獣になれない私たち 感想


Tverで「獣になれない私たち」が配信されていたため、一気に見た。ドラマが放送されていた時もみていたが、キャストも脚本家の野木さんも好きだし、ドラマの温度感、空気感が好き。そして、挿入歌と主題歌がぴったりで好き。
せっなくなので感想を書いてみた。まとめて見たので、話と感想が若干ちぐはぐなところもあるが、ご容赦いただきたい。

ガッキーの笑顔、困り顔、時には疲れ切った顔、ころころと変わる表情がめちゃくちゃ可愛い。松任谷さん、上野くん、京谷、恒星、呉羽、とみんなキャラが立っててマッチしてるので、物語に入り込める。

キラキラした登場人物がほぼいなくて、強くものを言えなくてなんでも笑顔で受け入れてしまう晶を初め、みんな何かを抱えている。そして、日々満足できないことがありながらも日常を生きている。でも、たまには希望もある。真っ直ぐ上手くいかないながらも少しずつ進んでいく。そんな物語こそ、私たちがなんとか日々を生き抜く支えになると思う。自分の日常もそんなキラキラしたものではないけど、これでいいんだとも思える。 

1話
ワンマン社長に滅茶苦茶な要求をされ、同僚よりも仕事ができるからと担当外の仕事も押し付けられ、プライベートもなんとなく上手くいかず、人にものを強く言われると返せない、いろんなものを飲み込むしかない。見てるだけで鬱展開な1話。

バーで強めな服を着ている女性に対して「男受け悪そうなのに誰のために着てるんだろう?」と京谷が言ったのに対して晶の「着たいから着てるんじゃないの」の言葉がよかった。

晶がパワハラワンマン社長に立ち向かうため、服とブーツを買い、翌日いつもよりも個性の際立った服で出社。社長に業務改善要求を突きつけるシーンがすごく好き。なんとかして殻を破るんだ、変えるんだという意思。
外見によっていつもより強い気持ちを持てるし、勢いって大事なんだよね。
その後の深海がグレた!には笑っちゃったけども。

2話
上野くんがとにかくかわいい。(部下にいたら大変だけど…笑)恋愛は贅沢品、余裕がないとできない。でも、もし会社にいいなって思う人がいたら、毎朝家出るのが嫌でも電車に乗るのが嫌でも活力になるじゃないですか。付き合いたいとかじゃなくて、そういう存在が欲しいんです。っていう上野くん、ほんと推しとか趣味とか、私たちが生きる希望としてるのを言語化してて、わかる、わかるよ…!希望必要だよね…!ってなっていた。

勢いで突き進めちゃう呉羽。たぶんなかなかこういうタイプの人って少なくて、晶とも対照的になって、呉羽は呉羽で素敵なんだよなって思う。

3話、4話
4年付き合っている京谷の家に元カノが住んでいる。確かに事情はあるものの、晶の立場からしたらどうにかしてよと思う。京谷は、元カノが仕事が辛そうで精神的に疲れていた時に、次の仕事見つかるまでうちに居なよといって住まわせたという事情がある。確かにそのときは、そうするしかなくて、でも後になってどうしようもなくてって。そういうことってきっとあるよなぁと思う。呉羽は、簡単に手放せるかもしれないけど、京谷や晶が簡単にはどうにかできないのも分かる。でもどうにかしてほしい。
付き合い始めた頃はお互いちゃんと好きで、この先どうにかしていこうと思ってたんだけど、どうなるかわからないものだよね。

「バカになれたら楽なのにね」って言葉が刺さる。

京谷はきっと晶がなんでも許してくれると思ってる、自分では抱えきれずにしまっておけばいいことも話してしまう。晶も一緒に抱えることになる。また晶は京谷を許してしまうのか。

5、6話
朱里と二人きりの場面、どうなるのか修羅場かと思ったら、朱里は晶に自分の持っていない物を全部持っているという。晶は静かに、泣けるあなたが羨ましいと言う。
誰かかからみて羨ましいと思う物は、他の人から見たら、我慢で成り立っている。

幸せなら手をたたこう。あんなに恐ろしいと感じることがあるか。全て引き受けて、無理やり笑顔でやりすごして、みんなの幸せは深海さんで成り立っている。壊れる一歩手前に見える。京谷の母とのやりとり。愛していれば、辛いことも乗り越えられると言う。でも晶は、辛くても、ずっと許して、諦めて、もう堂々巡りで抜け出せない。もっと好きなしたらいいのにと思うけど、私だって自分のこととなればきっと現状を変えることはできない。

「男は女に夢を見たいんです」に対する「じゃあ女の夢はどうなるの」松任谷さんの返しがすっきりした。飲み会の場は、晶、松任谷さん、上野くん、かけいさん、京谷、社長の関係性がカオスで面白かった。笑
飲み会後、京谷と晶が二人で話しているところで、京谷だって元カノを家から追い出せなくて私の気持ちを踏み躙ってると伝える晶に、今の晶はかわいくないという京谷。結局、ニコニコなんでも受け入れてくれる晶がよかっただけじゃんと見ていて虚しくなる。

呉羽のところへ向かう晶。全て元は呉羽のせいだ、でも元を辿ると京谷が悪くて、その元は自分が悪くて、すべて偶発的で誰かだけが悪いわけじゃなくて、現実ってそんなどうしようもないことが多いよなぁと思う。ただ、何も言わずに抱きしめる呉羽が優しい。

呉羽と恒星は都合のいい関係で、楽しいことだけを共有していた。呉羽が子宮摘発の手術をしたことは、言えなかった。大事なことは言えないってそんな関係は寂しい。自分にとってたいしたことでも、たいしたことじゃないと言われたら、きっとそれはしこりのように心に残り続けると思う。

7話
京谷の父の介護問題。ここでも、京谷と京谷の弟は千春さんの話をちゃんと聞いていなかった。晶が千春さんの気持ちを代弁して事は進んだ。涙を流す千春さんを何も言わずに抱きしめる晶の優しさが前話の呉羽と重なった。

晶は京谷に、今までずっと京谷の前ではニコニコしてたけど、本音が言えず自分の人生を捨てていたと、京谷とは終わりにすると、やっと本音が言えてよかった。

8話
怒涛の展開。
朱里が晶の職場で働くことになる。朱里のこと放っておけなくて晶も大変だ… でも、あれだけずっと閉じこもっていた朱里を動かせた晶はすごい。朱里が働いている姿を来客した京谷に見せることで、京谷を驚かせ、朱里と晶が笑っているシーンはなんだかほっこりした。本音をぶつけたからこそ、あのシーンができたのだと思う。
恒星と兄の関係性。ふたりとも素直になれず、お互いを羨ましく、疎ましく思っていた。最後にちゃんと向き合うことができてよかった。震災がきっかけですべてを奪われてしまった恒星兄の存在は、私達が震災のこと、被災者のことを忘れてはいけないメッセージを残している。

9話
性別関係なく、人間同士でいられる相手がいるとしたら、貴重じゃないですか。

3人でビールを飲んだ。会社の同僚と仕事のことで一緒に喜んだ。女同士で1000回のハグ。飲み友達の家で夜通しゲームをして朝ごはんを食べた。
そういう一つ一つを大事にしていけば、生きて行けるんじゃないかな。一人じゃない…んじゃないかな。

結婚して、家庭を作って、という従来の価値観をときほぐすような言葉だった。

会社の不正を暴こうとしたけど、現実の生活を考えて、暴ききれなかった大隈。がんばっていたけど社長の罵声とそれに起因するミスでそのまま辞めてしまった朱里。社長に社員への要求や物言いのキツさを訴え、初めて会社に吠えた晶。不正への加担をもう辞めたいと言った恒星。正しいことをしたい、ただ仕事をがんばりたい、必要性とされたい、それだけなのに、現実は残酷すぎる。もうどうしようようもなくなった最後の二人のキスシーンは、救われなくて、救われたくて、諦め、切なさ、救い、いろんなものがぐちゃぐちゃに入り混じった空気感で切なかった。

10話
晶が社長に伝えたことは、社長には伝わっていなかったけど、社員には伝わっていた。
最後、辞める決断ができたところはかっこよかった。恒星からはもうキモくないと言われた。憑いていたものが取れたような晶は、すがすがく自然体だった。
恒星も不正も、ゼロからやり直すことになったが、ずっと抱えていた不正問題に蹴りをつけられた。最後に一発殴れた。
子宮摘出した呉羽に対して、くれちんは新しいくれちんになっただけと言えるカイジはめちゃくちゃ懐が広くて優しい人なんだろうな。

先のことはなんにも決まっていなくて、これから何も当てはない二人だけど、いい終わり方だった。もちろん生活は大事だけど、何かに雁字搦めになりすぎる前に、自分の気持ちに素直になる方が道は拓けるのかもしれない。

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