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映画小説『セブンカラーズ・ストーリー』 Vol.4/嵐の予感S.C.1thステージはどうなる?

< ステージ衣装専門店・カゴシマバード><衣装合わせ部屋>

派手な衣装が、たくさんハンガーに掛けられてカラフルだ。
そんな雑多なところに、セブンカラーズメンバー⇨彩華・絵莉花・あかり・星星・ジョナ・那智・イザベルの7人が集まっている。

小鳥の巣のような帽子を被った小鳥遊(たかなし)芽衣子(58)が、スケッチブックを片手に持って説明している。スーツ姿の西郷も側にいる。

ハイテンションな小鳥遊「みんな若いわね〜 チョー可愛い! 何着ても似合う年齢だわよ。(そんな子たちと話すのが楽しい)とは言えー 更に引き立つ衣装にしないとー セブンカラーズの名前に負けちゃうわ。(まわり見て)素材はいっぱいあるから、自由な発想で考えてみましょうね。”チュンチュン小鳥”って、コンセプトどうかしらー。空に羽ばたいて虹に届く。もっと先へ行きたいわよね?ね?」 

小鳥遊のノリにちょっと不安なメンバーたちではある。

西郷「予算内でお願いしますね」 と釘を刺す。

< 音楽スタジオ・”スタジオ・ベータ”>

ドラムリードギターベースのミュージシャン3人(ロックバンド・オコジョ)が、スタジオのブース内にいて、ヘッドフォンに流れてくる打ち込み(パソコンによるリズムと旋律)を聴きながら、体でリズムを取って、自分たちの出す生音(楽器のナマの音)を重ねている。ダビング中だ。

彩華は作曲者だから、楽譜を広げて、操作卓に座ってレバーを上げ下げしているディレクターの脇にいて、音を確認している。
信頼出来るディレクターなので、何か指図しているわけでは無い。
一緒になって、バランスをとってミックスしている。
意見は、ほぼ一緒だ。
あ、ここ、強過ぎたかな、という時も顔を見合わせてうなづく。

セブンカラーズのメンバーたちは、その後ろに座って、スピーカーから聴こえてくる音楽で、リズムを取ったりして聴いている。

彩華「じゃあ、次、歌とるから、一人づつブースに入って下さい。(指差して)あかりから行くよ」

あかり「はいッ!」
と立ち上がり、コチコチになって、一人用の小さなブースに入ってゆく。
見ている他のメンバーたちにも、あかりの緊張が伝わる。

星星「(ジョナに小声で囁く)意見は言えない雰囲気です」
ジョナ「何か意見あるの?」
星星「言えないです・・」

< スタジオの待合室>

彩華と西郷が、ソファの方に来る。その前に西郷が・・

西郷「チンチンって、名前変えた方がいいんじゃないかな」

彩華「なんでよ」 ちょっと驚く。なに、それ。

西郷「だって、チンチンて、まずく無い?」 慌てる。言い出したわりには、そんなにマジ顔で受け取られるとは思わなかったんだが・・・

彩華「おかしいんじゃないの、そんなことで名前変えさせるなんて。それにティンティンでしょ」 やだ、西郷さん、何言ってるのよ・・

西郷「でも、本人が納得するなら、芸名ってアリじゃん」

<スタジオ内・別な場所>

西郷、星星に言う。

西郷「なんていうかさ、チンチンて名前って、日本だとちょっとまずいんだよね、アイドルとしては」

星星「なんで、ですか」

西郷「う〜ん、言いにくいな、いやらしいっていうかさ」

星星「いやらしい!? なんで、ですか、ちゃんと言って下さい」

西郷「赤ちゃん言葉でさ、オチンチン・・あ、ごめん(と赤面)男性の性器の事をさ、赤ちゃんがさ」

星星「もう一度、ハッキリ発音して下さい」

西郷「オチンチン!」 はずいよ!

星星「(なんだぁ)ぜんぜん大丈夫です、私の名前はリーティンティンですから、発音ぜんぜん違います」

西郷「いやあ、そういうことじゃ・・・」

星星「中国人にとって、名前はとても大事です」

西郷「(わかりました)ですよね、そうですよね」 負けました。

< カゴシマイオンモール・イベント広場>

彩華、西郷、勇気ら来ている。
勇気が、その場で、自分がデザインしたポスターを広げ・・・
「セブンカラーズ誕生!初ライブ7月1日」となっているのを貼る。
ユニフォームは決まってないので、衣装はバラバラだが、これは、メンバーの顔の可愛さ、個性が良く分かるポスターだ。

勇気「いい感じでしょ」 我ながら上手く出来た。やっぱり彩華が目立つ。

彩華「うん・・(とは言ったが、周り見て)でも、ここ、違ったかな・・・」

西郷・勇気「えっ?」

彩華「オープンスペース過ぎるかなって。最初は小さなライブハウスとかの方が良かったかな・・・」

とにかく広い。天井も5階まで吹き抜けになっている。

西郷「ちょっとぉ、いきなりどうした、弱気になって」

彩華「メンバーの前では弱気出せないから、ここで出してるの。受け止めてくらはい」 心細くなっちゃったのよ・・・

西郷「最低、50人は大丈夫だよ」

彩華「その50人が、これだけ広いとスカスカに感じてしまうかもって・・・グチってるだけだな私」 
常に前向きな気持ちじゃないといけないのに・・

西郷「そんなふうに考えちゃ駄目だ。スタートから大動員出来るはずは無いって知ってるだろ。小さくてもいいから波紋を広げていくんだよ」

彩華「・・・おっしゃる通りです」

勇気「とにかく宣伝、頑張ろうよ」 こんな彩華はじめて見た。

西郷「頑張ろう」

彩華「(大きく息を吸って)はいッ!!」 
私はアイドルだ! なんてったってアイドル!

< 時間経過のモンタージュ>
音楽に合わせてーーー短いショットの連続ーーー
全員でのダンス練習――
各メンバーがブースで単独でヘッドフォン付けて歌って録音の姿――
JAで働くあかりーー
キャンパスで勉強する星星ジョナーー
結婚式場で別な花嫁にメイクする絵莉花――
ガールズバーで歌うイザベルーー
チラシを配る西郷勇気――
出来上がった衣装をメンバーに見せる小鳥遊―――

<カゴシマイオンモール・イベント広場>

“Seven Colors”とアーチをかけた簡易ステージが設置されている。
ステージの前にはパイプ椅子が配置されて客席を作っていて、客数は100のところ70人くらいで、そこそこ埋まってはいるが、フロア全体が広いので、こじんまり集まってるという印象がある。
男子一色では無いから、ムンムンしてないので、健康的な雰囲気だ。
30%は女子だろう。みんなワクワクしている。
ステージ脇にはPAのスタッフと、無意識に常に小刻みにうなづいているのがクセになって、落ち着かない西郷が見守っている。

客席には勇気、カメラを構えた敏夫、制服の裕子の姿もある。
周元も隅に座っている。

時計を見る。ジャストタイムだ!
音楽が両サイドのスピーカーから♬♬♬♬!と広がってくる。

新しいミニスカ衣装の7人が、スニーカーで奥から走って出て来て、横一列に元気な笑顔で並び、手を振る。口元にマイクを付けている。

彩華「セブンカラーズでーす!」

A君B君を中心にした彩華のコアなファンは10人くらいか。
10人いれば、コアな声援が送れる。
ショッピングモールだから、客席を遠巻きにして、立って眺めて拍手している通行人が多い。

彩華「メンバー紹介の前に、私たちのテーマを歌います」

歓声と同時に前奏が流れ出し、メンバーのダンスが始まる。手拍子も出る。

その時、遠巻きの通行人に混じっていたサングラスの奥の方の男たち、垂れ幕を広げる。そこには、

「アイドルは日本のものだ 自分の国に帰って歌え」と、書かれている。

それを見て、愕然となる彩華、星星、ジョナ、イザベル、あかり、那智、絵莉花

フリーズしてしまう7人。歌が始まる前に次のシーンへ・・・・

<イオンモール・控え室>

ステージ衣装のままのメンバーたちだけが、そこにいる。
みんな、がっくりとうなだれ、個々に椅子に座ったり、別な方を見たり、顔を合わせられては、いない。
ステージはボロボロだった。
ファーストステージ大失敗。
長い沈黙の後、ふと気づいたあかり、

あかり「彩華」と呼びかける。

我に帰った彩華「え?」 と、あかりを見る。皆、あかりを見る。

切ない、あかり「みんなの顔が見たい」

目を腫らした絵莉花「そうだね、ステージでは見れなかったから」

彩華、力一杯、みんなの顔を見回すが、最後にふと目を落とす。

絵莉花「駄目だよ彩華、目をそらせちゃ!」

彩華「ごめん(と、絵莉花を見て涙腺決壊)ごめんなさい」

絵莉花「謝っちゃ駄目、リーダー! 何も悪くないんだから」

彩華「もう折れそう・・折れた」

星星「私たち、やめた方がいいですか?」

ジョナ「私たち?」

星星「いえ・・・私」

彩華「そんなこと言わないで! やめないで!」

イザベル「私がやめた方がいいかも。顔が違いすぎるから」

彩華「違うのよ、そんな事じゃ無い!」

那智「そう、そんな事じゃ無い」

ジョナ「でも、ナッチはちょっと思ってるんじゃ無い?」

那智「何を?」

ジョナ「ガイジンは違うって」

那智「いやいやいや、それ絶対違う、そんな風に絶対思ってない」

ジョナ「でも、何か違うって思ってるのは分かるヨ」

絵莉花「そう。何か伝わってくる、ナッチから」

那智「違うと思ってるのは音楽とダンスだよ」

彩華「えっ?」

那智「全然ダメだって言ってるんじゃ無い。ちょっと違うのよ、このメンバーと彩華の音楽がちょっとだけズレてる」

彩華「・・ずれてる・・?」 怒りは感じない。逆に救われる。

絵莉花「歌とダンスが?」

那智「うまく言えないけど・・・古い、とかじゃ無い。このメンバーのために書かれた曲じゃないでしょ。彩華の最初のイメージに私たちが合わそうとしてるから微妙に合わない」

彩華「・・・そんなこと思ってたの・・」

星星「私も・・」

彩華「えッ!?」

星星「私も、それ、思ってました」

彩華「・・・」

絵莉花「でも、今日の問題はそこじゃないでしょ」

あかり「そうよ、あの人たちなんなの?」

絵莉花「ああいうのをどうやって追い払えるのか、でしょ」

那智「あいつらを蹴散らす武器が弱いんだよ!」

彩華「武器?」

那智「武器だよ、私たちの武器は音楽だよ!」

彩華「・・・」

イザベル「musicがweapon ね」

絵莉花「・・私たちの武器、歌とダンスで奴らを蹴散らす?」

あかり「そうか!」 那智の言ってることが分かった。この子すごい。

彩華「・・・でも・・」

ジョナ「(思い出す)そうだ、星星、作ってたでショ」

星星「私・・・アイデアあります」

一同、星星を見る。自分に注目が集まり、ドキドキする星星。

彩華「(頭が痛くなる)でも、ごめん、ちょっと、今無理かも」

絵莉花「今、判断しなきゃ、リーダーが」

彩華「先輩にリーダー替わって欲しいよ」

絵莉花「何弱気になってんのよ」

彩華「私、今ダメなの・・頭、パニック」 ふらふらしてしまう。

一瞬でリーダーになった絵莉花「よし! じゃあ今だけ替わって判断するから。星星、アイデア出してみて」

星星「聴いてもらっていいですか」
と、スマホを出す。
一同、注目する。
星星のスマホから、少しだけ修正された曲が流れてくる。
一同、それを聴き入る。

彩華「・・(そのメロディに目の色が変わってゆく)・・」

それから2週間経った<鹿児島薩西高校>

休み時間の教室―――
裕子、教室の窓際の片隅で小さくなってスマホを見ている。
クラスのボス格の咲子の周りに友達が集まっている。
スマホを友達に見せる咲子。

咲子「セブンカラーズの動画がYouTubeにアップされてるー」

友達の女子高生「セブンカラーズって、こないだデビューした地元アイドルだよね?、中国人入れて失敗したんでしょ」

聞き耳を立てる裕子。同じ動画を見ていたから。
咲子のグループの後ろに近づいてゆく裕子。それに気づいた咲子。

咲子「何、アンタ」 こいつ、うざ

裕子「いえ・・・」

咲子「アンタもスマホ持ってんでしょ、貧乏のくせに」

ゲハゲハ笑う友達。
グサグサ来た裕子、仕方なく去る。

裕子「(呟く)私のDMMA英語の先生がメンバーなの」
と言っても誰にも聞こえない。

<YouTubeの画面>
「セブンカラーズ・プロジェクトvol.1」のタイトルが音楽と同時に現われる。

<鹿児島公会堂・前> (YouTube画面)
後藤アナウンサーがテレビクルーに撮影されているのを、横位置から撮った客観映像。最終選考の時のものだ。

後藤「大久保彩華さんが呼びかけてスタートした新しいご当地アイドル『セブンカラーズ』のメンバー募集に応えて、多数の応募者から厳正な審査が行われて・・」に被って絵莉花のナレーションが入る。

絵莉花のN「5月3日、私はセブンカラーズの最終選考に臨んだ」
手持ちブレした映像の絵莉花が、カメラに向かって答えている。

絵莉花「自信なんかないよー、ここまで来て満足、もう帰りたい(^.^)てか、大久保彩華って私の中学の後輩なんだよね、気がつくかな。いじめられっ子でさ、私はテニス部の一年先輩で、ちょっとキツくあたったからさ、それで学校やめたんで、思い出したら絶対落とすだろアイツ、普通なら^o^」

後で分かるが、これは敏夫が、その日にプライベートで撮った映像なのだった。

 <公会堂・舞台>(YouTube画面)
歌っている絵莉花。(客席から敏夫が撮ったもの)
絵莉花のN「ところが受かってしまった。彩華は私がいじめた事は忘れていた。ラッキー!」
続いてあかり、那智、イザベル、ジョナ、星星らの舞台上の歌が編集される。

絵莉花のN「そして農協の窓際OLあかり、ダンス学院のはみ出しで、沖縄出身の不良少女ナッチ、ガールズバーで歌ってるフィリピンから出稼ぎに来たイザベル、韓国SMタウンの研究生を落第して、”日本ならやれるだろう”と甘く考えてるジョナ、謎の中国人留学生・星星が受かってしまって、ツギハギだらけのセブンカラーズが発足した!」

彩華のアップ。
絵莉花のN「だいたい、リーダーの大久保彩華じたい、”出戻りアイドル”とか言われている。大丈夫なんだろうか、このグループは、やっていけるんだろうか」

< 結婚式場・花嫁控え室> (YouTube画面)
花嫁にメークしている絵莉花を敏夫が撮った映像。

絵莉花のN「もしダメでも私はメイクアップアーチストという立派な仕事があるから大丈夫なんだけど」

<バタヤン・ダンス学院>(YouTube画面)
ダンス練習しているメンバーのドキュメント画像。
絵莉花のN「なんて、思っていたら、きついきついダンス訓練が始まった。子供の頃はバレエやってたけど、その後テニスしかしてなくて、このトシでまたダンスはきついよ〜」
  ×   ×   ×
インタビューに答えるジョナ。
ジョナ「ゼンゼン楽だヨー、このレベルなら。ニッポンのアイドルは、ダンス上手より、カワイイ大事ね」と、ピースサインでニッコリ。   
  ×   ×   ×   
インタビューに答えるあかり。
あかり「すっごくキツイです、私、農協ですから。農協って農作業しません、殆ど銀行ですから。でも、アイドルの夢を追いかけたいんです」
  ×   ×   ×   
インタビューを受ける那智。
那智「まあ、一所懸命やってます。・・・でも、ダンスがな・・ちょっと不安あるけど・・いや、私じゃなくて、振り付けがちょっと違くないかって不安」

< イオンモール・イベント広場>(YouTube画面)
客席から撮った舞台上のセブンカラーズ。
絵莉花のN「そんな不安の中でスタートしたセブンカラーズだけど・・」

前奏が終わって歌が始まろうとするとメンバーが動揺して棒立ちになってしまい、後方を見るので、カメラがパンすると(つまり、敏夫がパンした)、後方で垂れ幕を広げているサングラスの男たちの姿が捉えられる。

絵莉花のN「波乱万丈の船出となった」

歌が始まっても歌えず、棒立ちになっているメンバー。(これは、公式カメラで撮られた映像)

絵莉花のN「こんなことで負けてたまるかって、逆に闘志わいたよ」

「to be continued」の文字が現れる。

<マルジュウ・会議室>

Youtubeは終わって、それが流れていたパソコン画面を囲んでいるメンバー敏夫、西郷、勇気

動画が終わったところで、微妙な空気が流れている。

クスクス笑っているのは那智、絵莉花、ジョナだが・・・彩華、あかり、星星、イザベルは硬い表情。

これを編集して、作った敏夫が説明する。

「最初はギクシャクしてるように見えるんだけど、だんだん仲良くなっていって、団結してゆくように繋いでいくよ。みんながOKだったら、坂本君のアカウントでアップして貰う。僕のだと趣味でやってる動画とかに繋がってっちゃうから」

勇気「やるよ。面白いよ。もう、この場でアップしたら、全世界から視聴可能になる」

硬い表情の西郷「公式だとテレビ局も噛んでるから、こんなのヤバくて流せない。若干地下アイドルっぽい印象も着くけど、どうなんだ?彩華は」

彩華、即座に「これで行こうよ、これがいいと思う」

あかり「若い子なんかは、これ見たら私に何か言ってくれると思うわ。今、何も言ってくれないから」

那智「ウチのスクールもそう、みんな戸惑ってるんだよ」

ジョナ「大学はそうでもないヨ」

那智「大学生はサベツしませんて顔してるでしょ。ヤンキーは露骨だけど」

ジョナ「ヤンキーとは会わないからネ。でも、コレ見たら、もっと面白いと思うヨ」

星星「応援してくれます」

那智「アンタは甘い。日本人はね、心の中でサベツするのよ。私はしないけどね。沖縄がサベツされてるから」

絵莉花「彩華、ホントに覚えてなかったの?私のこと」

彩華「ははは、覚えてましたー!」 パッと表情変わる。

絵莉花「だろうと思った」 苦笑。

勇気「(驚いて呟く)へえ・・・何が真実なんだ」 女はわからん。

彩華「でも、先輩のはいじめとは思わなかったよ。優しくはなかったけど、他がすごかったから」

絵莉花「そうねえ」 遠い目をする。思い出す。バカな奴らを・・・

あかり「そんなにいじめられたのに、立ち直って、えらいね彩華は」

ジョナ「アイドルは根性磨けるヨ。軍隊と同じヨ」

絵莉花「軍隊とはちょっと違うでしょ」

イザベル「ホントのリーダーはどっち?」

絵莉花「そりゃ、彩華だよ」

彩華「でも、あの時の判断がリーダーとしての判断だと思う。私はアタマ飛んじゃってたから。でも、星星の音楽聴いて、目が覚めた感じ」

星星「良かったデス」

絵莉花「じゃ、私は”裏番”てことで」

彩華「それいい!裏番、カッコいい」

星星「何ですか、ウラバンて」

那智「影の裏番長」

ジョナ「スケバン?聞いたことあるヨ」

星星「分かりません」 なんのこと?

勇気「後で教えてあげるよ」

ジョナ「軍隊じゃなくてスケバンか」

敏夫「視聴者としては、やる気のなかった絵莉花がリーダーになってっちゃう、てのは面白いと思うんだよ」

絵莉花「やらせ?」

敏夫「これはやらせじゃなくて、そう見えるように編集出来るからさ。やらせはしない方がいい、すぐバレるから。テラスハウスみたいにやればいいんだろ」

那智「じゃあ、ジョナとダンスバトルしたら、ケンカしてるように見えるね」

ジョナ「やりましょう、ナッチ」

<バタヤン・ダンス学院・練習場(YouTube画面)>
音楽が流れ、那智とジョナが鏡に向き合って、それぞれのダンスをしている。
お互いを見て、「ちょっとそこが違う」「こっちの方がいい」という主張をする。

絵莉花のN「ナッチとジョナはダンスに関しては主張が違う。新しい曲の振り付けは二人でやることになったが、大丈夫なんだろうか」

那智「沖縄カラテの動きを入れるといいと思うんだよ」

ジョナ「カラテとダンスは違うでショ」

那智「原点は一緒だよ。ほら、こういうの(手を頭で振る沖縄舞踊)はこれ(空手の決め)から来てる」

ジョナ「戦いと、エンターテインメントは違うと思う」

那智「同じだよ!」

ジョナ「あなた、韓国人みたいね」

<スタジオ・ベータ> (YouTube画面)
生バンドの演奏。指示する彩華の姿。
絵莉花のN「彩華が作曲して、鹿児島でライブ活動してるロックバンド・オコジョに演奏してもらったものを・・・」
  ×   ×   ×   
別な日。星星がヘッドホン付けて、ディレクターに指示している。
絵莉花のN「星星が修正して、新しくした。もう一回オコジョを呼ぶ予算は無いから、プロツールスで修正する」
  ×   ×   ×   
彩華のインタビュー
彩華「星星はすごい、天才だよ。びっくりしたわ。私の音が、もっと良くなる、ていうより次元がアップした感じ。刺激受ける」
  ×   ×   ×   
絵莉花のインタビュー
絵莉花「私に言わせれば、彩華と星星が二人天才。ワンチームに二人天才がいたら、凄いよ。ビートルズのジョンとポールじゃん!」

< 鹿児島精華女子大・キャンパス>

カフェでスマホで、ワイワイ言いながら動画を見ている女子大生たち。

女子大生A「すごいすごいすごい。どんな楽曲とダンスになるのか期待しちゃうじゃん、ねー」

<ステージ衣装専門店・バード>(YouTube画面)
あかり、カメラに向かって自分の描いた衣装デザインを見せる。
あかり「私のセブンカラーズの衣装のイメージなんですけど、これを衣装の先生に見せてみますね」

あかりのデザイン画を見ている小鳥遊。
小鳥遊「私の考えていたイメージより少しアダルトなのね」

あかり「誰かに歌わされている感じ、じゃなくて、自分たちで歌って行く、というイメージなんです。私たち、なんでも自分たちでやってゆくというアイドルなんです」

小鳥遊「いいわねえ!素敵!」

<鹿児島市内の喫茶店>

向き合って座り、コーヒー一杯で3時間、スマホで動画を見ているA君、B君

A君「アイドルには、”歌わされている感”が必要なんだけどな」

B君「だが、アイドル本人たちにも、自ら”ヤリタイ!という熱”が無いと、こっちにアピールして来ないだろ」

A君「その”熱”を持ったうえで、更に”歌わされている”かのように”見せる技術”を獲得すると、グレードがワンランクアップしたアイドルに成長するんだよ。”プロデューサーに歌わされてる”んじゃなくて、”ユーザーに歌わされてる”、つまり”俺らに歌わされてる”、という感じがユーザーと一体になって”オタク・カオス・ワールド”を形成してゆくんだよ!」

・・・意味、わかります?

<黒バック>(YouTube画面)
イザベルが画面に向かって喋っている。

「英語のレッスンしましょう。Let us talk in English with me!(と英語が続く)」

<鹿児島薩西高校・校庭>

咲子を中心にした友達グループが、スマホを見ながらイザベルの英語を楽しそうに復唱する。
それを遠くで見ている裕子、自分のスマホに目を落とす。

<黒バック>(YouTube画面)
ジョナが画面に向かって簡単なハングルを喋る。

<JA鹿児島>
女子職員たちがスマホを見ながらジョナのハングルを復唱する。

<黒バック>(YouTube画面)
星星が画面に向かって簡単な中国語をしゃべる。

<市内のどこか>

周元がスマホを見ながら、中国語を呟き、ハッとなり、更に覗き込む。

<黒バック>(YouTube画面)
セブンカラーズメンバーが、画面に向かって、イザベルの英語、ジョナの韓国語、星星の中国語を復唱する。

<島津プリント>

パソコンの前で作業する勇気のところへやって来る西郷。

勇気「(気づいて)あ・・何か、問題?」

西郷「いや、アクセス数すごいことになってるだろ」

勇気「普通ですよ、これくらい」

西郷「普通なのかよ?・・・500万て」

勇気「まだまだですよ。イザベルの映像がフィリピンでヒットしたんですよ。それがアメリカにも伝われば億も夢じゃないですよ」

<黒バック>(YouTube画面)
ジョナが画面に向かって自分をメイクしている。カメラ側に鏡がある。
メイクの動作は、ジャンプショットして完成する。
半分は韓国メイク、半分は日本メイク。

ジョナ「日本のメイクはピンクや、赤が強いです。(半分顔を隠す)カワイイを目指してます。一方、韓国のメイクは少しブルーを入れます。ちょっと色っぽい、を目指してまーす」

半々の顔を交互に見せて視聴者に見比べさせる。

ジョナ「セブンカラーズにも、韓国メイクを入れてみたらどうでしょうか」
 ×   ×   ×   
あかりをメイクする絵莉花。

絵莉花「このちょっと、ちょっくらイモっぽいあかりちゃんをアダルトなムードにしてみますね」  
イモっぽいって、言っていいの?・・・あかりはOKだって。
早回しであかりをメイクしてゆく。
照れ笑いしてメイクされてゆくあかり。
メイク完成。グッと色っぽくなったあかり。

絵莉花「ホーラ、綺麗になったね〜。でも、ダメ押しが欲しいな、あかり、金髪にしようか」

あかり「エエ〜ッ!」 ちょっとそれは・・・

<走る市電の中>

通勤中のあかり、スカーフを被り、周囲を気にしている。
スカーフの裾から金髪がはみ出している。

<JA鹿児島>

スカーフをつけたままの制服のあかり、女子職員たちからつきまとわられながら、掃除している。

女子職員B「先輩、パツキン見せて下さいよ〜」

あかり「ダメダメ、服務規程に抵触するわ」

あかりのスカーフをパッと取ってしまったところへ、課長が出勤して来たので、静かになる女子職員たち。
課長、あかりの姿を見て、一瞬、目を見張るが、”何も言えねえ”と思って席に着く。金髪は、服務規定には抵触しないのでした。

<マルジュウ・応接セット>

周元が、西郷と話している。

周元「我(ウォー)・・わたし、セブンカラーズに投資したいです」

西郷「エッ!?」

周元「李家のお嬢様、周家としては応援した方が良いです。周家は明の時代から李家にご恩があります」

西郷「李家のお嬢様って、もしかして、チンチン?」

周元「リー・ティンティンさんです。でも、それとは別に、セブンカラーズ 、良いと思います。ちゃんとしたコンサートやりましょう」

西郷「・・・はあ・・いいですねえ!コンサートいいですねえ、どこでやりましょうか・・・おいくらの投資で・・・」 

揉み手って、こういう時に出てしまうのね。

<島津プリント>

西郷からの電話を受ける勇気。

勇気「はい、8月16日18時、県民交流センター・・えっ取れたんですか、凄いですね」
座席は250くらいのはずだ・・・西郷さん、仕事早いぞ。

<ダンス練習場>(YouTube画面)
ダンス練習後のすっぴんのメンバーたち、汗かきながらも、笑顔を絶やさず、画面に向かって告知。
「8月16日18時、県民交流センターにて、セブンカラーズ、リベンジコンサートあります。チケットは○日よりセブンカラーズ公式サイトにて発売します。みなさん、よろしくお願いしま〜す!」
それぞれ、フレーズごとに言葉を分けたり、一緒に言ったりする。

<県民交流センター>

コンサート当日。
客が集まって来る。

< 同・控え室>

メンバーたち、それぞれ、黙々とメイクしているが、絵莉花が時々、側に行ってみてあげている。

<同・舞台裏>

地元バンド・オコジョが音合わせしている。
敏夫がその様子をムービーカメラで撮っている。

<同・客席>

どんどん埋まってゆく座席。
女子高生グループ、女子大生グループ、A君B君らオタクグループ、正装している周元。勇気。一人で来ている裕子。
舞台袖からいつも以上に緊張した面持ちで見る西郷。

< 同・控え室>

係が時間であることを告げ、緊張して立ち上がるメンバーたちの姿・・・

その瞬間から、ダーンと音楽が入り、ハイスピード(スローモーション)で捉えられる。

<同・廊下>

舞台に向かうメンバーたちの姿がハイスピードで。

<同・舞台裏>

バンドの前に集合して来るメンバーたち、ハイスピードで、バンドと目で合図し合う。バック音楽がフェードアウトし、一瞬、サイレントとなると・・

<同・舞台>

現場の音楽の始まりと同時に幕が開き、新しいセブンカラーズの全貌が分かり、観客が大歓声を送る。
以下、観客のカットバックで盛り上がってゆく場内。
『セブンカラーズ・テーマ』

「♪雨上がりの午後2時 青く輝いた空に 
みんなが指差しているアーチ
あなたと私の架け橋 走っていくから待ってて 
濡れてる髪が風でサラサラになるまでにたどり着く

僕は待てない僕も 走って君に向かうよ 
空に輝くあのアーチ
君と僕との架け橋 待ちきれないから突っ走る
駆け上がり切ればアーチのてっぺんで君を抱きしめる

レインボー セブンカラーズ
セブンカラーズ レインボー

レッド 情熱の恋の色(イザベラ)
オレンジ 優しい温かさの色(あかり)
イエロー 明日への希望の色(那智)
グリーン 仲間との絆の色(絵莉花)
インディゴ 豊かな知性の色(星星)
ブルー 海のような心の色(ジョナ)
パープル 愛をたしかめ合う清い色(彩華)

レインボー セブンカラーズ
セブンカラーズ レインボー

私とあなたの架け橋が ふたりから世界へ広がる
君と僕との架け橋が 星の世界を巡ってゆく
雨上がりの午後2時は 永遠になる約束」

一曲を歌い終わると、激しい声援に紅潮したメンバーたちの、荒い息づかいでの表情が眩しい。

・・・to be continued

(お読み頂き、ありがとうございます。SCに応援のチャリンを・・・)

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