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蒸気機関車にゆられて【ドイツ鉄道旅行2023】

 5月21日5時過ぎに起床し、身支度を整えてホテルを出る。Frankfurt (M) Hbfに行くと、ICE 4が並んでいた。ICE 4は2016年より納入が開始された高速列車、12両編成50本、13両編成50本が既に出揃い、増備中の7両編成も最終的に38本となる予定で、すでにドイツの高速列車では最大勢力である。最高速度を265km/hに抑え、経済性を重視した設計がなされている。13両編成は全長374mに及び、ドイツ鉄道史上最長の列車である。

 05時50分発Chur行ICE 271に乗車する。スイスに直通するこの列車には13両編成のICE 4が充当されていた。
 早朝の列車のためか、車内はガラガラで、せっかくの収容力を持て余している。1等席に腰を下ろすと、間もなく発車。市街地を抜け、列車は200km/hで軽やかに走る。大きな窓から車窓風景を楽しむ。

 ライン川が迫り減速するとMannheim Hbfに着く。Frankfurt (M)から37分、定刻の到着である。
 中央駅を出て、10分程歩き、今夜宿泊する予定のホテルに行って、スーツケースを預けて身軽になり、すぐに中央駅に戻る。朝のひと時、発着する最新型電車を眺める。

Mannheim Hbfの駅舎
 Bombardier製Twindexx Varioの445形

 次に乗車するのはフランス国境に近いSaarbrücken Hbfを出発し、München Hbfへ向かうIC 2517。定刻に入線してきた列車の先頭に立つのは101形電機機関車である。1996年に登場した101形は、最高220km/hの性能を有し、伝説的な存在である103形を置き換え、登場当初は随分と不評を買ったものだが、ICEの陰で、客車で構成されるICの先頭に立ち続けてきた。そんな101形も登場から25年が経ち、廃車が進んでいる。ドイツ鉄道 DBは旧型ICの運用を2024年末で終了する計画で、101形の引退も遠くはない。

 1等車は空いており、誰もないコンパートメントに乗車する。07時11分に発車した列車は高速新線に入ってスピードに乗り、運転最高速度の200km/hに達する。乗り心地は高速域でも安定している。旧型ICに乗車するのはこれが最後かもしれないと思うと感慨深くも感じるが、その走りは引退間近とは思えない。

ヨーロッパでも伝統的なコンパートメント客車は少なくなった

 スピードが落ちると、もうStuttgart市内である。Stuttgart Hbfには07時53分に到着する。ここまで定刻である。 Baden-Württemberg州の州都、Stuttgartは鉄道ネットワークの一大拠点で、広い構内を多くの列車が行き来しており、中には西ドイツ時代からの古い車両の姿もある。

構内には貨物用の古豪E94が留置されていた
廃車が進む111形も最後の活躍をみせている

 218形が牽引するのは、ボーデン湖畔のリゾート地Konstanzへ向かう"Freizeitexpress Bodensee II"。車内は観光客で賑わっている。

 中央駅は頭端式の駅であるが、現在は周辺路線を含めて"Stuttgart 21"と呼ばれる大規模な改良工事が行われており、数年後には全く異なる姿に生まれ変わる予定である。 工事の影響で、列車のダイヤもしばしば変更されており、私がSchorndorfまで乗車する予定の列車も、数日前にStuttgart Hbfから郊外のWaiblingen発着となり、代行バスによる接続に変更されていたのであった。時刻表を検索すると、代行バスを利用した場合でも何とか予定通りに行動できそうだったが、接続が綱渡りになる。リスクを避け、タクシーを利用することにした。丘陵地をアウトバーンを経由して快調に飛ばし、Stuttgart Hbfから20分でWaiblingenに到着する。
 Waiblingen駅にはかなりの数の乗客が列車を待っており、鉄道ファンの姿も目立つ。10分程遅れて来た列車は、民間運営会社Go-Aheadによる運行で、ヨーロッパ中で活躍するStadler製のFlirt 3が使用されている。Schondorfには15分程で到着する。

 Schorndorf駅で待つことしばし、入線して来たのは、64形蒸機機関車419号機に牽引された特別列車。後ろには補機として、名電気機関車E10形228号機が連結されている。

 64 419は保存団体DBK Historische Bahn e.V.によって動態保存され、時には本線上を走る特別列車に充当されているのである。64形は1928年から1940年にかけて520両が製作されたタンク式蒸気機関車である。最高90km/hの性能を有する一方、軸重が15.3tに抑えられ、主に支線区間の旅客列車に用いられた。1970年代半ばまで活躍し、今も20両近くが保存されている。

 今日の特別列車はStuttgart Hbf発の予定であったが、工事の影響で、このSchrndorf駅発に変更されたのであった。目的地はロマンチック街道上の中性の町として知られるNördlingenである。
 しばらく、外観から写真撮影を楽しんだ後、列車に乗り込む。機関車だけでなく、客車も往時のものが保存されているのはドイツらしいところである Schorndorfを9時12分に発車する。車内は鉄道ファンの姿も多いが、それ以上に家族連れの観光客が目立ち、落ち着いた雰囲気である。保存団体のメンバーがワゴンを引いて車内を巡り、飲物や記念品を販売している。

 編成には郵便車も連結され、郵便車の歴史に関する様々な展示が行われており、「走る博物館」となっている。

 丘陵地を最高75km/hほどでゆっくりと走る。Schwäbisch Gmünd・Aalen Hbfと停車して乗客が増え、大半の席が埋まった。乗客は思い思いに蒸気機関車の旅を楽しんでいるようだ。

 目的地、Nördlingenには10時30分過ぎに到着した。

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