトルの一部に採用するケースも少なくありません。
本を読むことで得られる読者のメリットをメインキャッチにする場合もあります。
類書との差別化をアピールすることもあります。

本のタイトルを含めて、カバーと帯に必要なキャッチコピーをまとめますと、

 ・本の内容(ひと言でわかるもの)
 ・本の内容(少し詳しいもの)
 ・読者が得られるメリット
 ・ターゲット読者
 ・類書との差別化

 
などになるでしょう。

私の場合、これらを

 ・本のメインタイトル
 ・本のサブタイトル
 ・帯のメインキャッチ
 ・帯のサブキャッチ
 ・帯やカバーのウラ表紙側
 ・袖(カバーを折ったときの内側)

などに振り分けていきます。

先ほども触れましたが、タイトルには本の内容がひと目でわかることがマストですが、「○○の基本」のような言葉だけでは、アピール力が弱いのも事実です。

そのため、サブタイトルや帯などに、詳しい内容の説明を加えたり、ターゲットを絞り込んだ表現を加えたり、読者のメリットを加えたりしています。

たとえば、メインタイトルの「○○の基本」の前に言葉を加えて、「50代からの○○の基本」「毎日がツライ人のための○○の基本」「1日5分○○の基本」のようにメインタイトルの文字数を増やしたり、「毎月10万円かせぐ」「サクッとわかる」「世界一美しい」といったサブタイトルをつけたりすることで、訴求力を高めていきます。

「どれを大きくするか?」を決める

オモテ表紙に

 ・本の内容(ひと言でわかるもの)
 ・本の内容(少し詳しいもの)
 ・読者が得られるメリット
 ・ターゲット読者
 ・類書との差別化

どれを大きく使うかを何パターンも考えます

たとえば、「ターゲット読者」を明らかにする言葉をサブタイトルにすることもあれば、帯のメインキャッチに使用することもあります。

「読者が得られるメリット」をサブタイトルにし、「本の具体的な内容」を帯のメインキャッチにし、「本書の特徴(差別化)」や「ターゲット読者」を帯に小さく入れることもあります。

このように、さまざまな組み合わせを考えていきます。

もちろん、帯のメインコピーと帯のサブコピーのように、配置する場所によって微妙に言葉・文面も変わりますから、それらをあわせると何十パターンの組み合わせにおなるでしょう。

この組み合わせを考える力を含めて、キャッチコピー力です。

何をタイトルにし、何をサブタイトルにし、何を帯のメインコピーにし、何をサブコピーにし、何をウラ表紙にし、何を袖にするか……。
そして、それぞれどんな言葉を選ぶかが問われています。

私のキャッチコピー力は……

このようなことを解説しておきながらですが、実は、私はキャッチコピーを見つけ出すことが得意ではありません。自信がありません……。
といいますか、「貧弱」といっていいレベルでしょう。

その大きな理由は語彙力がないからです。
「語彙力」の記事でも紹介しましたが、表現の幅を出すには語彙力が欠かせません。
さまざまな言葉を知っているからこそ、読者に刺さるコピーを生み出すことができるのです。

私には、ベースとなる語彙力がありませんから、読者を惹き付けることが容易ではありません。

周囲の編集者のように、(多彩な表現が使われている)小説を読む量は圧倒的に少なく、学校時代の国語教科も得意ではありませんでした。

それでも、キャッチコピー力は、本の売れ行きに大きく影響を与えるため、日々努力しています。
類語辞典を筆頭にしたツールのお世話になりながら、考えに考えています。

それでも読者に刺さる魅力的なコピーを見つけ出すことは、なかなか容易ではありません。でも、毎回、自分の中で考えられたベストな言葉をタイトルや帯で表現しているつもりです。

今後もキャッチコピー力は磨き続けなければならないと思っています。




文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。

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