外資系ITレイオフメモ-9 (総括編2)

最終回前の近況と過去メモ

というわけで、CEOが300億受け取っていたりするニュースは横目に見ながらも、GWを楽しく過ごしつつ、学習を続けていましたが、総括編2ですね。何事もなければ、このメモの最終回になる予定です。

前回は、総括-Aとして事実だけつらつらと書いて振り返ってみました。今回は少し振り返りかたを変えてみたいと思います。

総括-B:所感とか諸々

前回総括した「ファクト」のうち、転職活動とかを含まない部分は、おそらく今回影響を受けた方(特に日本で影響を受けた人)は、概ね同じなはずだと思っています。

ただ、当然感じることは人それぞれなわけで。個人の感じたことがどの程度意味があるかはわかりませんが、自分が書いているので、最後は自分が感じたことや考察したことを書いてみたいと思います。

前置き

1月にU.S.でレイオフが走った際には「朝いつも通り仕事しようとしたら、ログインできなくなっていて、レイオフされたことを知りました」的な感じで報道されており、知人から聞いた話でもやはりそのような状態だったようです(他国の同僚から聞くと、国によって少しずつ違いはあり、日本も当然やりかたは違ったわけですが)。

その際に、「12,000 人切ろうとしたら、こういうやり方じゃないと無理だというのはわかる (but..が続くわけですが、そこは省きます)」と言っていたのを覚えています。確かに、よくよく検討して、現場のマネージャーサイドにまで落として「誰を切るべきか」の討議を詰めていたら、このスピード感では実現されなかった(一部難航している国や事案もあるのでは、と見えますが)ことはわかりますし、外資歴もそこそこ長くはなったので、やり口が不当だというつもりも、不満も、「個人的には」あまりありません。

「慣れてないんだな。処理のためのフローとか、ルールが小慣れてないな」というのは思いましたけどね。

一応、このメモの最終回となる(・・・はず。何もなければ)も不満を言うためのメモではないことは、前置きとして置いておきたいと思います。

それから、もう一つ。僕は大学卒業してすぐに就職はしておらず、30前まで自営業をやっていました。なので、勤め先は自分にとって一番近しい顧客であり、顧客のビジネスを向上させることが対価につながる」と考えている節があるので、少し考え方が他の方と違うかもしれません。ご容赦いただければ幸いです。

不毛(?)な「なぜ僕が・私が」論への仮説

3月2日に、件のメールをメールボックスに見つけた際には、「なぜ僕が」という感覚よりは「え?大丈夫?うちのチーム?」というのは大きかったのを覚えています。

とはいえ、全く「なぜ自分が」と思わなかったわけではないのですが、幸か不幸か1月の予告 - U.S. でのレイオフの際の - から「もし自分に矢が飛んできたらどうしようかな」というのは考えていた(多少眠りが妨げられた)こともあり、「条件に納得がいくならやめる」ことは決めていたので、とりあえず次に何するか決めるまでは 「なぜ自分が」はあまり考えないようにしていました。考えても多分正解を誰かが出してくれるはずもなく、「あれやこれやで当選しました」でしかないので、自分に至らない点があったかも・・・と思う場合を除くと前を向くことの妨げにしかならなそうだと考えたためです。

とはいえ、仮に自営業に戻るのではなく、転職をメインのコースと考えた場合を考えると、レイオフの影響を喰ったあとに転職活動をしたことがあるわけでもなく、「なぜ自分が対象になったと思いますか?」という質問は、ありえるかも・・・とは思いました。
結局面接では、外資が中心だったこともありそれを聞かれることはなかったのですが、当時考えた要素は以下です。

  • 日本は、コロナ中に人を大量に取った割にビジネスが拡大しなかった(まぁ、うちのチームじゃないですけど)

  • コンサルチームは、インドとか、特定の国に沢山要員がいて、稼働率がイマイチだった(全体としての人数頭での収益性が上がっていなかった)

日本チーム、という考え方だと、僕の居たチームは少なくとも人数あたり、でいうと十分ペイしていたはずだと思う。なんせ、新しい案件が入ってきても開始時期を先延ばしにできそうなものはないか(そうしないとアサインできる日本語が話せる人がいない)を頑張って探していたくらいの稼動ッぷり(決まっている案件だけでも夏頃までは有給取るの無理そうね・・・というレベル)だった。

この辺り(日本のビジネスと人数+グローバルのチームとしての人数と稼働率)の掛け算が、「え?僕?大丈夫それ?」の源泉となる、パッケージ当選の大まかな基準だったのでは、という推察は特に素っ頓狂なことではなさそうです。
ともあれ、聞かれた場合に備えられれば十分かと思いましたので、これくらいの推察にとどめました。

もちろん、裏を返したら色々他の要素もあったかもしれませんが、10人程度のチームで3名が当選したことを考えると、あまり的外れでもないのかな、と思います。

日本のチームの稼働率が高騰している状況の中で、他の国から「今ウチのリージョン、人が余っているんだけど、活用できない?」という申し出が確かインドあたりとかから出ていたりしたという話は記憶があるので、チームまで降りてきたら、日本の稼働率が高いことは判明したと思うし、他の国で人が余っていてもあまり案件に貢献しにくい(故に稼働率が高い国のメンバーを切ってもあまりプラスに働かない可能性がある)という懸念も出てくる余地はあったでしょう。

とはいえ、そうやって国のマネージャーレベルまで話を落としていくと当然スムースには進まないわけなので、「贅肉か臓器かわからないけど、この辺りに贅肉多そうだから、吸引しちゃおう」というのはありえる話だと思います。

一応、ネクストステップがある程度めどが着いた今時点で時々他の可能性を辿る時はありますが、特にこれを凌駕するような案は出てきませんでした。なので、これについてはこれを書いた時点でもう考えないようにしようと思います。

結論として、「不毛」とタイトルには書いたものの、一応自分なりに考えてみた、ということで、この項の振り返りは終了して、次にいきましょ。次に。

レイオフは善手だったのか

上にも書いたように、僕は自営業上がりだったので、少し考え方が妙な方向に向かうことがありますが、それをさっ引いても、レイオフ自体は外資系全般ではありうることだと思うし、それで経営が良化するのであれば、全体としては良し(善手)だと思います。

影響を受けた人や、影響を受けていなくなる人を尻目に残る人のモチベーションや、落ち着くまでの間の負荷の上昇による二次被害(退職者が別途かさんで、想定外に人数が減ってしまい、立ち行かないシーンが増えてしまうような)がなければ、一般論としてはあり、だと思っています。

最近、4%のレイオフを実施した、前職(レッドハット)でも、過去に例がなかったわけではなく、辞めずに済んだもののチームがなくなったり、同僚が対象となっていたケース(後で知るわけですが)もありました。俗に言う「マス・レイオフ」となるとあまり実施しているイメージはないのですが、外資だとそういうもんなんだな・・・という感覚だけは前職でも培われていました。

合理的に考えれば、経営のための良策とトップが判断すれば、それは善手だったと信じるしかないし、項のタイトルにしておいてなんですが「善手だったか」どうかは、その先の中長期を見ないとどうにもならない、というのも事実な気はしています。

そうすると、これが「経営」にどのような影響を与えうるか、くらいしか考えることはないのですが、ここでおそらく、「雇用主という取引先」と「従業員という個人事業主」(僕の頭の中での位置関係としてはこうなってます)はどのような関係だったか、あるいは、個人事業主は、取引先とどのような思いで付き合っていたか、という点は考慮したほうが良いと思います。

入社前。。。というか応募時(2019年夏頃)Google は、能力がシビアに求められる会社、というイメージでした。特段に「社員に手厚い」という点を考えて応募したわけではなかったのですが、当時2社に応募してほぼ同時期に内定をもらった際に、決めてとなったのは福利厚生などの手厚さ(書いて差し支えないところで言うと、食堂があって、食事が無料で食べられる、とかですかね。他にも決めてとなった条項はありましたが、今となっては・・・なので、省きます)でした。正直、福利厚生のドキュメントを見て、調べてみたら、ずいぶん社員に評判のいい会社なんだな・・と感じた、という順序でした。

入社してみて、確かに能力の優れた人も多く、刺激にもなると同時に、社員の能力を信用するとともに、望むなら、新しい挑戦をさせようとするカルチャーであったように思います。

この状態って、確かに伸びまくっている時には理想的な登り階段になるんだと思いますが、おそらくコロナ禍による状況を読み違えた点もあって(一応言い訳しておくと、コロナ前入社です)ただの居心地のいい場所になり、ぶら下がる意欲の強い人も増えてしまうと、負のスパイラルに陥るリスクはあったと思います。

仮に、周囲にTwitter / Microsoft / Meta / Amazon などのレイオフの風潮があって、負のスパイラルのリスクを一足先に見出して、過去にこの規模のレイオフを行ったことがない企業であったにもかかわらず、最初の一手に踏み切った、とすれば、それは英断なのかもしれません。

逆に、単に、株主の短期的な利益を最大化するために抗えずに実行に移した、となると、中期的・長期的には地雷をたくさん仕込んでしまった(その後責任者は引退)という外資の別のアルアル論になるリスクもあるでしょう。

ここから先は下っ端の社員としていた自分が思うところの、レイオフの好影響・悪影響の可能性を考えて脈絡なく列挙すると:

[好材料]

  • 手厚い企業、レイオフになりにくい企業という目論見でぶら下がる人は、時間を経るとともに減っていくため、戦力化される人が増えるー>収益性が高まる

    • これは残った人・これからの応募についても同様の効果があると思います。

  • 人数を減らして(物言う株主が言うように)社員ひとりあたりの収益・・が上がれば、維持・拡大路線に再度持っていくことも可能

  • (能力にもよりますが)「安泰ではない」意識のある人の方が、会社に対して対等に物を言わなくなるため、舵取りはしやすくなる(これは表裏一体ですが)

[悪材料]

  • 突っ込まれにくい成績を出すために、無難なことをする人が増える可能性はある

  • 残った人が、モチベーションを上げるとは限らない。少なくとも、パッケージを払って大量に人を削減する、ということは、一定期間、「費用そのまま、人数は減りました」という状況で利益を出していかないといけないわけで。。

  • 結果、革新的な技術が仮にあったとして、挑戦者の数が減る(ここ数年、どれだけ革新的な技術を自前で作れていたか、という点は議論が割れそうなので省く)

  • ある程度雇用が安定していることをベースにおいた福利厚生が効果を持ちにくくなる(病気の際などの手当や仕組みを手厚くしたところで、切ってしまえばそれで終わりになりますし、株などで中長期、戦力として活躍してほしい、という戦略も使いにくくなります)

いくらでも(好材料も、悪材料も)書けそうですが、重複も多くなりそうなので、この辺にして、その意味で自分が感じたことを最後に書いて締めようと思います。

レイオフを通じて得た所感

結婚の場合、関係は1:1 「(できたら)ずっと一緒に過ごそうね」という行為なので、仮に慰謝料を弾んだとしても、どれだけ討議を重ねたとしても、「いい人だったね。機会があったらまた再婚しよう」とはあまりならない気がする(ちなみにバツイチです)。

ただ、今回の Google のレイオフにおいては、在籍中も、レイオフに自分が当たったことを含めても、「良い会社(取引先)ではあったし、波目が変わったらまた取引しましょう。」という気持ちではある。

もちろん、ビザの問題とか諸々別の事情を抱えている従業員からすれば、別の見方はあるかもしれないが、レイオフの対象になった社員にも優しい企業ではあったと思う。

腹を割って話したい派の人はそうでもなかったかもしれないが、パッケージそのものや、その後のやりとりの仕方(まぁ、慣れないことなので、そこそこバタついてはいたのだけれど)についても、日本の事情をよく考えて、この策が一番「マシ」、つまり、突っ込まれどころなく、快く取引停止に応じてくれるだろう、という内容だったと思う。

2019年に入社した当初、特にクラウド特化な人間ではなかった( 前職でOS と OpenStack/OpenShift/JBoss の会社でしたからね)自分が、周りから刺激を受けながら、よちよち歩きから、まぁ「そこそこ詳しくなったかな」と言えるレベルまで取引(僕の中の雇用の別名)が続いたことは大きな自信にもなった。

正直、入社するまでは、「まずは半年生き残るぞ」という気持ちで頑張っていたことからすると、上出来の部類だし、ちゃんと評価も受けられたと思う。

ちょっとだけ辛いこととしては、家族をオフィスに連れて行くという約束を果たせずに退職(コロナ期間長かったからねぇ)してしまったことか。レイオフの知らせをもらうちょっと前に、渋谷の入り口までは行ったんだけどね。残念。

そして、「次を探す」という行為の中で、得られたものも多かったように思う。

一つは、技術的な側面。
目標達成のために頑張っているとはいえ、特定の会社で働いていると、過去に積んでいた経験の中で「記憶が曖昧になっているもの」や「陳腐化してしまっているもの」があることに気づきにくい(テーブルに上がらない材料なので、最新の情報を追わなくなる技術軸が必ず生じる)。今回、面接のための支度に時間をかけられたことで(あるいは、思っていない角度から質問を投げられたことで)そのあたりについて再認識することができた点は良い点だった。

次に、自分が最終的にどうなりたいか、ということを考えられたこと。

この点は、真面目に書き出すと長くなるのだが、長尺な説明は次の職場でのメモ(転職後のメモでも書こうかな、と思っている)にとっておくとして、短くまとめると、「できることを広げて、頼られる存在になること」なのだと思う(一分野のエキスパートとして生きる、というよりは、強みは持ちつつ、広範囲をカバーしていて、なんとなく頼れる人・・・の方が性に合っている)。

今回、次のステップを探す際にも、この我儘な思惑をある程度判断基準にしながら取り組んできたし、できれば、その結果選択したステップが、そんな自分の達成欲に最善の結果をもたらすことを祈っているし、さらに次のステップ(を目指すには年齢がアレなんだけど)があった場合に、Google が良い企業として視野に入り続けてくれたら嬉しいな、とは思っている(手元の株がいい感じに化けることも祈っている)。やり残したこともないわけではないので。

次の会社の頭文字はすでに転職活動編でも記載しているが、転職後のメモにそれはとっておくことにして、バラバラと書き綴ってきた、レイオフメモはこれで終了となります(あれ?パッケージが入ってこないけど・・・とかなったら、続編あるかもしれませんが、ないことを祈ります)

前職・現職・今回の転職活動で関わった皆様、読んでいただいた皆様、ありがとうございました。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?