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SHUTLとして再生する、黒川紀章氏が設計した中銀カプセルのいま

名建築の解体

建築家・黒川紀章(1934-2007)が設計し、世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅「中銀カプセルタワービル」。
2023年秋、松竹株式会社がそのカプセルを受け継ぎながら、今の時代に応答した新たなアート&カルチャースペース「SHUTL(シャトル)」として再利用することになりました。

建築運動メタボリズムの代表的な建築であり、未来都市のプロトタイプである中銀カプセルタワービル。25年に1度工場で生産されたカプセルを現場で交換することで、200年間建築を維持するというコンセプトで建てられました。

(提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト)

しかしカプセルは交換されることなく、1972年に建てられた中銀カプセルタワービルは老朽化により、竣工から50年の2022年に解体されることとなりました。
その様子は、NHKの番組「解体キングダム」で取り上げられ、壮絶な解体現場の様子、そこから改めて浮かび上がった黒川紀章の込めた想いに、大きな話題と反響が寄せられました。

(提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト)
(提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト)

その後、解体されたカプセルはどのように保管されているのか。

今回は、黒川紀章建築都市設計事務所中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトにご協力いただき、解体後に移動し保管されていたカプセルの姿をレポートします。

集められたカプセル

カプセルは解体された後、日本国内にある倉庫に集められました。

保管されていたカプセルは全部で23基。
中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトが、カプセルを国内外の美術館や商業施設での展示、宿泊施設やギャラリーとして運営する「カプセル新陳代謝プロジェクト」を立ち上げ、黒川紀章建築都市設計事務所監修の下に修復を行いました。

(撮影:山根かおり)

そして、SHUTLにインストールするカプセルがこの2基。
内外装を竣工時に近づけて修復されたカプセル(オリジナル、写真左)と、外装のみ修復されたカプセル(スケルトン、写真右)です。

カプセル① A906 - オリジナル

(撮影:山根かおり)

竣工当時の美しい姿に修復された、A906。
近くで見てみると、外壁の表面はフラットではなく、凹凸のあるテクスチャーとなっています。

(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)
(提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト)

タイプ AからDの4種類存在するカプセルのうち、A906はタイプCの構造にあたります。
A906のカプセルに、最後までオリジナルの内装が残っていたB703の棚や家電、照明などのパーツを組み込むことで再生しました。

(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)

ガジェット好きにはたまらない、オーディオ/通信機器。
時計、電話、ラジオ、テレビに加え、竣工当時最先端のテープレコーダーを搭載。
未来の働き方を予言していたかのように、社会人がこのスペースで働くことができるミニマムな機能を実装していました。

(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)

バスルームも実にミニマルに構成されています。細部のデザインの美しさが目に留まります。

カプセル② A1006 - スケルトン

(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)

そしてこちらが、スケルトンのA1006。
新しいアートスペースとなるSHUTLのため特別に、修復は外装の一部のみ、解体したカプセルの姿をできるだけそのままに残していただくことになりました。

残されたカプセルナンバー、そして荒々しく残る壁面塗装は、これだけでも見応えのあるアート作品のように佇んでいます。

(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)
(撮影:山根かおり)

内装は、なんと圧巻の鉄骨剥き出し。
インダストリアル感のあるこのカプセル内で、現代のアーティストはどのような表現ができるのか、挑戦的な雰囲気がすでに漂っています。

「SHUTL」としての再生

「SHUTL」では、この2基のカプセルを銀座・築地エリアに戻し、再生・活用しながら、伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験場(ラボ)として、「未来のオーセンティック」を生み出すことをコンセプトに掲げ、挑んでいきます。

現在、カプセルを設置しアートスペースとして機能するための建築/スペースの設計を進めています。

SHUTLの最新の情報や、わたしたちがSHUTLで紹介したいと思っているさまざまなアートやカルチャーについて、引き続きこのnoteと各SNSにてお知らせしていきます!ぜひご注目ください!

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