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生物学的製剤治療中のリウマチ患者における重症感染症の発生率に関するシステマティックレビュー

今回紹介するのは、感染管理抄読会の参加メンバーが執筆した論文です。
この論文は、JBI(Joanna Briggs Institute)の雑誌に掲載されたものです。JBIはエビデンスに基づいたヘルスケアの実践を推進することを使命とした非営利国際団体です。日本では大阪大学に提携センターがあり、看護分野におけるエビデンスの統合・伝達・活用のための活動を行っています。JCEBP(The Japan Centre for Evidence Based Practice)のnoteもご覧ください(https://note.com/jcebp_office/)。
 
生物学的製剤治療中のリウマチ患者における重症感染症の発生率:システマティックレビュー
 
文献情報
Makimoto K, Konno R, Kinoshita A, Kanzaki H, Suto S. Incidence of severe infection in patients with rheumatoid arthritis taking biologic agents: a systematic review. JBI Evid Synth. 2023;21(5). https://doi.org/10.11124/JBIES-22-00048
 
抄録
目的:このレビューの目的は、生物学的製剤を服用した関節リウマチ患者集団における重症感染症の発生率と感染に関連した死亡率を推定することであった。
 
序文: 1990 年代後半から、関節リウマチ治療のためにさまざまな生物学的および合成薬剤が開発されてきた。近年の観察研究に基づき西側諸国における関節リウマチ患者における重症感染症の発生率が報告されている。 ただし、このトピックに関するシステマテックレビューの報告はない。
 
選定基準: 以下の選択基準に基づく:
i)生物学的製剤の治療を受けた関節リウマチ患者の観察研究
ii) 治療入院を必要とする重症感染症数を報告する研究
iii) 観察データで人年を報告する研究、
iv) 関節リウマチレジストリ、リウマチセンターの医療記録、または保険請求データベースに基づく研究。
 
方法: PubMed、CINAHL、Embase、および Web of Science を検索し、掲載された研究を特定した。 クリティカルな評価のために選択した全文献の引用文献もスクリーニングした。 グレイ文献(査読のない論文や報告書)は、MedNar および OpenGrey データベースで検索した。 すべての検索を 2021 年 12 月 6 日に更新した。重複文献を削除後、2 名の独立したレビュアーが選択基準に照らしタイトルと要約を選別し、基準に照らし評価した。 2 名のレビューアが、JBI のコホート研究のクリティカル評価ツールを用いて、方法論の質について研究方法と結果のレベルを個別に評価した。 2 名のレビュアーが、重症感染症と薬物に関連する情報を抽出した。
 
結果: 8 種類の生物学的製剤と非生物学的製剤の使用と関連した重症感染症の発生率は 21 カ国から 52 件の研究で報告されていた。合計 395,065 人年の生物製剤曝露関連の 18,428 件の感染を分析に含めた。 35 件の研究は、外来における点滴による抗生物質療法治療をうけた患者の感染を含んでいた。15 件の研究は最初の感染の発生を報告しており、残りの研究は最初の感染の発生か全ての感染かを識別して報告しなかった。ウイルス感染および/または日和見感染の包含は、研究によって異なった。感染部位を報告したのは 15 論文で、呼吸器、皮膚/軟部組織、尿路感染症、および敗血症/菌血症が一般的に報告されていた。10 論文が致死率を報告しており、2.5% から 22.2% の範囲であった。8 つの生物学的製剤と従来の非生物学的製剤をメタアナリシスに含めた。感染率は、0.9 から 18.1/100 人年の範囲であった。 メタアナリシスにより、抗 TNF 剤を投与されている患者の感染率は 5.0/100 人年 (95% CI 3.8–6.7) であった(異質性 98.2%)。他の 3 つの生物学的薬剤のメタ分析では、点推定値が 5.5 -8.7/100 人年で高かった。感度分析は、レジストリベースの研究は、他のデータソースと比較すると、感染率が非常に低いまたは非常に高い研究は少なかった。 感染症の定義、コホートの患者構成、およびデータベースの種類が、臨床的および方法論的な不均一性の主な原因であろう。
 
結論: 統計的不均一性が高いため、メタ分析は感染率の推定には適さなかった。 様々な研究の感染率を比較するためには、標準化されたデータ収集の開発が必要である。
 
Systematic review registration number(システマティックレビュー登録番号): PROSPERO CRD42020175137
 
キーワード: 副作用; 生物学的製剤; DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬); 関節リウマチ; 重症感染症
 

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