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vs清水エスパルス

【別れを告げた元カノとの対面】

俺たちの家に元カノが帰ってきた。元カノは本当に良いヤツで、いつも全員をリスペクトし、とても優しく、そして愛に溢れていた。元カノは「サッカーとは?」を違った形で丁寧に教えてくれた歴代最高のガールフレンドの1人だっただろう。残念ながら親が付き合いに口を出してきたことで仲を引き裂かれることになったのだが…しかし、今は親が連れてきたオンナが一番大事。大好きな元カノだが、我が家で暴れられては困る。

【ミスからの失点と清武のスーパーゴールで辛勝】

元カノと呼ぶのは飽きたので、ここからはちゃんとロティーナと呼ぶ。そんな両チームのスタメンはこちら。

エスパルスはロティーナの仕組みを熟知する片山がキーマン。さらにロティーナは大久保と原川を除いてセレッソの選手を熟知しており、特に1vs1で無類の強さを発揮する坂元には必ず2枚以上を使って封じることを徹底していた。エスパルスは非保持と保持で構え方が違うが、保持では河合が左CBに変わる。これによりセレッソの2トップに対して最終ラインで数的優位を形成しつつ、片山を前に押し上げられる。次に坂元が河合へ食いつかざるを得ない状況に追い込み、坂元の死角に立つ片山とカルリーニョスが松田に対して数的優位を強いる。そして松田が大外に出て行くことでできるCBとのギャップをサンタナが突く。

セレッソの時の左サイドは内側に侵入する清武だったので、大外に強力な2枚を使う形はあまり見られなかったが、狙いは去年までと同じ「守備陣のギャップを開けてスペースを使うこと」である。このように左サイドから押し込まれる展開が続く中、奥埜のパスミスからセレッソが失点。ほとんど逆転を許さないことを身をもって体感している我々からすると痛すぎる失点だった。

パスが回っていなかったセレッソだが、失点して再開したところからボールを持てた。まず清水の前線は後藤がやや前に出て4-4-2のようになる。しかもロティーナはまず後ろからポジションを埋めて行くので、最終ラインが受けるプレッシャーの強度は必ずしも高くない。これに対してセレッソは原川がDFラインに落ちること、清武がポジションの制約を解除して右へ後ろへ自由に動き始めたことでボールを握り返すことができた。とは言えボールが持てるのも中盤まで。それより前はスペースが埋まっており、FWの2人にボールが供給されない状態が続く。膠着した展開が続いていたことで15分頃から大久保が落ちてボールに触れ始めた。

そんな中、松田の押し上げから得たCKをニアで豊川が逸らし、西尾のJ初ゴールが生まれて同点に追いついた。ロティーナが試合後のインタビューで「避けられたゴール」と言っており、ニアに人を立てておきながら逸らされて中央までボールが流れたのはミスと言えるだろう。その後も大久保や清武がボランチとCBの間のスペースをうまく使えればセレッソは良い攻撃を展開できていたし、片山や原が前へ出てくる分、その背後を松田や丸橋が突き返すこともできていた。
ただ、ロティーナのサッカーらしく凪状態。なので前半のドラマはこれぐらい。そして後半の見せ場は瀬古のスーパーフィードと清武のゴールだろうが、こちらは個人の技術の高さがもたらしたもの。大久保の動きによって清武がフリーになった、坂元が2枚以上来るマークを外して1vs1の状況を作り出したなどの連携がもたらしたゴールでもあるが、今回は説明を割愛し、ここからお互いの構造を素人目線で少し掘り下げてみる。

【お互いの仕組みと課題】

保持における清水の左サイドは既にかなり組織化されていた。左CB(=2トップからの逃げ道であり起点)、SH(=坂元のピン留めと松田への数的優位形成)、WG(=松田を食いつかせて幅を作る)、CF(=松田と西尾の間のいわゆるハーフスペースを突く)という4人のユニットが基本形。(以下、再掲)

一方、右サイドは左サイドに比べて構造が弱い。原は偽SBとしてボランチの位置に入ることもあれば、大外に張る時もあったのだが、内側に入った時にはCBから大外で待つ中山へのロングパスがうまく配給されず、大外に立った時は清武の死角を取り切れなかった。その理由は鈴木とヴァウドのキックが原因だと見ている。瀬古、藤田、清武、松田、ジンヒョン、(他にはソウザ、デサバト、木本)のキックで見慣れてしまったが、セレッソの選手の弾道はかなりクレイジー。鋭く低い弾道で逆サイドへビシッと届いてしまう。一方、鈴木のパスはふわりとした山なりのパス。なので逆サイドへ届けようとする間にセレッソ守備陣は寄せることができる。そしてヴァウドは右利きのCB。そのため中山がセレッソ守備陣の背後を取ろうとしても、グラウンダーならボールの回転はカバーに入る瀬古側に流れてしまうし、鋭い低弾道のパスを蹴るには角度がなさすぎる。そのため、中山はどうしても丸橋の前に立ってしまい、原との距離が近くなってしまうことで原は清武の背後に潜れていなかった。ちなみ左サイドなら右利きの河合が回転をかけて蹴るとボールは松田から逃げていくので容易にカルリーニョスは背後を取れる。実際に前半1分のピンチもその形で一本のパスから裏を取られていた。

その結果、エスパルスはミドルゾーンを左サイドに依存する形となっていた。スタッツでもその傾向は明白で、左サイドが実に半分近くを占めていた。とは言えこの仕組みはかなり高い水準にあるので左サイドは崩せるのも事実。そのため、フィニッシャーの役割を担う右サイドからゴール前へ入って来るエスパルスにはかなりの迫力があった。この形で追加点を取れていればもっと試合が楽になったのだろうな、という印象を受けた試合だった。

また、エスパルスは非保持でも立つべきポジションがかなり浸透しており、セレッソがラスト1/3に迫ってシュートを打っても弾き返されていた。その証拠にエスパルスのクリア数はリーグ1位。まさに去年までのセレッソである。(ヨニッチの弾き返す力は確かに強かったが、ヨニッチのクリア数が2シーズン連続で極めて多かったのは立つべきところにいたからだろう)確かにこの理由がわからずに攻め立てて負けると、「こんなサッカー何がおもしろいんじゃ」と言いたい気持ちはわからなくもない。昨年までの攻撃的な相手の気持ちが朧気ながら分かった気もした。

一方、中盤と最終ラインの距離はまだ遠い時もある。そう感じたのは大久保が落ち始めた15分くらいから。中盤と最終ラインが圧縮されていれば大久保が落ちてもそこはボランチが問題なく掴めるのだが、ここで大久保や清武は自由に触れていた時もあった。そうさせたのは後藤とサンタナが最前線まで出た時に浮いたボランチを掴み切れず、その位置に入る奥埜(or清武・原川)を起点に竹内、河合の背後を取られたから。去年までであればメンデスと奥埜がボランチを徹底ケアするので、もっと圧縮されていたシーンだろう。

このようにエスパルスは(目指す形が必ずしもセレッソと同じではないはずだが)未完成。そのためセレッソもボールをうまく持てば反撃の時間を確保できたし、エスパルスは攻められたら撤退するのでセレッソとしてもボールを回収しやすい。特に後藤も中盤のラインまで引き下がることがあるので、その分セレッソは弾き返されたボールを再度拾って攻撃に転じることができていた。

そしてセレッソはボールを握れば連続して両サイドからクロスを上げることを意識し、隙あらば豊川への裏抜けパスを狙うこと等の打てるチャンスで打つことができていた。とは言えこれはエスパルスの守備が引いてくれるから回収できたのであり、このように引き籠らずに前へガンガン来る相手はどうするの?という課題は残っている。(FC東京や川崎はその最たる例だろう)

一方の守備だが、基本的には1vs1の局地戦に去年までのエッセンスが残り香のようにフワフワと漂っている感じ。特に気になったのはサイドを崩された時にバイタルエリアを埋める作業が遅れている点。その要因は恐らくボランチの2枚だろう。去年までなら藤田とデサバトが埋めるべき位置に入るので、ハーフスペースの奥を突かれても折り返しを弾き返したり、シュートコースに入ることができていた。

だが、社長、強化部長が謳う「これまでの経験で培った守備の土台」は開幕前から薄々気づいていたが、やはり砂上の楼閣。監督やプレイヤーが変わればやり方も変わるのである。特に今は前へ攻めるチームなので、ボランチがこれまでの位置に戻り切れていない。

その結果、DFラインは今までの立ち位置通り深い位置に入るが、ボランチとのスペースをバイタルエリアにぽっかりと空けてしまってピンチを招いた。今後どうするのか全く見当もつかないが、明るい要素としては1vs1の局地戦に打ち勝ちまくる西尾と瀬古の若手CBコンビがとても頼もしいこと。そんなサッカーもまたサッカーなのである。社長以下、セレッソとサッカーのことを深く理解するメンバーがこのサッカーを目指しているのだから、一緒にドキドキワクワクしようじゃないか!

【試合後の感想】

エスパルスの右サイドが停滞する理由にCBを挙げたが、ロティーナセレッソも立ち上げ当初から蹴れる選手が揃っていたわけではない。ヨニッチやジンヒョンのパスミスでピンチを何度も招いたし、最初から今と同じ水準で鋭い低弾道を蹴れた選手は瀬古、ソウザくらいだっただろう。だがシーズンが進むにつれて藤田、清武、松田のボールは低くなってスピードアップしたし、ジンヒョンはミドルパスをガンガン付けられるようになったし、木本やヨニッチはふわりとしたパスしか蹴らなかったのに、途中から低弾道でビシバシとサイドへ蹴るようになった。(欲を言うとそんなキックをする山下も見たかった)何なら片山のキックの質は最も向上した。なのでエスパルスとの後半戦で権田、ヴァウド、鈴木のキックがどう変わっていると思うと恐怖でしかない。しかもエスパルスはセレッソが最初躓いた「頭で考えてしまって動きが停止する」ことが少ない。立つべき位置に立って守り、進むべきスペースに走り込んでくる。チームが上を向く時期はセレッソより早そうである。

セレッソは連敗脱出に成功。川崎の敗戦はほぼ全チームに課されたノルマであることを考えると、それを除く3戦で2勝1敗は悪くない。今節は大久保のゴールこそ生まれなかったが、エース清武のスーパーゴールは頼もしく、西尾の初ゴールとデュエルでほとんどサンタナに勝ち続けてたことは称賛に値する。そんな西尾のプレーに対して、コロナがなければ手を叩いて大声で声援を送っただろう。ここからはしばらく序盤の成績が芳しくないチームとの戦いが続く。しっかりと勝ち切って勝点を伸ばし、降格4の争いに巻き込まれないよう駒を前進させておきたい。

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