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ジュプトル厄介ガチ恋勢だった頃の話&ポケモンと性癖

小学生ワイ「ジュプトルは失恋なんてしない!!」


 どうも灰猫です。この記事を読んでいるあなたも、ポケモンに関する幼少期の思い出が一つや二つはあるのではないでしょうか。今回はポケモン厄介オタクと化した私の思い出を語らせてください。

 小学生だった頃の私はイケメンポケモンがとにかく大好きでした。映画アニポケに号泣させられたルカリオ、乱暴だけどピンチの時には助けてくれるリザードン。そしてジュプトル——吊り目かつ枝を咥えている外見から分かる通り、登場当初のキモリだった頃からクールなポケモンでした。
 小学生男子の純粋な嗜好で、そのカッコよさに惹かれていました。だからこそ、アニポケのあの回にはとてつもないショックを受けました。

ジュプトルガチ恋勢

 それはポケットモンスター アドバンスジェネレーション第161話「ジュプトルVSトロピウス!草原の決闘!!」。ジュプトルはメガニウムに恋心を抱く。恋敵であるトロピウスにバトルで勝利し、愛する者を守るためにジュカインへ進化を遂げる……しかし恋の勝負には敗れ、スランプに陥って技を繰り出せなくなってしまう。そんな内容のお話でした。

小学生ワイ「あのジュプトルが……"失恋"で
技を出せなくなる……?」


 私は大きなショックを受けました。一言で言えばあまりにもダサかった。私にとって"カッコいい"の象徴であったジュプトルが、赤面したり、目がハートになったり、あげくの果てに技が出せなくなるって……そんなしょーもない理由でジュプトルは落ち込んだりしない!——それは私にとって、人生で初めて経験した「公式との解釈違い」でした。
 失恋すればそれぐらいの精神的ショックも受けるだろう、それは人間もポケモンも変わらないだろうと、大人になった今なら納得できます。しかし、当時はまだ恋なんて知らないウブな小学生。あえて汚い言葉で翻訳すれば、

小学生ワイ「メスにほだされやがって……!!
なんて情けねえやつだ……!! 信じてたのにッ!!」


 そんな感覚を抱きました。なんかもう、彼をたぶらかすメガニウムのことも若干許せなくなってたような記憶がある。カッコいい男性キャラに異性の影がチラつくと、途端にヘイト感情が芽生える……当時の私は間違いなくジュプトル厄介ガチ恋勢でした。Twitterがあったら鍵垢で長文投下してたかも。

 今にして思えば、自分はオタクであるという自覚が芽生えていない子どもの頃に、すでにオタクっぽい感情が芽生えていたのは何だか面白い。「小さい頃からロールパンナとラティアスが好きだったやつは生粋のオタクであり矯正不可(ロールパンナ理論)」なんて話がありますが、ジュプトルに屈折した思いを抱いていた私は、まさにオタクとしての素養があったのかもしれません。

 ひょっとしたら、自分のオタクとしての原体験がここにあるのではないか……そんなことを思って件の第161話を再視聴してみました。
 すると驚きました。これは私が大好きな片思いシチュそのものでした。突然の出会い、抑えられない恋心、鈍感な主人公(サトシ)、その恋路を阻む数々の障害、報わない恋でありながらも最後は健気に尽くす……

現在ワイ「待ってこれ私が大好きなシチュのよくばりセットじゃん!? この手のお話で必要とされる勘所をしっかり押さえた良い脚本だ……十年以上前のキッズアニメでこれをやってたんか……すげえなアニポケ……(早口)」


 と、そんな感動を覚えました。

 ジュプトル失恋回が未だに記憶に残っているのは、現在の私と地続きだからなのだろうか。私の片思いシチュ好きは、学生時代に読んだ「道成寺縁起」や「ドキドキ文芸部!」のユリがきっかけだと思ってたけど……実は小学生の頃からすでに始まっていた……? なんか業が深くない……?

 しかし、当時と違う点もありました。メガニウムにヘイト感情は芽生えませんでした。顔をすりすりし合うメガニウムとトロピウスを見てむしろ「てえてえじゃん……」と。これはVのオタク関係性オタクとしての感性から生じたものでしょうか。大人になって、オタクとして多種多様なコンテンツに触れてきたからこそ、昔とは異なる視点で物語を楽しんでいる自分がいました。

 カッコいいポケモンが好きだったけど、今ではかわいいポケモンのぬいぐるみを集める日々。現在の推しポケはイエッサン 。現代社会やジェンダーへの屈折した思いからかわいいポケモンが好きになって……と、この変化には、「オタク」という言葉だけでは表現できない、もっと深い人生経験が投影されているように思います。

 ジュプトル失恋回を再視聴することは、そんな大人になってからの違いを知るきっかけになりました。
 そしてハッと気づきました。性癖の変化、オタクとしての遍歴、これまでの人生——ポケモンキッズとして育ち、大人になってその熱が再燃にした私にとって、ポケモンとの思い出を振り返ることは、自分の半生を辿ることと同義になっていることに。深淵を覗く者は深淵に覗かれているうんぬん……ポケモンという長寿コンテンツの歴史・多様性に感動、もとい恐ろしさを覚えた出来事でした。

 この記事を読んでいるあなたにも「子ども頃はあのキャラ好きだったなあ」という作品はあるでしょうか。今になって再び見てみると、思わぬ自己発見に繋がるかもしれませんね。そんなお話でした。新作も楽しみですね。