制約の中からイノベーションは生まれる

今日とあるマーケティングのカンファレンスに行ってきました。普段セミナーやイベントには全く参加しない派なのだけど、何回も読み返している本の著者である某世界的マーケターも登壇するとのことだったので、2ヶ月前くらいに即ポチしていました。(内容は悪い意味で予想を上回ってきたのだけど)

ゲストの1人として、最近何かと話題の多いキングコング西野さんが話をされる時間がありました。西野さんの本はこれまで読んだことはなく、自分の中ではまだテレビの人という印象が強かったのですが、今日の講演を聞いて頭いいなぁという印象に変わりました。

1時間強間髪なく話続け、しかも論理的で、笑いというスパイスも兼ね備えており、聞いていて全く飽きなかったです。

話の中で、「環境の力を借りて制約を解除する」という話があり、これは非常に的を得ていると思ったので、議事録的な意味合いで残そうと思います。

西野さんは具体例を用いて説明されていました。


なぜ飛行機は空を飛べるのか

昔島田紳助さんと相方の松本竜介さんで結成された漫才コンビ「紳助・竜介」のネタの一節で、飛行機はなぜ空を飛べるのかという話があったそうです。

紳助:「なんで飛行機は空を飛べると思う?」

竜介:「それは、でかい羽が生えてるからに決まってるやろ」

紳助:「違う!」

竜介:「え、じゃあなんで飛べるんや?」

紳助:「飛行機に何百人もの人が乗ってるからや。しかも飛行機がもう走り出してる。おまけに滑走路は途中で切れてる。もう後は飛ぶしかないやろ」

漫才なので、ロジックは崩壊していますが、重要なのは、何百人の命を乗せた飛行機が断崖絶壁向けてすでに直進しており、もう何があっても飛ぶしかないという環境にあることです。

環境の力を借りて(飛ばないと乗客が死ぬ)、制約を解除(空を飛べるようになる)するという比喩表現です。

これは、アマゾンの草食動物が危険から身を守るために、長い歴史の中で独特な進化を遂げていることと似ています。

西野さんとSHOWROOM前田さんが始めたバーの話


もう一つ面白い事例を話されていました。今年、ライブ動画配信事業SHOWROOMを手がける前田さんと五反田にバーを開設したらしいのですが、1つだけ決めたルール(環境)がありました。

ドリンクとつまみを無料にする。

このケースでは、バーを始める時点で無料にするというルール(環境)を設定すると同時に、顧客がお店に飲食料を払うという当たり前(制約)を排除しています。

すると、必然的にどこでマネタイズをしていくかという話になります。前例がない中でアイデアをひねり出すしかありません。

出した結論はサロン方式にして月額で料金を請求するという形式で、サービス自体も数日で1000人程の会員が集まったそうなのですが、もちろん無料にするという環境を設定しなければこの発想はなかったわけです。

また、2ヶ月連続で黒字化しなかった場合は即撤退というルール(環境)も決めていたそうです。すると、短期間で利益を出すのは難しいという制約が解除され、どうやってさらにマネタイズするかに必死に知恵を絞るようになります。この繰り返しで、新しいアイデアを生み出していきます。

制約を設けることでクリエイティブな発想ができる


「環境の力を借りて制約を解除する」とはつまり、「制約の中でイノベーション」は生まれるという言葉に置き換えられと思っています。

人間は基本的に怠ける動物だと思っていて、ある経営者は自分は年6回脱皮をすると言っていました。ここでいう脱皮とは全てを0ベースで考え直すことを指します。

最近、仕事をしていて正に制約がイノベーションを生んだと感じることがあります。以前、自分が所属する部署から人数が減ってしまうことがありました。すると当然ながら1人あたりの負担が増えます。しかし、さすがにキャパシティー的に同じ業務を全て継続することは無理だという結論になりました。

すると人は効率化を図ります。必要のないコストを削ったり、本当に売上に貢献する部分だけに人材リソースを投下することに頭を使うようになり、結果としてこれまでの倍以上の成果があがるようになりました。

制約の中からイノベーションは生まれる。

まさにそれを体現した瞬間でもあります。
人材減という制約ができたことで、考えざるを得ない環境になったのです。

仕事でも普段の習慣でも何にでも言えますが、人は無意識的に変化を嫌います。それは変化しない方が圧倒的に楽だからです。でもそれではクリエイティブな発想はできませんし、イノベーションなんて夢のような話になるわけです。

うまくいっていると思っていても、こういう前提条件だったらどうなんだ?、こんな当たり前があればどうなってたんだ?と制約をつけた上で考える習慣をつけることが重要だと改めて感じました。

今度、革命のファンファーレも読んで見ます。


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