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小山田壮平の思想を読む

 andymoriの1stアルバムに「モンゴロイドブルース」というタイトルの曲がある。なかなか過激なタイトルの曲だ。(笑)

 僕自身この曲はそこまで好きではない、というかそこまで思い入れのある曲ではない。が、最近小山田壮平の思想に関して興味があり、比較的本人の思想的な部分が多く盛り込まれた1stアルバムと2ndアルバムの曲を中心に歌詞に注目しながら聴き直すことにした。曲を聴くのに作者の思想まで掘り下げる必要はないのかもしれない。本人の思想や真意に辿り着こうとすると、曲を感じ取る上での余白の部分がなくなってしまう。

 ただ、僕は小山田壮平という人間を心の底から尊敬しているからこそ、純粋に彼の思想や哲学に触れ、彼の見ていた世界を自分の目でも見たみたい、そう思った。


 僕の個人的な音楽観として、曲>歌詞派なので普段からそんなに歌詞について注目することが多くなかった。そして、アルバムの収録曲を聴いていく中で特にこの「モンゴロイドブルース」に小山田壮平の思想を読み解くヒントが多いのではないかと感じた。
これから彼の政治思想に踏み込んで行く前に、前もって潔白にしておくが僕は右でも左でもない。

モンゴロイドブルース


 第一前提として、僕は政治的思想や宗教観が盛り込まれている楽曲はそんなに好きではない。だから、過去に藤井風が売れていくにつれ、サイババ思想が盛り込まれていくのを目の当たりにして離れたという過去もある。では、なぜandymoriの曲を聴けるのか?という矛盾が生まれる。正直言って、andymoriの曲には政治思想がこれでもかと言うほど盛り込まれている。この矛盾を完璧に解説することは難しいが、おそらく小山田壮平はそこまで自身の政治的思想に対してそんなに本気ではないんじゃないか?という節が見受けられるからだ。なんて言えばいいか、軽さがあるというか。そこまで生々しさが感じられないというか。そして、何より彼の書く詞や思想には少なからずの納得や同意がある。藤井風はおそらく本気でサイババを信仰していて、その信仰に基づいて歌詞を書いている、というような感じが見受けられる。小山田壮平の歌には一定の合理性があるからこそ、抵抗なく耳に入ってくるんだと思う。この辺の細かい部分については論争が起きそうだから、この辺で収めておこう。それでは本題、「モンゴロイドブルース」の歌詞についてだ。

 まず、歌詞から考えられうる小山田壮平の思想について、おそらくだが彼は左寄りに見受けられる。少し見ていこう。

島国の王は大陸直系の
優しい顔でまたかき混ぜる


という歌詞がある。この部分だが、かなり直訳的に表現すると 

日本の天皇は大陸の血を引いた顔立ちで大陸の人間(中国や半島の人間関係)と島国の人(日本人)の血を掻き混ぜる

といった具合だろうか。つまり、この歌詞は日本は元々独立しており、他国の血など入らず独自の崇高な文化と人民で構成された民族で純血である!と主張するナショナリズム(右寄り)勢力へのアンチテーゼなのではないだろうか。
おそらく小山田壮平は、そういったナショナリズム的な思考が反韓、反中への思想に繋がっているけれども、元の歴史を辿れば半島や大陸とは血の繋がりがあったはずで、遠く昔を辿ればみんな同じアジア人だよ、ということを言いたいのではないか。深読みしすぎですかね。ただ、ポップ調に何も知らないよ?みたいな顔してこんなヤバい歌詞を歌っているところがandymoriの魅力なのではないかとも改めて思ったりもする。怖さすら感じるが(笑)。


そして、

大陸側のアンチドリアンはまったく
得意げにバニラシェイクを注文 

という歌詞もあるが、個人的な主観による解釈ではあるが、これはおそらくアンチドリアン=アンチコリアン(反韓)であり、だいぶ激しめの歌詞だ(笑)。そして、他の歌詞に出てくるアンチシャイニーズ=アンチチャイニーズ(反中)だろう。隠す気すら見受けられないほど生々しいワードチョイスだ。そして、この部分を訳してみると、ナショナリズムを主張する純血の反韓思想の人間達は何食わぬ顔でアメリカ文化(バニラシェイク)を享受しているのに声高にナショナリズムを叫んでいる、といった言ってしまえば皮肉とも取れる歌詞だ。

そして、

純血混血混血混血純血


という歌詞があるが、混血の方がひとつだけ純血よりも多い。おそらく、彼はこれまでの部分からも分かる通り、混血側の考えを持っているということを表しており、日本人も韓国人も中国人も同じアジア人だと考えているということが読み取れる。反韓だの反中だのと、高まるナショナリズムへの反対を歌っているに違いない。もしかしたら、「バカだなぁ」なんて鼻で笑っているのかもしれない。



実は「モンゴロイドブルース」とはこんな過激な歌詞で構成されている歌なのだ。


 以上、この曲の歌詞から小山田壮平の思想を考察するに、彼はナショナリズムや民族主義に大きな疑問を持っており、それに対する怒りや諦めの思いを「モンゴロイドブルース」や「ビューティフルセレブリティー」や「Transit in Thailand」、「FOLLOW ME」そしてandymoriというバンド全体を通して我々に投げかけているように思える。先祖を辿れば人類は大きな兄弟で、同じ人間であるのに肌の色や国籍、人種が違うだけで血を流し争い合うこと、白人が優位な社会観念。こんな世界に対する諦念や怒りを彼の歌からは感じるのだ。だから彼は有色人種にはマシンガンを持たせ、親たちが追いかけた白人たちを、ロックスター達を追うように追いかけた自分を"か弱い“と表現したのだろう。僕は初期のandymoriが好きなのだが、やはり1st、2ndアルバムからはこの小山田壮平のナショナリズムや白人優位への辛辣な思いを痛いほどこの耳で、心臓で、体で感じ取ることができるからなんだと思う。




彼の心からの祈りを、壊れるほどの魂の叫びをいったいどれほどの人が受け取っているのだろうか。少しでも多くの人々が彼が残した歌からの思いを掬い取ってくれることを願う。


追記:新譜、最高に良かったです。



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