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アイスホッケーの「乱闘・ファイト」に関する考察

前回投稿はアイスホッケーの外側へ向けてのものでしたが、今回はおもいっきり内向きです。(ヘッダー写真はどなたからいただいたものか失念してしまいましたがかなり古いものです。問題ございましたらご連絡ください。削除いたします)

タイトルは『アイスホッケーの「乱闘・ファイト」に関する考察』ですが、内容は事の是非ではありません。ずっとSNSなど見ておりますと、乱闘・ファイトに対して賛成・反対の「幅」があるなと感じております。
そこでこちらの投稿ではその幅の広さなどについて考察してまいります。なお文中では「ファイト」で統一いたします。

始めに断っておきますが、僕自身アイスホッケーのプレー経験はありませんし、スケートで滑った回数も片手で数えられるほどしかありません。また、文中で紹介する話も「聞いたことがある」「そういう傾向があると感じる」といった感じで、明確な数字やソースを提示できないものもあります。なので、事実と違う部分に関してはご指摘ください。感じ方の部分についてはご了承ください。
まず最初に「立場」を申し上げますが、僕はあらゆるファイトが無くなる方が望ましいと考えておりますので、そちらを念頭に置いていただいて、最後までお付き合いください。

1.アイスホッケーのファイトの原因

大の大人がいきなり殴り合いを始めるわけではなく、そこには当然理由があります。

  1. 大差がついてゲームが決まった中でのエンターテイメントとしてのファイト

  2. 相手の主力選手をファイトで潰す(気持ちよくプレーさせない)

  3. GKや味方が危険なプレーに晒された時に防衛手段として

  4. 小競り合いがいくつか重なってそれが爆発した時

  5. 相手から挑発行為があった時

大別すると上記のようなケースで、ケース同士が複合することもあります。北米のリーグにはファイトのマナー(慣習)があって、グローブを外すとか、一対一でやるとか、相手の背中が氷に着いたりレフェリーが止めたらストップするとかです。日本でもだいたい同じ流れですね。これは明文化されてるわけでなく、僕自身も先輩のアイスホッケーファンから聞いたりして「そういうものなんだ」と学んできた部分であります。

2.ファイトに対するペナルティ

当然ですがファイトを働いた選手にはペナルティが課されます。北米のリーグでは原則として5分間のペナルティを受け、その後試合に戻るという独自ルール(この辺ルール変わってるかもしれませんが)を採用しています。日本チームが参加するアジアリーグの場合はIIHF(国際アイスホッケー連盟)ルールに準拠しているので、ファイトは即ゲームアウト、つまりその試合には戻れず、ゲーム終了後にほぼ追加の出場停止が課されます。IIHFはここ数年ファイトに対して厳しくペナルティを課す、という方向でルール改正を行ってきております。なお五輪での試合もIIHFルールなので、参加国は(特にトーナメントに入ってからは)ファイトを自重してます。

3.ファイトに対するアイスホッケー選手・ファンの考え

アイスホッケーは明確にファイトをペナルティの対象(しかもそんなに軽くない)としているにも関わらず、それを止めようとはならず、しかもファンや関係者はファイトを「当たり前のようにあるもの」として受け止めています。その背景にはファイト自体をエンターテイメントとしてきた歴史と、男たるもの時には一対一で戦うもの、そして仲間がやられた時には身を挺して守る・反撃するものだという価値観が存在します。調べるにも日本語の資料が存在しないのでここからは憶測になりますが、これが北米移民の白人文化・マッチョイズムと結びついて、一部の保守層から熱狂的な支持を得たのではないかと考察します。世界的にはスポーツから暴力を追放しようという流れの中で、こういうファンが支持層にいるとなると、変えていくのは難しいのではないかと思われます。

4.日本におけるファイト

これは僕自身のファンとしての肌感覚の話です。古く日本リーグの時代から、日本でもシャレにならないレベルの大立回りは存在していました。そして、それに対して拍手喝采し熱狂すことこそがファンの正しい姿勢だという空気も醸成されていたと思います。ところが、年を追うごとに厳しくなるルールや、かつては野球などでも見られた乱闘が徐々に無くなっていく中、色んな競技を見比べたアイスホッケーファンの中にも「これは違う」と思い始めるファンが現れ、また新しいファンにも受け入れられてるとは言えず、盛り上がっていたはずのファイトシーンも手を叩いて歓迎しているのは数少ないファンと選手ベンチだけ。シラケた空気になることもしばしばです。一方で選手や関係者は、ファイトが伝統的な競技文化として受け入れられている北米のホッケーを範として育成されてきた歴史があります。やられっぱなし、やり返さないのはホッケープレーヤーとして「失格」というバックボーンがある選手達。ここにギャップが存在すると考えられます。しばしば、選手やOBがファイトについてSNSで肯定し、ファンがそれについていけないというシーンを見かけますが、このギャップはなかなか埋まらないと思います。育ちが違うんだもの。

5.最後に

僕自身はファイトが当たり前の中でアイスホッケーを見続けてきたのもあって、とりわけ抵抗感といったものは無いですが、ただ前述のとおり馴染めているファンも減っており、ファイトの度に現れるシラケた空気をそのまま放置するのはよろしくないだろとは感じております。とはいえ今すぐ具体的にどうこうというのは無いのですが…

アジアリーグにおけるファイトには出場停止など厳しいペナルティがつきます。以前の日本リーグのチームのようにベンチに入れない選手、つまり代わりがたくさんいるわけでもなく、ベンチ入りの人数を割り込むチームだってあるわけです。そこで出場停止をもらってしまうと試合の楽しみが喪失することに他ならないのです。本当にファイトを「アイスホッケーの魅力を伝えるもの」として大切にしたいのであれば、リーグアグリーメントの中でペナルティの緩和をするなど働きかけるのがベターな気がします。選手全員が同じ気持ちなら選手会案件にしても良いと思います。

ファイトに対する抵抗は無い、とは言いましたが最初に述べたように僕は無くした方がいいという立場です。最大の理由は時間のロスです。ファイトはペナルティが重くなる分慎重に事実確認を行いますが、これがとても長い。電車や飛行機の時間にやきもきされた経験のある方も多数いらっしゃると思います。「リンクの中にいる全員の時間を拘束している」という事実は、ファイト肯定派の方にも認識していただきたいところです。


最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。


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