見出し画像

七分咲きでも心地良く

午前中、昨年も楽しませてくれたこの桜の光景。

沢山の方で賑わってた。

・Johann Sebastian Bach, Ramin Bahrami – Concerto Italiano(2008)

イラン生まれの私より二歳年下のピアニストで有るピアニスト『ラミン・バーラミ』の作品。

タイトル通り『バッハ』の楽曲を。

ここ最近聴いてたアルバム。

最初『ドビュッシー』の作品をとも最初は思ったけど、ちょっと苦しいからバッハにした。

聴いてたきっかけ(理由かな)はドキュメント『Last Days 坂本龍一 最期の日々 - NHKスペシャル』を鑑賞したから。

Last Days 坂本龍一 最期の日々 - NHKスペシャル

既に鑑賞した方もいるかと思う…いやどうだろう?

店頭のお客様とお話しても現時点では『観ました』って方にお会いしておらず。

上部の画像は闘病中に『へんな動作は免疫力を高める』という記事を目にして実践してる坂本さん。

前編がこんな感じでいつものY.M.O.の三人だから許される(いや許してしまう)決して面白いとはいえないシュールなシーンだけだったら良いのだけれど、全然違った。(きっと細野さんは前編シュールで)

番組が始まった直後に目を背ける様なシーンからスタートする。

直ぐに戸惑い迷う。

数分見続けるも、リモコンに手が伸びてしまった。

静かになった部屋の中。

本当に重く冷たい嫌な空気がテレビと私の間に漂ってる。

タイトル通りに昨年の2023年3月28日に亡くなった坂本龍一さん(享年71歳)の最後を映像化した番組。

まだ一度しか観れてないのでうる覚えで申し訳ないのだけれど、NHKのスタッフが遺族の方にお話しをお聞きしようと連絡を取った際に映像を提供してくれたとの事…と最初に説明があった気がする。

この方を好きでいる期間が長くなったので多少なりとも覚悟はしてた。

高橋幸宏さんとも違う(ただ幸宏さんに関しても晩年の時期の姿を私が思ってる以上に伝えてくれたとは思う)そして細野晴臣さんとも違う(この方はきっとひっそりとだと思う。有るとして声だけでの日記だったり、且つシュールなユーモアが全開だと思うし、私もこのタイプ)

きっと坂本さんは自身の死にすら芸術性を求める方。死すら作品として捉えたい / 残したい方なんじゃないかと。

早朝だった為、お店に向かう準備を始める。

今日も何かを聴かなくてはと音源ルームに足を運ぶ。

坂本さんの音源が少しだけ脳裏をよぎるも、仕事に支障をきたすのは確実で直ぐにクラシックのラックの前に立ち、選んだのがあの作品だった。


・Y.M.O. ー SOLID STATE SURVIVOR(1979)

私の世代では全国誰もが刷り込まれる楽曲『ライディーン』

理由は簡単。

運動会で確実に使用された楽曲だから。

理由は分からない。

でも絶対に全国共通だったと思う。

もしこれがレコード会社のプロモーションだとしたらその効果は想像以上だし、マクドナルドのハッピーセットと同じ戦略でもある。

私にとってはそれ以上の意味があるのがこの作品。(ともう一つ)

小学生の時に放送委員になって(これって全生徒順番だったか記憶が定かではない)お昼と午後だったかな?放送室に行き音楽を流し定型文をマイクで読み上げる様な仕事だったと思う。

各教室ではガヤガヤと盛り上がって給食の準備をしてる最中、誰もいない廊下を放送室へ行く事がとても特別な気がして嬉しかった記憶がある。

放送室の中にある小さなレコード・ラック。その中で今でも印象に残ってるのが『Y.M.O. ー SOLID STATE SURVIVOR』と『GARO ー 2』だった。

放送しなくても放送室で何度も聴いてた。

今思えば、GAROの2nd ALBUMが何故にあったのかとも思うけど、彼等の楽曲同様にレコードのセンターラベルのデザインが凄い好きだったのを覚えてるし、

基本お昼の放送で歌謡曲は流してはいけない決まりだったけど、私は勝手に『シブがき隊 ー スシ食いねェ!』を強行放送し学校内がパニック。速攻で体育系マッチョタイプの教師が放送室にすっ飛んで来て私の顔面をぶん殴って放送中止になったのも覚えてる。

本格的に音楽に夢中になるのは中学一年生だから、この頃の時期では相当に重要な音楽体験だったのだと思う。

この2枚以外での音楽の記憶で強く残ってるのは人生で最初に親に買って貰ったジャッキー・チェンの映画『成龍拳』の日本独自の主題歌7インチ・シングルだったり、AMラジオで放送されたマイケルジャクソンやマドンナやシンディーローパーの楽曲を録音したテープだったりと数少ない。

そう考えると私の人生でGAROやY.M.O.が最も長い期間聴き続けてるアーティスト達の中の二組となる訳です。


そんなGAROのセンター『マーク(堀内護)』がソロとしては1977年以降なので本当に久々のソロアルバム『時の魔法』を2013年にリリースしました。

リリースされた翌年に私はマネージメントに連絡を入れ、上記の様なマークさんに対する気持ちもお伝えしてインタビューをオファーをしました。

直ぐに返答を貰いスタッフの方には『マークさんも喜んでくれてるので是非!』と連絡を貰う。

ただ現在ちょっと体調がすぐれないので、少し日程をずらしてお願いしますとの事でした。

あのガロのマークさんにお話を聞ける事と同時に気持ちを伝えれた事が本当に嬉しく、ラジオでも特集してオンエアしてました。

連絡が遅いなと感じつつも理由も聞いてるので待ってるしかないしなと思って時間が過ぎていく。

そしてやっと連絡が頂きましたが、それは悲しい内容でした。

メディアに発表する前にマークさんが亡くなった事を伝えてくれました。

私のインタビューオファーが最後だったらしく、オファーの際にマークさんに対する自分の気持ちも読んで下さり本人もとても喜んでいたとの事でした。

本当にとその時は残念とかでなく、ただただ苦しかったと記憶してます。

そんな事もあったので、坂本さんの病気が再発したと目にした時は縁起でもないし失礼とは思いつつ流石に気持ちの準備をしなきゃだって思いました。

高橋幸宏さんに対しても同様の気持ちでした。



高橋幸宏さんにはインタビュー等のオファーはした事がなかったですが、

以前ラジオでの特集をした後のX(旧ツイッター)で幸宏さんの事をポストした際にご本人から絵文字でリアクションして貰った時は本当に嬉しかった。

理解して貰えないかもしれないけど、例えばインタビューのオファーをしてお逢いするのと同じ位に嬉しかったと覚えてる。

あまりに急な出来事で想定外過ぎたからだと思う。あの方の目に頭に私の文面が入り認識し行動に移してくれた事が信じれられなかった。

Y.M.O.の三人が何よりも好きだった訳。

それは容姿が歳を重ねる程に格好良くなってる事でした。

格好良い楽曲制作なんてファンとしては当たり前だって勝手に思ってる(笑み)だからこそ容姿の格好良さをずっとキープして欲しいって思ってる。

それをあの三方はキープするどころかアップデートしてくれてた。

メディアの使い方 / 距離感も世間や世代に媚びてなくて好きだった。

例え以前よりファンに寄り添っても決してチャラくない距離や高さや壁をキープしてくれてた。



そんな三人のうち二人が同じ年にこの世を去ってしまった。

今までの経験上、悲報を知った際に本当に悲しかったら大きな喪失感を感じると同時に『どうしてだよ…』って実際に声を出してしまう気がする。

本来言葉とは他者に何かを伝える為なのだけど、この声は決してメッセージではなく意味を失ってる行為。

その無意味が余計にとても自分を苦しめる。

心が苦しい時は助けて欲しい。繋がってる人ではなく信じてる人の優しさは欲しいけど苦しさは共有したくない。なら自力で回復してから優しさだけ貰える様にしたい。

以前、お客さまにアイドルのドキュメントで苦しんでる姿が映るから観れない事にそこまでの感情移入に不思議に思った翌日、現実のアイドルと違い全てがフィクションである映画で感情を揺さぶられ涙する私はもっと不思議だと理解出来た事は書いたけど、この感情も近いのかもって思う。

身内でもなく会った事もない方に対しての本当の悲しみ。

楽曲を飛び越えてその方個人への感情移入してる証拠なのかと思う。

大瀧詠一さん以来の苦しみだった。


体調不良が続いてた中での久々の休業日。

以前は原因と云うよりも理由が分かる体調不調だったけど、最近は理由が分からない体調不良が多い気がする。

『これが老いというものか』

先輩のミュージシャンやお客様に聞くと『これからもっと大変になるぞ』とほくそ笑んだ顔(気のせい)で答えが返ってくる。

前日の坂本さんのドキュメントの件も有り、滅入ってる気持ちをいい加減切り替えないととお出掛け。

途中、以前から好きなパン屋さんに寄り道を。

以前の来店から考えるとかなり久々だったと思う。

入店した直後に動揺する。

店内で流れてる音楽に耳を奪われる。

・坂本龍一 ー OUT OF NOISE(2009)

最も好きな坂本さんのアルバムに収録してる『hibari』って楽曲。

アルバムとしてだけでなく、私の中で坂本さんの世に送り出した楽曲で一番好きなのがこの『hibari』です。

基本的に坂本さんが弾いた短いフレーズをサンプリングしてループした楽曲。

この時のツアーは光栄にもコンサートに招待して頂きセンターの前から数列目で最も音が良い席で観させて貰いました。

私の音楽鑑賞歴でも最も印象的な一つです。

この頃の坂本さん。実験性と大衆性。自然と人工。

必ず対比する対象への憧れと美意識のバランスが一番好きな時期です。

先程の『hibari』を自分の意思以外で聴いたのが初めてだったのです。

2023年に公開した是枝裕和監督作品『怪物』のサントラにも再収録されたけど、決してシングルカットされてる訳でも、彼の代表曲でもなく、アルバムの中の一曲の筈ですし。

大袈裟じゃなくてちょっとクラッとする位に時空の歪みみたいな違和感。

パン屋で小麦ではないものを味わう。

長尺の曲ですし、目的だったパンは一つだけなので会計を済ませて直ぐにお店を出たので有線だったのか?店主さん個人の音源だったのか不明だけど駐車場で不思議な気持ちになった。

『やっぱり今日帰ってから続きを観よう』

啓示なんて口が裂けても言わないけど、こんな偶然は結びつけた方が良いに決まってる。

メンタルは本調子じゃないけど今観た方がいいんだ。

そう思って目的に向かった。

その後、夕方からの予定が自分のせいで台無しになる。

いつも通りのつもりだったけど、いつも通りじゃなかった。

大嫌いな『つもり』って言葉が頭をよぎって自分が嫌になる。

そのままの気持ちで帰り道。

去年も楽しませてくれた午前中とは違う場所の桜の光景。

満開だろうと侘しさに。


帰ってからドキュメントを続きを観ようとするもリモコンに手が伸びず。

取り敢えず音源の部屋に行き、何枚か手に取る。

並べて眺める。

坂本さんが自身の葬儀のために編集していたプレイリスト「Funeral」を発表して、自分はどうだろう?と思う。

多分、無音でいい。痛くなければいい。好きな人がそばにいてくれたら嬉しい。そうなると無音とはいえないか…

今日はちょっと疲れた。先週から死のニュアンスを考える時間が多過ぎたかもしれない。

明日から考えてみよう。

って思って気付いたらソファーで寝落ちしてた。

RALEIGH / ラリー(RED MOTEL / レッドモーテル)

“Once Upon a Time in” VENUS AND MARS TRUCKER JACKET (Type 3.5)

¥42,900円(税込)

ここから先は

0字

月額スタンダードプラン

¥200 / 月
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?